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燃え上がるラム酒入り砂糖がロマンチック!クリスマスの風物詩「フォイヤーツァンゲンボウレ」

クリスマスから新年の時期にかけて、オーストリアでは至る所でパーティーが開かれ、この時期にしか食べられないもの、飲めないものもたくさん登場します。今回は、そんな中でもパーティーの主役になる、派手でちょっと変わった飲み物をご紹介します。

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赤い液体の上に青白い炎。これはいったい何でしょうか?

「フォイヤーツァンゲンボウレ」Feuerzangenbowleと呼ばれるこの飲み物は、クリスマスの時期にオーストリアでよく飲まれる、グリューワイン(ホットワイン。温めたワインにスパイスや柑橘系フルーツ、砂糖を加えた飲み物)の一種です。グリューワインより味わい深く、アルコールも強い、グリューワインの王様のような飲み物です。

また、グリューワインはクリスマスマーケットなどの屋台で楽しむことができますが、フォイヤーツァンゲンボウレは鍋が必要なことから、通常家族や友人たちが集まって、ホームパーティーで楽しむイベントとなっています。日本でいうと忘年会鍋パーティー的な、アットホームな雰囲気がほっとします。

用意するものは、赤ワイン、ホットワインのスパイス、大きめの鍋、コンロ、砂糖の塊、80%のラム酒、金属製の砂糖台です。まずは大きめの鍋に赤ワインを1,2本入れ、シナモン、クローブ、オレンジの皮などのグリューワインのスパイスを入れ、温めます。ここまでは普通のグリューワインの作り方と同じですね。

次にもう一つの材料、高さ約20センチの円錐形の巨大な砂糖の塊を準備します。これはZuckerhut(砂糖の帽子)と言って、オーストリアではこの季節に簡単に手に入ります。この砂糖の塊に、なみなみと80度のラム酒を注ぎ、しっかりと浸み込ませます。

通常この砂糖の塊は54%以上のアルコールを掛けて使用すると説明書きにありますが、色々試した友人によると、このオーストリア産Stroh社の80%のラム酒が一番だとのことです。このラム酒もスーパーで手に入ります。実際に味見してみましたが、このまま飲むと舌をやけどしたようなきつさです。

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オーストリアが誇るStroh社の80%のラム酒。

ここで、フォイヤーツァンゲ(火バサミ)と呼ばれる専用の砂糖台を用意し、鍋の上に渡します。このフォイヤーツァンゲは、金属製の穴の開いた長方形の板で、この上に先ほどのラム酒に浸した砂糖を載せます。昔はこの板を使わず、砂糖の塊を火バサミで挟んで使っていたことから、この名前が残っているようです。

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これで準備は整いました。

部屋の明かりを暗くして、友人たちが見守る中、パーティーの主人がおもむろに、この砂糖の塊に火を点けます。更に、上から残りのラム酒を掛けると。。ファイヤー!!!!

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80%のラム酒ですから、ものすごい勢いで炎が燃え上がります。ジュッジュッという音を立てて、高温になった砂糖とラム酒が、下の赤ワインに落ちていく音がして、グリューワインのスパイスととラム酒の香りが部屋の中に広がります。

少し火が落ち着いてきて、砂糖の塊にしみ込んだラム酒が青い炎を放ちます。よく見ると、金属の台から下の赤ワインに、青い炎が落ちていくのが見えますね。こうやって、砂糖の塊が燃え、キャラメル状態になったものが下の赤ワインに加わることで、グリューワインよりさらに味わい深い、フォイヤーツァンゲンボウレ独特の味が楽しめるんです。

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この塊が、全部燃えてしまうまで何度かラム酒を加えます。

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パーティーの主は、毎年友人グループを招いて、フォイヤーツァンゲンボウレパーティーをしているので、作り方も慣れたもの。ものの10分ほどで、砂糖の塊は燃え上がり溶け切って、赤ワインと混じり、独特の風味を作り上げます。

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砂糖がほとんど溶けきり、出来上がったフォイヤーツァンゲンポウレ。これをこれから、クリスマスクッキーやソーセージをおつまみに、美味しく頂きます♪

このフォイヤーツァンゲンボウレパーティーの招待が来ると、もう一年が終わるなーという気がする、年中行事の一つになっています。日本でもゲーテ・インスティトュートなどで体験できるところがあるそうなので、もし機会があれば一度飲んでみて下さい。目の前で青白く燃える上がる炎には興奮すること間違いなしです。

(2015年12月執筆)

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