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81-90ショートショートnote杯まとめ

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氷堂出雲のショートショートnote杯 まとめ 記事番号81-90
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危機一髪のおと(409文字)ショートショートnote杯

危機一髪のおと(409文字)ショートショートnote杯

ぴー!

歩いていて、交差点で大きな笛の音が頭の中で鳴り響く。

何回聞いてもビクッとしてしまう、大きな音。

危ないところだった。スマホを見ながら歩いていて信号が変わったことに気づかなかった。

危機一髪の音。
いつの日からか、聞こえるようになった。

最初に聞いた時には、キョロキョロと周りを見渡したが、自分にしか聞こえないものだと理解した。
いつも、救ってくれるけど、プライベートで女性に話しか

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タイムスリップ履歴書(410文字)ショートショートnote杯

タイムスリップ履歴書(410文字)ショートショートnote杯

タイムスリップ履歴書という書き込み式の用紙が発売された。

これを機に、多くの企業は、この用紙を義務付けた。
履歴書の入学した日付からしばらくの映像や卒業の日付の少し前の映像のダイジェスト映像が、試験官の頭の中に流れてくるからだ。

昔、やんちゃをしていたやつは、ことごとく落とされた。

三流大学卒の青山一郎が、超一流企業を受け、トップ合格した。

タイムスリップ映像の中の、品行方正で、絶大なるリ

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穴の中の神様(409文字)ショートショートnote杯

穴の中の神様(409文字)ショートショートnote杯

青年は地面に井戸を掘っていた。
4メートル掘ったところで横の岩肌から声がする。

「私は神だ。出してくれ」
「神なら、簡単に出れない?」
「神は専門分野に分かれていて、穴の中は、専門外で動けんのじゃ」
「じゃあ、あんたは何が専門なんじゃ?」
「助けてからのお楽しみじゃ」

青年は声のする方向に掘った。
穴を横方向に掘っているので、今は、Lの字になっている。

中にいた和服のような服を着たおじさんを

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タイムスリップ財布(410文字)ショートショートnote杯

タイムスリップ財布(410文字)ショートショートnote杯

コードバンの財布を買った。

さっそく、お手入れセットで革を磨く。
中を開けると、一万円札が十枚入っている。

いや、そんなバカな。さっきまではなかったはず。

これは俺の財布だ。
財布の中の袋の部分がタイムスリップしたのだ。

そうとしか、考えられない。

つまり、これは未来の俺の金であり、俺が俺の金を使っても犯罪にならない。

都合のいい理由を思いつき、その金で豪遊した。
次の日、中を見ると、

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金持ちジュリエット(410文字)ショートショートnote杯

金持ちジュリエット(410文字)ショートショートnote杯

うちの親は超金持ちで過保護がすぎる。
プロの女優になった私。
主役のジュリエット役をパパがお金で買った。

劇場の建て替え工事の費用を負担するらしい。

お陰で劇団では金持ちジュリエットと言われ浮いてしまっている。

この劇で役者として腕を一番見せるのはジュリエットの乳母だ。
私がやりたい役。

ロミオとジュリエットが初めてあった時、相手が誰かそれぞれに伝えて、バルコニーでの名場面で水をさし、ジュ

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未来鏡(410文字)ショートショートnote杯

未来鏡(410文字)ショートショートnote杯

砂浜で、亀を子ども達がいじめていた。

かわいそうに思い、海に逃してやった。

竜宮城に連れて行ってもらい歓迎を受け、

竜宮城のお土産に未来鏡を渡された。

家に帰り、壁に鏡を吊す。
「未来鏡って言ったら、未来が見えるんだろう。
でも、なんで鏡なんだ?

あ、あれだろ。最初からテレビで、未来も見えるってのより、鏡なのに未来も見えるっていう不思議グッズ感?

いやいや、鏡である必要はないよな。

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誰も知らない神様(410文字)ショートショートnote杯

誰も知らない神様(410文字)ショートショートnote杯

「神様、どうか、僕に彼女を、いや、婚約者をください。
とっても美人で、ナイスバディで、
優しくって、よく気がきいて、頭が良くって、
料理が上手で、僕を立ててくれて、
ほどほどに綺麗好きで、
掃除が好きで、僕のことを悪いところも含めて大好きで、
絶対浮気をしないどころか、僕のことだけをカッコよく思ってて、
僕だけに心を許せると思っていて…」

「おい、ちょっと待て。お前は、鏡を見たことあるのか?

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ネコノリ(216文字)ショートショートnote杯

ネコノリ(216文字)ショートショートnote杯

同棲している僕の彼女……そのノリは、まるで猫だ。

ソファの上で寝ていると、お腹の上に乗ってきて甘えてくる。

僕の体のあちこちに顔をすりすりしてくる。
「他の女の子に取られないように私の匂いをすり込んでるの」
とかわいい笑顔を見せる。

よく、ソファに座ったままお昼寝していたりする。

ただ、時々、何もない壁や部屋の隅の方をじっとみていることがあり、それが怖い。
「何かいるの?」
と僕が聞いても

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しまうまノリ(407文字)ショートショートnote杯

しまうまノリ(407文字)ショートショートnote杯

おにぎりはノリで巻くと菌が繁殖しやすい。
中が、蒸れるからだ。

おにぎりが腐らないようにするための方法を色々考えた。

手で直接握らないのはもちろんだが、食べる直前にノリを巻く方法や冷めてから巻く方法。

そんなの、めんどくさい。

海苔会社の研究室にいる僕は、新しいノリを開発した。ご飯に巻くと、一定方向に海苔が縮んでちぎれていく。

あっという間におにぎりは、しまうま模様になる。
その名も「し

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太郎ノリ(410文字)ショートショートnote杯

太郎ノリ(410文字)ショートショートnote杯

高校に太郎という子が転校してきた。

気さくなやつで、すぐにみんなと仲良くなった。
でも、僕は、距離を置いている。

太郎ノリのせいだ。

みんなには見えていないようだった。
太郎の頭の上にいつもぴょこんと座っているこびとの姿が。

船に乗る人を船乗りという。
太郎に乗って、いつも太郎と同じ方向を見ているこびとを僕は太郎ノリと呼んでいたのだ。

ある日、勇気を出して聞いた。
「太郎くん、君の頭の上

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