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「届かない手紙」コンテスト結果発表!(選評)


教材文化資料館前期企画展「びんせんとペンごっこ:手紙ではじめるクリエイティブ・ライティング」展の関連イベントして、4月~7月の期間に開催しました「届かない手紙」コンテスト。
決して届かない宛て先に手紙を書くという、このナンセンスな企画に、予想を上回る200通のご応募をいただきました。
どの手紙にもなかけがえのない物語が込められていて、受賞作品を決めるなんて、断腸の思いではありますが、図書館スタッフのメンバー(写真)と、今回企画展に協賛いただいたナガサワ文具センターの皆様、そして、須田康之附属図書館長により、選考を行わせていただきました。

大賞(ナガサワ文具センター賞)

『中学生の私へ』
 勝谷 こころ さん 学校教育学部1年

最優秀賞(附属図書館長)

『学園広場の口笛のあなたへ』
 和泉 久美子 さん 一般(小野市)

優秀賞

『コロナウイルスへ』
 寺田 声 さん 学校教育学部1年

審査員特別賞

『鶏肉へ』
 R.T.さん 学校教育学部1年

『天国の両親へ』
 Y.M.さん 学校教育学部1年

佳作

『自分の体毛へ』
 Z.Z.さん 学校教育学部1年

『私を見つけてくれた人へ』
 森脇 朱里 さん 学校教育学部1年

『期待する「あなた」へ』
 Kさん 学校教育学部1年

『マハトマ・ガンディーさんへ』
 大崎 智稀 さん 学校教育学部1年


選評

(永)難しかったですね、候補作選ぶの。

(山)でも、至福の時間でした。

(生)涙あり、笑いありで。

(永)僕、大学の頃こっそり詩を書いてたけど、ずっとマイノリティの、絶 滅危惧種とすら思ってました。でも、結構いるんですね、詩人が。

(東)TwitterやLINEも文字を使いますからね。どの時代にも詩人は生まれてくるんじゃないでしょうか。

(山)今回は、それが便箋とペンという、より手間と時間のかかるツールを使ったことで、一層詩的になったという面があるかもしれません。

(生)お気に入りの手紙は?

(永)詩的という意味では、「コロナウイルスへ」と「マハトマ・ガンディーさんへ」が僕は好きですね。前者は意図的な詩人で、後者は無意識の詩人という感じでしょうか。

(山)「コロナウィルスへ」はあの短い文章のなかに物語が凝縮されています。

(永)結びがしびれますよね。「マハトマ・ガンディーさんへ」は逆に物語性がなくて、モラトリアム期特有の無為徒食ぶりを書き連ねるだけなんだけど、やっぱり結びにちゃんと絞めてくるところが憎い。

(生)「鶏肉へ」も秀逸でしたね。鶏肉と卵へのあの愛情溢れるサディスティックな語りかけが素晴らしい。

(山)「1週間前の舞踏会」って、たぶん焼き鳥パーティか何かでしょうね。

(東)「私の心射止めたハートちゃん」だって(笑)。

(山)とにかく擬人化のオンパレードでしたね。この人はほんとに詩人になるんじゃないでしょうか。

(東)笑いでいえば、「自分の体毛へ」もいいですね。雑草のように生えてくる体毛への怨念が。

(生)でも、「体毛さん」って、さん付けしてるところが可愛い。

(永)「期待する「あなた」へ」も、手紙というより、詩でしたね。自分の前にいて、でも決して追いつけない理想の自分。けれど、だからこそ明日に向かって前向きに生きていける。そんな、何といいますか、若さゆえの朗らかな葛藤がうまく表現されています。

(生)今回最も多かったのが、死別した家族に宛てた手紙。同じテーマなのにどれ一つとして、同じ物語がないところに感動しました。

(永)我々おじさん連中は、何度も泣きましたよ。

(生)そのなかでも、「天国の両親へ」は、短くてどこかさわやかな書きっぷりなのに、なぜか胸に迫るものがありますね。

(永)そうそう。

(東)なぜなんでしょう。

(山)「昔から人を笑わせるのが好き」っていうところがいいですよね。

(永)普通の言葉遣いしかしてないのに、読めば読むほど、感動の度が増してくるのが不思議ですね。

(生)「私をみつけてくれた人へ」は、宛て先の設定がユニークで面白かったです。2歳の頃に迷子になった自分を助けてくれた人に宛てた手紙。

(山)確かに、届かないですよね。

(生)だからこそ、何かドラマを見ているような感動がありました。

(東)ドラマといえば、「学園広場の口笛のあなたへ」は、まるでラジオ・ドラマを聞いているような楽しさと感動がありましたよね。

(山)じれったいほどのプラトニックな関係がいいですよね。

(生)「声掛けたらいいのに」って思いましたけど。

(永)これがきっかけで、学生服の人と再会を果たしたりして。

(生)でもそうなったら素敵ですよね。今回大賞となった「中学生の私へ」はいかがでしたか?

(山)いやあ、これはもう…。

(東)ハンカチがないとしゃべれない。

(山)ナガサワ文具センターの塚本さんも、ハンカチじゃなくて分厚いタオルで涙ぬぐいながら読まれてましたからね。


企画に協力いただいたナガサワ文具センターの竹内直之氏(右)と塚本昌宏氏



(永)何というか、一気に書いた感じがありますよね。あの勢いが凄かった。もう一度同じものを書いてと頼んでも書けないと思うんですよ。

(山)リズムがありましたね。どの一文を削っても、バランスを崩して瓦解してしまいそうな、そんな切迫感というか切実さが、胸に突き刺さりました。

(東)ぜひ子どもの思いに寄り沿う先生になってほしいですね。

(生)今回すべてのお手紙を紹介できなくて残念ですが、この他にもたくさんのいいお手紙を投函していただきました。本当にありがとうございました。

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