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オーストリア/ウィーンのホイリゲ街、ノイシュティフト・アム・ヴァルデの伝統あるお祭り

8月後半に入ったころから既に秋の気配のウィーン。今年の夏は2週間ほど35度越えの猛暑が続きましたが、それが終わると急に秋になってしまいました。

夏の短いウィーンでは、8月終わりから既に秋を思わせるイベントが始まります。今回覗いてみたのは、ウィーンに多数あるホイリゲ(ワイン居酒屋)街のうちの一つ、ノイシュティフト・アム・ヴァルデ(Neustift am Walde)のお祭りです。ウィーン市内とはいえ、ウィーンの森の中にあり、ワイン畑に囲まれているので、まるで田舎に来たようです。

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ウィーン市内なのに、この田舎っぽさ。山の方はワイン畑が広がっているのが見えます。

オーストリアの田舎ではディアンデルやレーダーホーゼンなどの民族衣装を着ている人を良く見かけますが、ウィーン市内ではなかなか着る機会もありません。しかし、このお祭りはウィーンに居ながらにして民族衣装が楽しめます。日本人が浴衣を着るような感覚ですので、気持ちも盛り上がりますね。

このノイシュティフトのお祭り(Kirtag)は18世紀中ごろまで遡り、女帝マリア・テレジアのエピソードも残る伝統あるお祭りです。

当時、この土地に住むワイン農夫が、マリア・テレジアに王冠を贈り、その年の収穫が悪かったため、税を免除してもらえるように嘆願しました。すると、マリア・テレジアは、税を全額免除しただけなく、贈りものの王冠まで返してくれたため、それをお祝いしたのがこのお祭りの始まりと言われています。

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レーダーホーゼ姿の若者が担いでいるのが、曰くつきのこの王冠。

このお祭りのハイライトは、カラマツをホイリゲの前に立てるイベント。音楽隊もやってきて、結構盛り上がりました。このカラマツはHiertabaumと言って、ワイン農家がここでしっかりワインを作っていますよ、という表明を表しているそうです。

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また、一般的に、ホイリゲの前に飾られる松の枝は、ワインを仕込んだサインで、この枝の枯れ具合で熟成度を計ります。日本の作り酒屋の杉玉とまったく同じ習慣で面白いですね。

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このHiatabaumの謂れが記された札と、木が立てられたホイリゲ。

このホイリゲ街ノイシュティフトには、16軒のホイリゲが並び、そのうちの3軒は私のお気に入りでもあります。(以前の記事で紹介したZimmermannもそのうちの一つです。)観光客にも有名なグリンツィングよりも静かな雰囲気で、地元民に交じってワインを楽しめるのが魅力です。

この日は、お祭りに合わせて道にも屋台を出していた、こちらのホイリゲに久しぶりに来てみました。

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入口は、ちゃんと松の枝が飾ってあります。

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この門の向こう側には、200人ほどが座れそうなテラスがあり、その奥にはワイン畑が見渡す限り広がっています。ウィーンに住んでいて、美味しいワインを飲みながら、自然を満喫できる贅沢な瞬間です。

ウィーンにはいくつかのホイリゲ街がありますが、このノイシュティフトも結構穴場かもしれません。ワイン好きの方は是非一度訪ねてみてくだい。

(2013年9月執筆)


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