2022年から、これからの人生に携えていく本、漫画、映画たち

毎年同じことを繰り返す。人生の半分くらいはそんなものかも知れない。
このnoteもその一部。残りの人生をカウントするという趣味の悪い書き出しは結構気に入っていて、1/50→1/49→1/48と順調に減っていっている。

去年は49という数字から連想してピンチョンから書き始めたけれど、48と見てもAKB48くらいしか思い浮かばず、特に思い入れもないので少し困った。
困ったときはまとめればそれっぽくなるだろうということで、過去3年間を総括してみる。

僕のここ3年間のコンテンツ環境は、漫画と数学を軸に回っていた。

2020年・・・『チェンソーマン』『ディアスポラ』『Self- Reference ENGINE』『TENET』

新しい波に入った年だった。キナリ杯をきっかけにnoteをはじめた年であり、コロナをきっかけにKindleで漫画をたくさん読むようになった年。一番のきっかけはずっと習慣で読んでいたジャンプから『チェンソーマン』が出てきて漫画という媒体自体にのめりこんでいったことだった。

在宅の時間が増えたことから読書自体の時間も増え、Netflixや映画館で見た映画や漫画、アニメの原点を追いかけてSFを漁るようになっていった。特に『ディアスポラ』や『Self- Reference ENGINE』を筆頭に壮大で、壮大すぎて少し滑稽ですらあるものを好きになった。

そこで出会ったのが円城塔で、2021年に大きな影を落とす。

2021年・・・『Boy's Surface』『マスペディア1000』『計算理論の基礎』『合成生物学』『僕は問題ありません』“What We Talk About When We Talk About Love”

深堀の年。『Boy's Surface』で決定的に円城塔にはまった。と同時に、数学がまるで分らない自分がもどかしくなっていった。
学生の頃はもともと理系から経済学部に進み、その中では数学寄りという身分で、線形代数学~論理学まで初歩の初歩しか数学に触れていなかった。今からどこまでいけるかはわからないけれど、少しでも取り戻したいと思った。

まずは全体像をつかもうと『マスペディア1000』を通読。昔を思い出すとともに、いかに自分の触れていた部分が狭いか思い知ってワクワクした。

次に本格的に教科書を漁り、独立している情報理論系の数学を基礎から何とか進めていった。『情報理論の基礎』と副読本とともに、現実に近いコンピューターの知識とつなげるために『32ビットコンピュータをやさしく語る はじめて読む486』などを読み漁り、今まで皮相な理解で済ませていた部分を少しだけ深くでき、世界観が深くなった気がする。

それに付随する形でブルーバックス的な新書や古典で済ませていた他の知識も深堀したくなり、狭い分野の専門書も点で読むようになった。例えば昔読んだシューレディンガーの『生命とは何か』の続きとして『合成生物学』や『免疫・感染生物学』を当てたり。

なにかに集中している合間は思考を散らしたくなるもので、宮崎夏次系さんの短編集やレイモンド・カーヴァー“What We Talk About When We Talk About Love”など意味のはっきりしない物語が心地よかった。

2022年・・・『源氏物語』『くるまの娘』『圏論の道案内』“THE BOOK OF WHY”

統合と回帰の年。
アニメ『平家物語』をやるということもあって、通読したことのない『源氏物語』や『平家物語』など古典を新約で読んだ。昔から続く物語の力と、人としての共感の永劫性に触れた。そんな状態で『くるまの娘』に会い、現代の物語にもそれが引き継がれているのだなと勝手に感じた。

数学は地味に続けていて、『計算理論の基礎』の下巻まで完了させるとともに、圏論周りをうろついていた。なかなか習得したとは言えないのだが、考え方には少しずつ慣れた。挟み撃ちとして基礎からは『松坂和夫 数学入門シリーズ』を一気に買って進めているが、なかなか進捗しないのが悩みどころ。
数学的な素養が多少なりともできてきたのか、『音楽と建築』や『数学はなぜ哲学の問題になるのか』を楽しめるようになっていたので、世の中何が遠回りして繋がってくるかわからない。

また、記事にもしたが、自分の持っている教養が全体的に古くなってきた気がしたのでアップデートしたり。その中で改めて近年のスポーツ科学の進展が目覚ましいと感じたため、スポーツのトレーニング論も漁った。実際にやっていることとリンクしていると身が入る。

その流れで大学でやった統計にも少し帰ってきて、教科書的なものとともに“THE BOOK OF WHY”を読んだ。氾濫する情報の海で与えられるニュースなんかの問題点はある程度指摘できるつもりだが、統計の発展を追うことで少し優しい気持ちになれた気がする。

