見出し画像

どこにでも行ける翼が生えていたことなんてなかったし陽キャが作った曲が聴けない

怖くないですか?陽キャ。わたしは怖い。

今どれだけ健やかに文化的に暮らしていても、暗い学生時代を過ごしたことが未だに人生に影を落とし続けている気がする。制服を着ていた頃に友人や恋人に恵まれ部活なんかにも打ち込んで校内行事を心から楽しんでいたような人たちとは、制服を脱いで7年経った今でも壁がある。この壁がマジで高い。もう登る気も失せるくらい高い。高ければ高い壁の方が登った時気持ちいいもんなってか。うるせえよ。いや、ごめん、ミスチルは好きです。終わりなき旅は名曲です。
つまり、クラスの集合写真を撮るときに自分がいないことに誰も気づいてくれず呼んでもらえず自分のいない集合写真がグループLINEで回ってくるような学生時代を送ってきたわたしは、陽キャが作った曲が聴けない。怖いからです。



どんな音楽が好きかと聞かれると、まあ、ロックですとしか言いようがない。あとはまあバンドが好きですとか、なんかそんなようなことを答えていつも濁している。んで、この間、そういうことを答えて、こう言われた。

「髭男とかですか?」

違う

いや別に髭男が悪いわけでも嫌いなわけでもない。でもそうじゃない。そうじゃないんです。むしろわたしはああいう人たちが怖いんです。ていうか髭男ってロックですか?ポップスじゃないですか?
この「違う」をなんとか伝えるために、「あんまり恋愛の曲とか歌わないバンドが好きです」とか「ギターの音が太めな曲が好きです」とか「歌詞よりも演奏重視のバンドが好きです」こうなんとかいろいろ考えたんだけど、じゃあ恋愛の曲じゃなくてかつギターロックだったらなんでもいいのかというと、わたしはSUPER BEAVERとかも怖いので。多分そういうわけではない。
で、いろいろ考えた結果、気がついた。多分わたしは陽キャが作った曲が聴けないのだ。

学生時代を謳歌したような人が作る曲が怖い。SUPER BEAVERとかマジで、同級生だったら絶対に話しかけられないもん。なんだ「会いたい人がいる 胸の奥をぎゅっと掴む想いは 明日を見つける 始まりは青い春」って。怖いよ。そういう青春って想像上にしか存在しないと思ってたんですけどもしかして実際にあるものなんですか?え?ほんとに?ちょっと変な汗かいてきた。昼休みに机をくっつけ合ってお弁当を食べるクラスメイトを羨ましく思いながら一人で過ごしていたことを思い出し、いや、もうこれ以上書くのやめるね。胃が痛くなってきたから。
その点、アジカンのゴッチはいい。めちゃくちゃ眼鏡。近年はなんかお洒落眼鏡になりつつあるけれど、それでも彼はずっと眼鏡。高校1年生の時にアジカンのベストアルバムを貸してくれた細井君に似ている。


これがSUPER BEAVERの青い春。格好良いです。こういう音楽を好きな人は彼女を大事にしそう。


アジカンのムスタング。めちゃくちゃ眼鏡。アジカンで一番好き。細井君元気ですか?


これはもう、誰も悪くない。SUPER BEAVERも髭男もWANIMAもMrs. GREEN APPLEも悪くない。
ロックを聴くことを自ら選んできた人間が聴くロックと、ロックを聴くしかなかった人間が聴くロックは違うのだと思う。それだけの話だ。後者の人間であるわたしには、もうそこしか自分を受け入れてくれそうなカルチャーがなかった。ロックを選んだのではなくロックに逃げてきたのだ。逃げた先でSUPER BEAVERが待ってるよりゴッチが待ってた方が、話しかけやすそうでいいでしょ。そういう話です。どういう話ですか?


で。

Hump backというバンドがいます。すごい格好良い。わたしあんまり女ボーカルのバンドの曲を聴かないんですけど、Hump backだけは、本当に格好良いと思う。ガールズバンドとかいうくくりの中から飛び出て格好良い。

結局この曲が一番好き。

好きになってからのめり込むように転がり落ちるように毎日聴いた。歌い方の真似の練習をしたし、家で黙々とベースをコピーした。去年、夏、RSRでやっと初めて生で見れるかと思ったらHump backが来る予定だった初日が台風で中止になり、半ギレでワンマンのチケットを取った。秋、ペニーレーンで叫ぶように歌う林萌々子は完全にロックスターだった。なんなんだよ。どうやったらそんな格好良い女になれるんだ。入り口近くの後ろの方で、アホみたいにデカい声でわたしも一緒に叫び歌っていた。

ライブの中盤。
MCで、林萌々子が、「十代は無敵だった」と言った。

十代は無敵だった。どこにでも行ける翼が生えていた。なんだってできると思っていた。
二十代になってみて、無敵ではなくなったけれど、案外これもいい、これがいいって思う。二十代の方が楽しい。

なんか、そんな内容のMCだったと思う。

そのMCの直後に短編小説という曲をやった。ライブの予習で何度も聴いた、すげえ好きな曲だった。ああでも、確かにそういう歌詞だよな、と思った。

あの頃の僕は 怖いものなんて何もなかった
それじゃあね またね
あの頃の僕は どこでもいける翼が生えてた
それじゃあね またね
バイバイ

以降、もう、一緒に叫んで歌えなかった。

なんにも、誰も、悪くない。悪者がいるとしたらいつまでたっても17歳の頃の孤独と手を繋いで歩いている自分だ。でももうそれもどうしようもない。どうにもできないままここまできてしまった。
Hump backも悪くない。悪いわけがない。本当に最高に格好良かった。でも、ああ、わたしは最強の十代なんて過ごせなかった、と思ってしまったらもうダメだった。どこにでも行ける翼が生えていたことなんてなかった。いつだってなにかに怯えながら過ごしていた。怖いものと、嫌いなものしか、なかった。そう思ったらダメになってしまった。無敵だったことがある人が作った曲なんて、クソ、と思ってしまった。

なんなんだ。25歳現在、結構幸せにやってるくせに。いつまでもコンプレックスと仲良しこよしやってんじゃねえよ。

不幸じゃない。卑屈でもない。今手にしている幸せを認めているし、自分に自信が全くないわけじゃない。でも暗い。暗い人間です。あの頃からずっとそうです。今も明るい人間が怖いです。逃げた先には同じくらい暗い人間がいてほしい。マジでめっちゃワガママだね。
このあとしばらくHump backが聴けなくなった。で、昨日久しぶりに聴いたらめちゃくちゃ格好良くて、馬鹿かよ、なにやってんだよ、と思った。なにがかわからないけどとにかく馬鹿。わたしは馬鹿。そう思って筆を執りました。これからまた聴きます。ほんと、勝手に考えて勝手に落ち込んだり嫌いになったり好きになったりするのやめろよ。面倒臭いよお前。
最強になりたい。無敵になりたいし、それが無理なら、もう、なんか、ちょっとでいいので明るくなりたいです。

結局あれでしょ。羨ましいんでしょ。ハイそうです。青春コンプレックスこじらせ野郎ですこんにちは。みんな今日も元気に卒アル燃やしてる?
それでも格好良いものは格好良いし、好きなものは好きだし、受け付けられないものを今更好きにはなれなくても、せめて一回好きになったものはくだらん理由で好きじゃなくなりたくないなと思う。本当に思う。


ちくしょー。やっぱかっけー!ずっと聴く。
じゃあね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?