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想定外を放置していいのか~夏の高校野球新潟大会・準々決勝の開催方式に関する問題提起~

 この記事は、2017年7月20日(木)深夜にfacebookのノートに書いたものを転載したものです。
21.8/16追記:下部での記事追加に合わせて念のため書きますと、今夏の準々決勝は2試合×2日で行われました。これが恒常化すれば、この記事の役割は終わったことになりますが(^^;;

 「8時30分第一試合開始、21時27分第四試合終了」―20日、夏の高校野球新潟大会の準々決勝4試合がハードエコスタジアム新潟(以下、エコスタ)で行われました。しかし、夕方6時前に開始された第四試合が延長12回に及び、4試合の所要時間は半日(12時間)をも超える時間となってしまったのです。

①新潟県高野連の「想定」

 エコスタが完成した2009年以降、夏の県大会では開会式と準々決勝~決勝がエコスタで行われています。それまでは、原則として以下のような形で準々決勝以降の試合が行われていました。

準々決勝:2球場で2試合ずつ同日開催
 準決勝:新潟市鳥屋野運動公園野球場or長岡市悠久山球場で一日2試合
  決勝:準決勝と同じ会場で開催

 今でも、エコスタ以外の天然芝の球場で一日に行えるのは3試合が限度です。これは芝を保護するためでしょう。しかし、エコスタは耐久性の高い人工芝であるからか、震災の影響のあった2011年を除いて「準々決勝は一日で全4試合を行う」ということになっています。
 高校野球の日程の組み方は都道府県によって違いがありますが、新潟県では「一試合2時間、インターバル(グラウンド整備・両校シードノック・スタメン発表)30分」という想定で日程が組まれているようです。エコスタで行われる準々決勝は、8時半~第一試合、11時~第二試合、13時半~第三試合、16時~第四試合という日程です。
 これまで、「一日4試合」の準々決勝においてこの想定が大きく外れることはありませんでした。遅くとも、空が真っ暗になるまでには全試合が終わっていたのではないかと思います。しかし、今年は残念ながら想定外の事態となりました。

②高校野球をナイターで行うことの弊害?

 今日の結果と実際の開始時刻
 第一試合 8時半   日本文理10x⑦3巻総合
 第二試合 11時10分    北越13⑦6東京学館新潟
 第三試合 14時05分    中越13⑪3五泉
 第四試合 17時55分 ※高田北城8⑫7長岡工
 ※丸数字はコールド・延長戦での決着イニング、※=公立
 コメント:最近はこうなることが多くなった気がしますが、ベスト8に上越・中越・下越・新潟市の高校が揃うとホッとします。
21.8/16追記:スコアボードの写真も含まれるので、当日についての記事を追加しました。

 予定では「第四試合は18時頃に終わる」と想定されていたと見れる訳ですが、その時間帯にようやく第四試合が始まったのです。こんな時間から始まれば、いくらスピーディーに試合が進行しても、終わる頃には空が漆黒の闇に包まれていることは自明のことです。
 第三試合は、延長11回に中越が大量10点を挙げるという異例の展開となりました。その頃に、高野連関係者がどのように考えていたのだろうかと思うのです。少しでも第四試合の開催を迷ったとすれば、まだいいのですが…

 今春、高校野球東京都大会の決勝が急きょ明治神宮野球場でナイター開催されました。当初は日曜午後に神宮第二球場(定員5,600人)で開催予定でしたが、「清宮ブーム」を受けての対応でした。結果的に早稲田実業vs日大三という「センバツ出場校対決」となり、当日は2万人が詰めかける大盛況となりました。ただ、そもそも安全上の配慮だけをするなら会場変更だけで十分だったはずで、なぜナイターにしたのかという疑問は残ります。
 18時過ぎに始まった試合が終わったのは22時06分。決着に12イニングを要し、得点で18-17、両校合わせて36安打19四死球(2エラー)という大乱戦となりました。この要因として、慣れないナイターであったことが特に守備に影響したのではないかと言われていました。

