ザボンの実 ぼくのベトナムドラッグ珍道中⑪
忘れかけていたグェン・トゥン・アン
『いやぁ、かなりヤバいですな。僕だったら多分死んでいるんじゃないかなぁ』
『はぁ・・・』
フロントのおじさんが真顔でそう言った。色黒で痩せていて、下まつげが長い。ベトナムは他民族国家と聞いていたが、何かそういう下まつげ族とかあるのだろうか。それくらい長い。
ぼくはちょっとした会話のついでに、初日の夜、cansaを求めて1人でホーチミンを彷徨っていた事をちらっと話していた。以前の記事を貼っておく。
話を聞くと、旧正月(テト)の直前の時期だったので人が少なく、無事に帰れただけの事らしい。普段だったらギャングによる強盗や拉致の可能性もあり、事実、外国人のそういう事件も日々報道されているようだ。
これはぼくの勝手な意見だが、若者だったから助かったのではないかな?とも思う。
若くてお金もなさそうな外国人がフラついていたら、何コイツ?と彼らも面白がって興味を持ってくれるが、今のぼくの様なおじさんがフラついていたらタダのカモになるか、彼らのやり場のない暴力の対象になっていただろう。
『まぁ、アレは確かにやばかったかもしんないな・・・まじで犯されていたかもしれん。注意力の無さにだけは自信がある。気をつけねば・・・はぅあ!!!』
ぼくは自分の部屋に向かいながら考えていたが、部屋を見てビビった。めちゃくちゃ良い部屋である。
『どの部屋でもいいとは言ったけど、こんなちゃんとしたの初めてや・・・。マジでホームアローン2だな。まぁいいや。とりあえず、さっきのハノイ駅前でゲットしたカンナビスをテイスティングしよう』
ホーチミンの時限爆弾タイプのガンジゃしほりと違い、これは香りもツンと強く、すぐに暖かいハイがきた。なにせ顔がパンパンに膨らんだ気がしている。これはネイチャーである。
ぼくはニタニタしながら、部屋の端っこにある冷蔵庫をおもむろに空けてみた。そして優作になった。
『なんじゃこりゃあ!!!』
酒屋のサブちゃんである。そして、海外製の高カフェインのレッドブルもたんまり入っている。落ちたら持ち上げろ、というメッセージだ。
『いや、何かがおかしい・・・はっ!?!?』
何もかも見えるような透明な風呂である。そして洗面台をよく見ると、ラブホによくある洗口液のパックや、怪しいものが多い。そしてデリヘルらしき冊子までそっと用意してある。
『なるへそな・・・』
ぼくはハノイの熱いおもてなし体制に思わず胸が熱くなり、おち○ちんも熱くなっていた。
しかしシステムも何もわからず、相談できる人もいない。
ぼくはとりあえずガンジャを堪能しようと思い、pornhubにアクセスし、「vietnamese teen huge boobs」と検索した。
そして漢を見せようとした時、 LINEが鳴った。アン君である。
『大丈夫?今どこにいる』
ぼくは、やばい、完全に忘れてた・・・と思った。そもそもアン君に再会するためにわざわざハノイまで来たんだった。健忘太郎である。
あの夏に、あの場所で・・・
久々にアン君と連絡を取り、ハノイに着いたこと、明日バックザン州まで行き、待ち合わせること等を決めた。
ハノイからバックザンまで60キロほどなので、適当にタクシーになるだろう。
ぼくはアン君に、バックザンのどこで待ち合わせるか聞いてみた。
『う〜ん、BIG Cまで来てよ、来たら連絡して』
BIG C??BIG Aというスーパーは聞いたことがあるが・・・。ぼくはその名前だけで30分くらい笑っていた気がする。ということは、世界のどこかにBIG Bもあるはずだ。
Googleで調べるとすぐに出てきた。どうやらバックザンにある、イオンモールのような複合施設のようだ。
そして近くにはサムスンの工場がたくさんある。ぼくはこの旅中、色んなところで韓国人?とよく聞かれて、その都度日本人だよ。と言うとなんか微妙なリアクションを受けていた。多分韓国企業の工場がたくさんあるのも関係しているのだろう。
ぼくは明日の予定を考えているうちに、すっかりおち○ちんもしぼみ、皮も戻っていた。
『いやぁ、なんか冷めたなぁ・・・ん???』
結局ぼくは泥酔し、シコって寝た。ところ違えど、やることは同じである。
なぜ詐欺るんだい??そして再会
翌日、チェックアウトしたぼくはMANGO HOTELの前でハイライトのメンソールを吸っていた。
『さてと、カンナビス達は隠したし、タクシーでも拾うか。ていうか、冷蔵庫の中ほとんど空になるまで飲んだけど、お金請求されなかったな・・・。無料なのか?なんか変なこと言われる前に逃げよう』
ぼくは若干焦りながら右手を上げると、すぐさまタクシーが止まった。
バックザンのBIG Cまでお願いしやす、と言うと、なんで外人がそんな所行くんだよと笑われた。
そして車が動き出すと、ぼくは少し気持ちを入れ替えよう、と思った。
何せここまでは自由に1人でちんたらストーナー旅をしてきたが、アン君やその家族、親類に会ったらニタニタとストーンしてはいられないだろう。
引かれるし、日本人が誤解される・・・。
ぼくはそんな気持ちの中、タクシーの中でジョイントを焚き、切ない表情をしていた。運転手さんの顔は引きつっていた。
そしてとうとうバックザンのBIG Cに着いた!
ぼくは喉が渇いていたため、水を買おうと思い中に入った。
そしてレジにて現金を渡すと、さっそく事件が起きた。バックザンに来て3分くらいである。
『このお札は、破れてるからぁ、使えませんよ』
顔の濃いおばさんの店員がふてぶてしく言った。
しかしそんなことは無い。なぜならぼくは両替時にしっかり確認していたし、レジに出す前にも確認していた。
と言うのも、ベトナムでは基本的に、破れたり汚れた紙幣を銀行は交換してくれない。かといって、そう言う紙幣の価値がそのままあると言うこともなく、破れた紙幣の価値は度合いによるがほぼ0である。
つまり、国民の間で破れた紙幣の押し付け合いが日頃から行われているわけだ。レジの店員は巧妙にすり替えを行い、そのターゲットによくなるのは外国人だ。
ぼくはそう言われた瞬間、すべてがめんどくさくなり、言われるがままそのババアに新たに払った。(その破れたお札で後日、ジョイントを巻いた)
ぼくはBIG Cの前でハイライトのメンソールを吸い、さっそく詐欺られてるやん・・・と思った。
そしてアン君に着いたよーと連絡すると、しばらくして、遠くからけたたましいバイクの音が聞こえてきた。
ぼくは若干、これがアン君じゃありませんように・・・と思ったが、しっかりアン君だった。
『おーい!おーい!』
ベトナム版のスーパーカブ(ドリーム・ハイという)を改造したバイク集団の中にアン君がいた。
『アン君!』
ぼくらは抱き合い、その再会を喜んだ。アン君はちょっと泣いていた。
そしてここからぼくは、この暴走族に飲み込まれていく事になる。
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