まえがきはこのくらいにして、今年のコンテンツを以下に列挙する。連載中の漫画は、単行本を購入しているうち、今年読み始めたものか完結したものだけ記載している。
☆がついているものは、特に思い入れのあるもの。


・数学
『数学はなぜ哲学の問題になるのか』☆
『計算理論の基礎 3. 複雑さの理論』☆
『計算理論の基礎 2 計算可能性の理論』☆
『圏論の道案内』☆
『音楽と建築』☆
『「集合と位相」をなぜ学ぶのか ― 数学の基礎として根づくまでの歴史』☆
『集合・位相入門 (松坂和夫 数学入門シリーズ 1)』☆
『線型代数入門 (松坂和夫 数学入門シリーズ 2)』
『ウィトゲンシュタインのパラドックス ――規則・私的言語・他人の心』

・その他科学
“THE BOOK OF WHY”☆
『クオリアはどこからくるのか?: 統合情報理論のその先へ』☆
『情報理論』
『情報 第2版: 東京大学教養学部テキスト』
『Essential 細胞生物学』
『理系総合のための生命科学 第5版〜分子・細胞・個体から知る“生命"のしくみ』
『量子力学の哲学 非実在性・非局所性・粒子と波の二重性』
『<麻薬>のすべて』

・人文
『ジェンダーと歴史学』☆
『猿と女とサイボーグ ―自然の再発明―新装版』
『ジェンダー・トラブル―フェミニズムとアイデンティティの攪乱』
『はじめてのジェンダー論』
『女性学・男性学』
『近代家族とジェンダー』
『服装のアルケオロジー』
『言語哲学入門』
『分析哲学講義』
『論理学』
『若い読者のための文学史』
『決定版 はじめての音楽史: 古代ギリシアの音楽から日本の現代音楽まで』
『母性のディストピア』
『エスの系譜』
『地政学の逆襲』
『ジョイスの挑戦─『ユリシーズ』に嵌る方法』
『記録を残さなかった男の歴史―ある木靴職人の世界 1798‐1876』
『一揆の原理』
『暴力の人類史』
『現象学という思考: 〈自明なもの〉の知へ』
『東京の生活史』

・その他人文
『英語独習法』☆
『地政学の逆襲』

・スポーツ
『アスレティックパフォーマンス向上のための トレーニングとリカバリーの科学的基礎』☆
『身体運動・健康科学ベーシック』
『運動しても痩せないのはなぜか』
『スポーツクライミング教本』
『コンペで勝つ!スポーツクライミング上達法』
『スポーツクライミングのコンディショニング』
『ロードバイク スキルアップトレーニング』
『すべてがわかる! ロードバイクメンテナンス入門』

・小説
『源氏物語』☆
『建礼門院右京大夫集』☆
『戦争は女の顔をしていない』☆
『くるまの娘』☆
『神々は渇く』☆
『平家物語』
『源氏物語図典』
『アデン・アラビア』
『母の発達』
『女のいない男たち』
『The Tyger』
『シリマリルの物語』
『太陽と鉄・私の遍歴時代』
『重力と恩寵』
『スティル・ライフ』
『亡命ロシア料理』
『ワーニャ伯父さん/三人姉妹』
『血を分けた子ども』
『女が死ぬ』
『破壊しに、と彼女は言う』
“Pride and Prejudice”

漫画
『チェンソーマン 第二部』☆
“Chainsaw Man”☆
『ベルリンうわの空』☆
『月曜日の友達』☆
『あなたはブンちゃんの恋』☆
『チ。―地球の運動について―』☆
『ぼっち・ざ・ろっく!』
『タコピーの原罪』
『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』
『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』
『一匹と九十九匹と』
『数学ゴールデン』
『ムーたち』
『Artiste』
『三拍子の娘』
『カリクラ 華倫変倶楽部』
『トリリオンゲーム』
『ラーメン発見伝』
『らーめん再遊記』
『らーめん才遊記』
『のボルダ』
『櫻の園』
『顔がこの世に向いてない。』
『その着せ替え人形は恋をする』
『東京卍リベンジャーズ』
『急がなくてもよいことを』
『ファッション!!』
『ゴールデンカムイ』
『寿司 虚空編』
『セクシーボイス アンドロボ』
『正反対な君と僕』
『とんがり帽子のアトリエ』
『こどものおもちゃ』
『放課後ていぼう日誌』
『38歳バツイチ独身女がマッチングアプリをやってみたヤバい結果日記』
『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』
『生き残った6人によると』
『夏を知らない子供たち』
『彼女のカーブ』
『センチメンタル無反応』
『ブランクスペース』
『スナップガール』

