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トラム53台の歴史を遡る!ウィーン市電150周年パレード

週末ごとに町のどこかでお祭りが開かれているウィーンですが、時には旧市街を囲む環状道路「リンク大通り」を閉鎖して、パレードが行われることもあります。

そんな大掛かりな「リンク大通り」のパレードの中でも、今回は記念すべき「ウィーン市電150周年祭り」をご紹介します。

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メイン会場の市庁舎前広場

このお祭り、ウィーン市民にとっても、世界の電車・市電ファンにとっても記念すべきもの。当日はかなりの人だかりができ、この150年に一度の歴史的なイベントを見に来ました。

メイン会場となるウィーン市庁舎前では、有名歌手を迎え、野外ステージで様々なショーが繰り広げられ、屋台や交通に関する展示がにぎわいました。また、当日はウィーン市全ての交通機関が無料になるチケットが配られるなど、まさにウィーン市民のためのお祭り。

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市庁舎の横の国会議事堂前は、歴史的トラムを見ようと人だかり。

そんな中、このお祭りのハイライトは、過去150年間に使われたすべての市電53台のパレードです。150年前といえば、日本では幕末の時代。オーストリアではハプスブルク家の皇帝フランツ・ヨーゼフと皇妃エリザベート時代といえば、その歴史がお分かりいただけるでしょうか。

ウィーンはちょうどその頃、旧市街を取り囲んでいた城壁を取り壊し、リンク大通りとその周りを取り囲む主要な建築物が建てられました。このリンク大通り建設に合わせ、新しい市民の主要道路となったこの道には、市電が走り、市民の足になりました。

しかし150年前はまだ電気が使用されていなかった時代。最初のトラムの動力は、なんと馬でした。そして、蒸気で走るトラムが使用され、そのあとやっと電気で走る市電の登場となります。

パレードの先頭は馬車トラム!絵で見たことはあっても、実際のトラム路線を馬車トラムが走るなんて、前代未聞の事です。いつもは市電博物館に鎮座している車両に生きた馬をつなぎ、リハーサルを重ねての登場です。

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馬車トラムが当時の姿を見せるのは、もうこれが最初で最後かもしれません。

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皇帝フランツ・ヨーゼフと皇妃エリザベートの衣装が歴史ムードを盛り上げます。

次にやってきたのは、煙をもくもくと吐き出す蒸気機関トラム!普段は車の走る道を蒸気機関車が走っているのは、非現実的で迫力でした。

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迫力の蒸気機関トラム

その後も、次々と古い型のトラムやバスが目の前を通過します。100年ぶりに動かしたようなものも混じっていますが、退役した運転手を呼び戻したり、止まったりスピードが一定ではないおんぼろトラムを気合で動かしたりと、ウィーン市交通局の意気込みが感じられました。

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電気で走るタイプのトラムでは、最も古いもの。動いているのが奇跡の様です。

鉄道ファンの大人や子供たちがみんな興奮した目つきで見ています。ブルク劇場前では、ヒッピーなど当時の服装に身を包んだ乗客が降りてきてダンスするパフォーマンスもあったそうです。

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国会議事堂前で興奮した面持ちのウィーン市民。

現在は地下鉄6番線となっている旧シュタットバーンや工事専用車両など、通常は市電の線路を走ることがない車種や、古い二階建てバスから最新の電気自動車バスまで、様々な乗り物を見ることができました。

電車好きだけではなく、歴史ファン、子供たち、運転手さんや警備の警察官まで、みんなが目をキラキラさせて150年のリンク大通りの歴史を遡る、鉄道史上に残る素晴らしいイベントでした。

(2015年10月執筆)


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