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凍りついた美しき「白き」ドナウ!寒波のウィーンの氷と雪景色

近年珍しく寒波に見舞われたウィーン。3週間近く気温が氷点下を超えることのない日々で数年ぶりにドナウ河が凍り、スケートができるようになったというニュースが世界中で報道されました。

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凍ったアルテドナウ

流れているはずのドナウ河がどうして凍るの?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。実は、ウィーンにはいくつかの「ドナウ」があります。今回凍ったのは、その中でも人工的に川から切り離した三日月湖アルテドナウや、洪水対策のために川をせき止めたノイエドナウです。ドナウ本流のほうも寒波の終わりごろで凍り始める兆しを見せていました。

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表面が凍りかけたドナウ川本流

歴史的にはドナウ河は蛇行していて、網の目のように分流が入り組んでいたため、雪解け時などは洪水が多発して、昔からウィーン住民の頭痛の種でした。

「女帝」マリアテレジアや、皇帝フランツ・ヨーゼフ一世も治水工事の必要性を説き、19世紀には第一次ドナウ治水工事が行われました。このときに、蛇行する分流を三日月湖(アルテドナウ)として切り離し、本流をまっすぐにしました。

にもかかわらず洪水が再び多発したため、第二次世界大戦後、第二次ドナウ治水工事が行われました。ドナウ本流の左岸の川原に放水路を掘り、その間に長さ21キロに渡る人口を島を作り、放水路の上下をダムでせき止める大工事でした。この放水路はノイエドナウ(新ドナウ)、人口島はドナウインゼル(ドナウ島)と名づけられました。

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春のドナウ河。手前の濃い緑色の部分がノイエドナウ、奥の白濁した流れがドナウ本流。間の長細い島がドナウインゼル

雪解けなどの洪水が見込まれる時期は、ノイエドナウのダムを開放すると、本流とノイエドナウ両方で水が流れ、洪水が回避される仕組みとなっています。おかげで2013年の記録的な洪水危機も大きな混乱なく回避されました。またドナウインゼルは市民のリクリエーションの場として、ジョギングやサイクリングに好まれるほか、夏には野外フェスの会場にもなっています。

このように、ドナウ本流は凍らなくても、三日月湖のアルテドナウや、せき止められたノイエドナウは氷点下の日々が続くと凍りつきます。今回ニュースで映っていたのはこの二つで、週末にはウィーン各地からマイシューズとマイホッケースティックを持ったウィーン人が集まって、広い自然のスケートリンクで目いっぱいスケートを楽しみました。

ウィーン近郊の湖や池も凍りついたこともあり、ベビーカー、そり、ホッケー、徒歩など、スケートリンクでは見かけない人の姿も見かけました。

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ウィーン近郊の池でスケートを楽しむ家族連れ

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ホッケーを楽しむ子供たち

3週間近く凍った後は大雪が降り、ノイエドナウはスケートリンクから雪原に表情を変えました。お昼頃は、お昼休みのビジネスマンや、犬の散歩をする主婦、観光客などが、美しき「白き」ドナウに感嘆の声を上げていました。

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「歩いて川を渡る」という珍しい体験も、雪野原ならでは。

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ドナウ河本流の方は、メキシコプラッツの教会を背景に、白鳥がお散歩していました。

ウィーンの自然環境でのスケートは、氷が薄い部分や外から見えない亀裂があることもあり、行政からは「自己責任ですべるよう」通達が出ています。必ず現地人が多く滑っている場所を確認し、一人きりで滑ることのないよう、気をつけて楽しんでくださいね。

(2017年1月執筆)


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