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育児日記ー堀川遊覧船

近場で何か面白いアトラクションを体験できる場所があればいいのにと思うことがある。しかし、島根県のような田舎では、遊園地やそれに類似した施設はほとんど見つからない。

でも、だからといって田舎を卑下し、不平不満を言うのは少し違うと感じる。田舎には田舎の魅力があるのだ。都会のアトラクションに染まっていないからこそ、日常の何気ない出来事が特別な体験として感じられるのではないだろうか。

例えば、地元の観光地を観光客として体験することは、新しいエンタメになるのではなかろうか。

観光と言っても、見て楽しむことはできないだろう。見慣れているのだから。しかし、観光客用に用意されたエンタメを体験するのは、ちょっとした冒険ではなかろうか。
アトラクションにあふれた都会とは違い、田舎の生活ではそんなことでも、一つ一つの出来事が新鮮で、心に残るのではなかろうか。

そこで、7歳女児と共に向かったのは、堀川遊覧船だ。

国宝松江城をぐるりと囲うお堀をゆったり進む屋根つきの小さな船。
靴を脱いで畳の上に座ったら、船頭さんの合図とともに、松江城の周りを一周する、気ままな旅がはじまるのだ。

堀川遊覧船HPより


まずは、小学生は救命具をつけることになります。

救命具装着!



船に乗り込む前に聞いた話では、待ち構えるのは個性豊かな17の橋。そのうちの四つは、なんと屋根を下げないと通れないとのことだった。

そして、いよいよ乗船。
船に乗り込み、後部の板の間で靴を脱ぐ。屋根の下には畳が敷かれ、座布団が並んでいる。
私たち二人が乗った船は十人乗りの船だった。最初の感想は、「屋根が下がった状態だと確かに狭いな。出航とともに屋根が高くなるのかな?」というものだったが、その期待は見事に裏切られた。

船頭と船着場の人たちの言葉に耳を傾けると、私は目が点になった。
「お客さん、背が高いから、かがんだくらいじゃ体が入りませんねぇ」
「屋根が下がったら、もう、畳の上に寝てください。この船はお二人の貸切みたいなもんですから。」

まるで高級リゾートのVIP待遇のように聞こえる。先ほど六人くらいの団体が待合室にいたのに、なぜ私たちだけがこの特別待遇なのかと考えたが、どうやら別の船を出すらしい。
向こうの団体もVIP待遇ということだ。
しかし、今直面している問題はこれから先、屋根がさらに低くなるということだ。恐ろしい。

「マジでこの船で天井に頭ぶつけないようにしなきゃ」と思いながらも、いや、これは立派なアトラクションじゃね⁉︎と、ほくそ笑んだ。

きっと、ユニークで笑える体験だ。
果たして最後まで無事に通過できるのだろうか?

そうそう。座布団はただの座布団じゃなかった。

救命クッション

救命+クッションらしい。

そして、船は水の上を滑り出した。驚くほど音が静かだ。
「この船は音が静かですね」と私が言うと、船頭が答えた。「他の船はエンジンですが、この船は電動船なんです」
船着場にはまだ4、5隻の船が残っていたが、中を覗き込むと確かに他の船はエンジンだった。

いや、待て。なんと、船までVIP対応だ。
やはり、私がイケメンだからだろうか。イケメンも罪だななどと少女マンガの登場人物になったようなつもりで、ありえないことを想像する。

静かな電動音を響かせながら船は進む。女性の船頭さんは、慣れた口ぶりで解説を始めた。
船は最初の橋に差し掛かった。かなり高い橋で、楽勝ですり抜ける。

最初の橋

(あれ、この写真の白い靴って、靴底が変じゃね⁉︎と思われた方は↓こちらの記事をどうぞ)

話を元に戻そう。
最初の橋を潜り抜けると徐々に川幅が狭くなる。

川の両側には大きな木々が枝を伸ばし、豊かな緑の葉が覆いかぶさるように茂っている。葉が水面に映り込み、川の幅が狭く感じられるこの風景は、まるでアマゾンの奥地を冒険しているかのような錯覚を覚える。

自然のトンネルの中を進む船は、静寂の中で水面を滑るように進み、周囲の緑が一層鮮やかに目に飛び込んでくる。冒険心をくすぐるこの情景は、都会では味わえない特別なひとときだ。

誰だ⁉︎ 『観光と言っても、見て楽しむことはできないだろう。見慣れているのだから』なんて言ったのは。
見方を変えれば新鮮ではないか。

松江城の堀の部分の全てに石垣があるわけではないらしい。このように、木が密林となっているところもあり、その中にまた、トラップがあるらしい。

そして、いよいよ、低い橋で屋根が下がる。

↑この動画を見ていただきたい。
私が撮影したものだ。
これには、子どもも大喜びだ。まさにアトラクション!これぞ、育児日記。

一方で、私の体は悲鳴をあげていた。言われた通り、かがんだだけでは、体が入り切らず、片側五人分のスペースに寝転がっていた。

橋をすり抜けるたびに、それぞれの橋の違いがわかる。木の橋もあればコンクリートの橋もある。アーチ状になっているものもあれば、真っ平のものもある。

そして、交通量の多い幅広のコンクリートの橋の下では、また、別のアトラクションがあった。橋の下は音が反響する空間で、そこで船頭さんが、民謡を披露してくれたのだ。

スタートからゴールまで、マイクで解説してくれたわけではない。
民家があるところでは、マイクを切り口も閉ざす。

この堀川遊覧船を始める時には、周辺住民の許可を取るのが大変だったことだろう。
観光客の方々には、ぜひ、船頭さんの指示に従って静かにすべきところでは静かにしてほしい。

周辺住民に迷惑をかけて廃止されることなどあれば悲しすぎる。

文中で子どもが大喜びと書きながら、それほどはしゃいでいるように見えないのは、そのことを察知してのことである。

船をおり、車に乗ると興奮して早口で感想を言っていた。

田舎での生活は、素朴でありながらも豊かな体験を提供してくれる。

キャンプや魚釣りなど自宅の近くでできるし、見慣れた風景の中に新たな発見があり、ゆっくりとした時間の流れが心を癒してくれる。だからこそ、田舎の魅力をもっと見つめ直し、楽しむことが大切だと思った。


#育児日記

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