以下、SNSでおすすめを募ったもの
『茄子』☆
『Lv1魔王とワンルーム勇者』
『ウサギ目社畜科』
『ザ・ワールド・イズ・マイン』
『プロチチ』
『宮本から君へ』
『薫る花は凛と咲く』
『東独にいた』
『僕だけがいない街』
『アオアシ』
『イムリ』
『ONE OUTS』
『BEASTARS』
『YASHA―夜叉―』
『きつねとたぬきといいなずけ』
『多重人格探偵サイコ』
『彼氏彼女の事情』
『昭和元禄落語心中』

映画など
『平家物語』☆
『ぼっち・ざ・ろっく!』☆
『THE FIRST SLUM DUNK』☆
『すずめの戸締り』☆
『トップガン マーヴェリック』
『Cyber Punk EDGERUNNERS』
『はい、泳げません』
『水星の魔女』
『チェンソーマン』
『バブル』
・ゲーム
『ゼノブレイド3』
『ポケットモンスター バイオレット』

・書籍
まえがきに含んでいないが、ジェンダー周りを深堀した。最近の議論は追っていたけれど、『ジェンダーと歴史学』をきっかけにいわゆる古典と言われるものをいくつかあたった。理論として洗練されているかはそれぞれだが、当時の熱い雰囲気を感じ取れたのが収穫だった。

・映画など
今年のはじめに『平家物語』のアニメを見たのをきっかけに、アニメを多く見た一年だった。特に冬は『チェンソーマン』をきっかけにいくつか見ていた。
『ぼっち・ざ・ろっく!』が個人的な大ヒットで、ライブハウスに通った思い出をくすぐる原作のストーリーと、媒体を自由に使った表現が上手くかみ合っていた。題材に対する原作者の、原作に対するアニメ制作スタッフの熱意の土台に題材のリアルな登場人物であるバンドマンが乗っかり、いい雰囲気で作品が作られたのだろうなと想像した。
編曲の方が大学時代によく聞いていたバンドのメンバーだと知って当時聞いていた音楽を聞き返したりしていた。

映画館にはあまり行かなかった。年末に『すずめの戸締り』や『THE FIRST SLUM DUNK』を観に行ったらやっぱり劇場はいいので、もっとアンテナを張っていいものは大きな画面で見る習慣としたい。問題は、好みの映画が徒歩圏内にある大きな映画館ではやっていないことが多いこと。
『BOILING POINT』とか『FLEE フリー』は都合が合わないのを言い訳にしていま後悔している。次思い立ったらすぐ足を動かそう。

・漫画
チェンソーマン2部が相変わらずいい。1部で積みあげた世界観とストーリーを上手く使っていてさすがだなと思う。年末体調が悪く寝込んでいる間に英語版の“Chainsaw Man”も読んで面白かった。英語に注意が必要な分、絵もより詳細に目を通す体験ができた。

完結した作品では『あなたはブンちゃんの恋』の勢いに圧倒され、『チ。―地球の運動について―』の狡さに舌を巻いたり。一瞬の感動が訪れては去っていくものもあれば、最後でまとまって自分の中の評価が変わるものもあるのだと痛感した。『チ。』を途中で読むのをやめないでよかった。
限られた時間で何を選んで読むのかはずっと付き合っていく嬉しい頭痛の種なのだろう。

『ベルリンうわの空』や『月曜日の友達』など、前から気になっていたものを消化する時間を取れたのもよかった。すごくいいのだろうとなんとなく予感がしているのに、タイミングが来ないと読む気にならない性格はどうにかならないものか。

あと、今年インスタで“15万円の予算が尽きるまで紹介された漫画を買って読む”という企画をやってみた。お勧めしてもらった1分後には購入画面をストーリーにあげるスピード感を面白がってもらったのか、いろんな人から普段接しない漫画を紹介してもらえた。インスタのフォロワーはほとんどリアルの知り合いだけれど、500人もいれば色んなバリエーションがあるのだし、普段話さない漫画のこだわりを垣間見られたのもよかった。
まだ読み切れていないので、完了したら別途noteの記事にする予定。

・増える積読
漫画はほとんどKindleだからいいとして、紙の本も順調に積読を増やしてそろそろ怒られそう。ふとした時に読む本棚としてかなり充実してきた。少なくとも5年分はあるはず。
タイミングがあった時に読めばいいとはいえ、早めに消化しておくべきものはあるので、戒めとしていくつか挙げておく。
『松坂和夫 数学入門シリーズ(代数系、解析)』“Category Theory”『量子情報科学入門』『システムバイオロジー』『淡い焔』

ここらへんが来年中に消化できているといいなあと思いつつ、1/47もそこそこ大事に過ごしたい所存。

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