対等スキル ~コミュニケーションの隠れた重要ファクター~
■まえがき(謙虚であれ)
「謙虚であれ」ってよく言われるし、確かに大事なことに思えます。しかしその意味するところは結構あいまいではないでしょうか。
世の中にはびっくりするくらい傲慢な人がいます。「謙虚であれ」というのは、第一にそういう人に向けた言葉でしょう。一方で、もともと遠慮がちな人、気弱な人もいます。どこまで謙虚であればいいのでしょう。
謙虚の対象も問題です。相手に対して上から目線にならない、マウントみたいなものは一切避ける、これが一つの謙虚でしょう。一方で、自分はまだまだと言い聞かせて自分の能力を過信しない、これも一つの謙虚でしょう。でも考えてみるとこの2つは全然別のことです。
■対等スキル
「謙虚であれ」から、もう少し目指すべき状態をはっきりさせるために「対等スキル」というものを考えてみました。
対等スキル:
卑屈にならず傲慢にならず、絶妙のバランスを保って相対するスキル
「対等スキル」は相手とのやり取りに焦点を当てます。コミュニケーションスキルの一種であり、見えにくい能力です。例えるなら、スラックラインの上に立ち続けるような難しさがあります。傲慢になってないか、卑屈になってないか、常に自他を観察して見極めつづけなければなりません。
■対等スキルのポイント
以下の点を補足します。
・他スキルや地位の優劣とは完全に切り離す(むしろ優劣をあけすけにする)
・その上で、卑屈にも傲慢にもならず、卑屈にも傲慢にもさせない
・自分の本心はどうであれ対等にふるまう
・バランスのブレ、一時的に上下に行き過ぎることを許容する
組織の上下関係、スポーツのうまい下手、金持ち貧乏など、それがどうであっても相手と対等に接する。優劣を変に隠したりしない。自分に圧倒的実績があったとしても明確に劣っていたとしても、それをさらりと共有し、そのうえで対等に相対できる。それをスキルと呼びたいです。
その際、たとえ心の中で見下していたり、逆に全然かなわないと思ったりしても、表面的には対等を維持するのです。
また「1ミリも傲慢になってはいけない」と考えると常に卑屈側にいるしかありません。ちょっと傲慢側にはみ出してみることなしにベストのバランスにはたどり着かないと思います。そのことに暗黙の了解が求められます。
■対等スキルの難しさ
対等を維持しつづけるのは考えただけで難しそうです。具体的には以下のような場合に難易度がどんどん高くなるでしょう。
・その場面で核心的なスキル/地位に優劣がある
職場において仕事の出来に格差があるとき
相手/自分が絶対負けたくないと思っている趣味のスキル優劣
・相手に強い影響力を及ぼすスキル/地位に優劣がある
自分の給料を決める直属の上司
つらい立場にある人に手を差し伸べたいとき
・コミュニケーションスキルに優劣がある
相手/自分が圧倒的に話がうまい、コメントが的確、理解が早い
相手/自分の方が、思いやりを持てている、感情表現が適切にできる
・性格や感覚、価値観または習慣が大きくずれている
卑屈/傲慢の感じ方、痛みの感じ方、適切な距離感が異なる
敬語/タメ口、ツッコミや相づちなど会話の習慣が異なる
・相手のふるまいが好ましくない
とにかく相手が卑屈な態度をとる
相手があまりにも傲慢、侮辱的
・自分の状況がよくない
精神的に余裕がない、疲れている、興奮状態など
うまくいかないときはどうすればいいのでしょう。結局今まで通りになるか、コミュニケーション回避しかないかもしれません。ただ、間違った理想状態を思い描いて悩みつづけるよりはこういう考え方も良いのではないでしょうか。
■まとめ(対等スキルの効果)
「謙虚」で求められる状態を「対等スキル」と定義して具体化してみました。対等なコミュニケーションができれば、望ましい人間関係の構築に近づくはずです。また、対等であることを前提にあけすけに情報を交換することで、誤解が解けたり自己認識を改めたりできるかもしれません。
■おわりに
何番煎じかというような内容ですが、自分としてはもやもやを整理できたかなと思います。これらは下記等を読んでいて思いついたものです。
『人を助けるとはどういうことか』シャイン
『スーパーエンジニアへの道』ワインバーグ
『ワインバーグのシステム行動法』ワインバーグ
『賭けの考え方』イアン・テイラー
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