まきちゃんとの思い出

突然ですが今日は音楽の話ではなく昔話をします。

私が幼い頃、近所に20代前半のお姉さんが住んでいました。 当時の私はお姉さんのことを「まきちゃん」と呼んでいました。確か本名は「まき」の入った別の名前だったけど、私はそう呼んでいました。長女である自分にとって上の兄弟というのはとても憧れが強く、まきちゃんがお休みの日にはよく遊んでもらっていました。

まきちゃんとする遊びは少し変わっていて、おままごとやお絵かきというような子どもらしい遊びではなく、近所のスーパーで安売りの野菜を見に行ったり、まきちゃんの財布のポイントカードを並べたり、チェーンの牛丼屋さんに連れて行ってもらったりと、当時の私にしてみれば大人の世界を経験させてもらいました。
まきちゃんが牛丼を大盛りで頼み、まだ小さい私は取り皿にそれを分けてもらい、小さな牛丼にするのが楽しみでした。もしかしたらこれが私の牛丼生活のルーツかもしれません。

まきちゃんはいつも優しく、お笑いが好きで、何より私のことを絶対に否定せず、怒るところを見たことがありませんでした。
正確には怒っていたこともあったのかもしれませんか、幼い私の前ではそれを見せず、見ていたとしても私は覚えていないのでしょう。


私は幼稚園に入り、まきちゃんはまだアルバイトをしていました。なんのバイトだったかは覚えていません。時折バイト終わりにコロッケをくれたので、お惣菜屋さんだったのかもしれません。


ある夏の日、ディズニープリンセスが好きだった私は、まきちゃんが身につけていたパールのネックレスにとても惹かれました。
いつものようにそれかわいい!と言うと、そのときばかりはまきちゃんは笑ってくれませんでした。図々しい私はこれあげるよ!と言ってくれるのを期待していたんだと思います。大人になった今、うっすら覚えている周りの光景と合わせて考察するに、あのパールは冠婚葬祭用、しかも縁起が良くないことだったのだと思います。失われたのはまきちゃんの身内だったのでしょうか。形見だったのかもしれません。
その印象が強すぎてか、そのあとのまきちゃんとの思い出はあまり覚えていません。

気づいたら幼稚園は卒業し、小学生になり、高学年になると遊んだ思い出すら薄れていましたが、大人になった今、ふとした瞬間に幻の8月32日のようにその夏が蘇ります。けれどなんとなく、まきちゃんにはもう会えないのだと思います。

皆さんにも、優しいまきちゃんの姿を思い浮かべていただけたでしょうか?
あなたの想像した彼女の髪型は?きれいなストレートヘア?さっぱりしたショートヘア?好きなお笑い芸人はなんだったと思いますか?彼女に似合う色は?
写真も正解もありません。



この夏の思い出も「まきちゃん」も、実在していないので。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?