 今日の第四試合を「清宮ナイター」と単純に比較することはできませんが、似たような試合展開に見えてしまいました。両校合わせて22安打13四死球7エラーだったと言います。今日の場合は、エラーの多さにナイターの影響が出たように見えてしまいます。(4試合の中で最多)

③「強行開催」の影響―そもそも予定通りだったとしても…

 高田北城と長岡工の選手たちが今日の試合後どうする予定だったのかはもちろん知る由もないわけですが、明日試合がない予定だった訳ですから学校へ帰る予定だっただろうと考えられます。バスで学校に戻った後にそれぞれ保護者の車で帰るのでしょう。特に、高田北城(エコスタから129km、長岡工~エコスタは62km)の関係者の方がより遅い時間の帰りになることは想像に難くありません。
 さらに、今日の運営に当たった当番校の部員たちのことも忘れてはいけない訳です。今日は、7時15分に駐車場が開き7時半に券売が始まりました。当番校の部員たちは7時前に集合し、途中の入れ替えがなかったのなら14時間以上も拘束された訳です。どれだけの苦労があったかと思います。仮に想定通りに試合が終わったとしても半日近い拘束時間となります。これが「部活の大会」で許されることなのでしょうか。

④県高野連は再考すべきではないか

 これまでの想定が崩れたことを、県高野連がどのように総括するのかが非常に気になっています。もちろん来年以降このようなことが続く保証はない訳ですが、先述の通り、ただでさえ当番校の部員たちの拘束時間は問題視されるべき長さだと言えると思います。
 聞くところによれば、準々決勝と準決勝の間には必ず「休養日」を設けなければいけないそうです。ここ数年、新潟では夏の準決勝・決勝を土日に行っています。仮に今日の第四試合を明日に順延すれば、土日に行う「目玉」が日月にずれ、特に決勝の集客が減ることは容易に想像できることです。
 その他、明日どうしても試合ができないという事情が他にもあったのだろうと思います。順延となった場合、両校の選手たちは、宿舎を確保していなかったとすれば今日一旦戻り、明日再び新潟市まで来なければならなかったでしょう。その移動の負担も大きなものがあります。
 そういったことを考慮して強行したことは「無理もない」としても、来年以降の準々決勝の実施方法は再考されるべきではないかと思います。一番現実的なのは2試合×2日という方策です。震災の影響で節電が呼びかけられた2011年は、エコスタ開催でありながらこの方式が取られました。
 近年、学校教員の勤務実態がこれまでになく報道されるようになり、同時に部活動の在り方も問われるようになってきています。指導者(=教師=大人)の負担をどう減らすかという点がより大きくクローズアップされているような印象がありますが、生徒や保護者の負担についても目が向けられるべきだと思います。すべてを一度に片づけられるほど単純な問題ではありませんが、明るみに出た問題にはしっかりと向き合うことが大人たちの責任ではないでしょうか。特に商業化されている高校野球は、それゆえに聖域と化しているという面もあるのではないかと思えてなりません。
 人工芝完備のエコスタで実施できることに乗じて一日に4試合を押し込んできた「大人たちの都合」も、今回の一件を受けて是正されるべき時に来たのだろうと思います。

 fbに書いた内容は以上ですが(多少加筆修正しましたが)、2018・19年の夏の準々決勝がどうだったのか、新潟野球ドットコムTwilogをもとに確認してみます。2018年は第四試合9回裏のツイートが18時37分、2019年は17時44分でした。いずれも想定内で終わったようで何よりです。そして、今夏の「独自大会」は、ご覧のように「選手に優しい」試合日程となっていました。

 コロナ前の日常を取り戻せたら、また一日4試合に戻ってしまうんでしょうか。当番校問題が解決されればまだマシな気もしますが、そもそも授業日に大会日程を被せないように最大限努めるべきとか、できるだけ近場の球場で開催できるように調整すべきとか、そういう論点もあり得るのではないかと思います。
 コロナ禍を通して学びえたことも含めて、それらがしっかりと生かされるコロナ後の高校野球であってほしいと思います。

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