言葉以前の世界に重きが置かれているなか、あえて「誰にでもわかる言葉」を使うなら、遊んでいこってはなし。

過去に書いた文章を改めて読み返した。そこに書かれていたものは、本当に私が書いたものなのだろうかと疑うぐらいに力のある言葉の数々だった。(自画自賛でごめんね。笑)

それを書いたのはおよそ3年前。当時の私は、「生きる」ということに対する熱意がいい意味でも悪い意味でも強かったように思う。悪い意味というのは、その熱意のなかに半ば「怒り」にも似た感情が混じっていたからだと思う。生きることに対する怒り、社会に対する怒り、自分に対する怒り…正直、何に怒りを覚えていたのかよくわからないぐらいにあらゆるものに「怒り」の感情を持っていた気がする。きっと、その感情が文章のなかに込められているから、文章を読んで「強い」と感じてしまうのだろうなと思う。

そうだとしても、やはりこの文章からは未だに消えることのない炎が静かに燃え続けているように思う。それは今でも私が生きる上での、自分軸となっており、生きる原動力になっているとも言える。1年に1回読み返すのは、心の軌道修正をするためかもしれない。人に流されすぎて、自分の軸すらも見失ってしまいがちな私には必要な行為なのかもしれない。内省とでもいうのだろうか…

文章を読みながら、今の私にとって、改めて大切にしたい言葉があったので、それをここに記録しておこうと思う。

・「音楽」は「音」があるから「音楽」なのではなく、人々が自由に物事を感じ取り、そしてそれを自由に表現できる、そのような「空間」のことではないだろうか。

・「言葉そのものが意味を持つのではなく、差異、つまりある言葉と他の言葉との違いを作り出す体系が意味を生む」。言語体系が違うということは、単に言葉の意味が違うだけではなく、世界を見る時の物の見方も違うことを意味する。

・「音が視える」

・この『LISTEN』という映画が「聾者」そのものを描いたものではなく、彼らが視て、奏でる「音楽」をとおして、私たちがもっている「音楽」をいうものの概念に対する問いかけ、そして人の内なる魂から溢れる「生命」の世界を映しだしたものだからである。

・「注文をまちがえる料理店」は、そこに触れた人がそれぞれのバックグラウンドをもって、それぞれの感性で自由に感じてもらうのが一番いいと思っています。

・「間違えても大丈夫、失敗しても大丈夫、自由に感じてもらって大丈夫」。何事も「完璧」が評価されてしまう社会で、ちょっとした間違いを「まぁ、いっか」と言って、受け入れることのできる”寛容さ”をもつことで、私たちはふっと、心にストンと落ちて、安心することができるのだ。

・伝えるべき何かを”どのように語るか”という視点から考えると共通していえることがある。それは、私たちの日常の延長線上につくられている世界であること、そして言葉を使った説明に頼らない伝え方をしているということである。

・私たちの日常の延長線上で、言葉の枠を越えて、私たちの心と結びついているのである。

・「私たち」の生きる社会では、個々の生き方とは無関係に、言葉によって区切られた1つの箱のなかに彼らを閉じ込めることで、結びつきがみえなくなっているものも多い。そのようななかで、”どのように語るか”を模索することは、言葉の枠を飛び越え、私たちと彼らとのあいだの結びつきをつくっていく手掛かりになるのではないだろうか。そして、その結びつきが社会のなかで広がれば、私たちと彼らが同じ日常を過ごす光景があたりまえの社会になっていくだろう。そのような社会こそ、私たちの社会をいえるのではないだろうか。

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”開かれた世界”、イメージカラーはだいだい色。私は、海の色は青ではなく、だいだい色だと思っている。それぐらい、厳しくて大きくてあたたかいものだと思っている。ソシュールは言う。言語体系が違うというのは、言葉の意味が違うということではなく、世界を見るものの見方が違うということである。

人の内なる魂から溢れる「生命」の世界を表現するには、それを伝える術を習得する必要がある。

作家の山崎ナオコーラさんが言っているのは、「誰にでもわかる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」ということだ。この一言だけでも、凄さが伝わってくるし、「誰にでもわかる言葉で」っていうところがなんというか勇気が出て、ちょっと安心するのだ。

言葉以前の世界をどう魅せていくかということに、表現の重きを置いたとして、その手段に「誰にでもわかる言葉」を用いたとするならば、なんだか一周回って、原点に立ち返ったような気持ちになる。でも、それはとても面白い。その場合、例えば「音楽が視える」といったような言葉の紡ぎ方、使い方に差異を持たせることがとても大切になってくる。ことば遊びとでもいうのだろうか。

なるほど。いくらでも、言葉で遊ぶことはできるんだ。面白い。では。


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