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空浮かぶ君の雲、寂しげ夏

夏が終わって9月になった。タイムラインではみんな9月になることかセプテンバーさんを聴いていて、おれは逆張りキモオタク君なので別の9月ソングを見つけたいなと思ってユーミンを流したら「大人になるっていうのは もう平気になる心 死にたい程傷ついてもなつかしいこと」と歌われて わァ…………ぁ………………となりましたとさ。

ユーミンすげー

じゅうぶん、大人になった。揚げ物がたくさん食べられないし膝にできた青あざはなかなか消えない。筋肉痛も翌日に来ない。
てことはもう、平気になっていいんだろうか。

社会人になって必死に稼いで美味いもん食えるようになっても、10代の時になけなしのお小遣いで発寒のイオンのフードコートで友達とマックのポテトをシェアするみたいな思い出は一生取り返せないわけで、経験し損ねた煌めきたちは益々にその美しさを増しておれのことを拒絶するわけです。制服を着ていた頃の地獄に一生苦しめられてきた20代だった。「大人になっても青春は出来るよ!」と優しい友達に慰められて、ありがとうでも違うよそうじゃないんだ、と思って悲しくなった。今じゃ意味ないんだ、あの頃じゃなきゃ、ってずっと思ってた。
でもどうなんだろうそれってただの意地なんじゃねえかな。もういい加減いいんじゃねえかな、おれのことずっと呪ってんのはおれ自身なんじゃないかな。


8月、海に行った。

真ん中がわたしで、左が高校1年生の時に同じクラスだった男の子、右は大学の時バイトが一緒だった4つ下の女の子。なんか色々あって不思議なメンツで仲が良くなって、北海道からはるばる神戸まで会いに来てくれた。

海とか、空とか、そういう青くて美しいものをたくさん見て、写真を撮り、車の中で歌を歌い、街に戻って酒を飲む。
日付が変わる少し手前、薄暗いカラオケボックスで男友達が歌ったSUPER BEAVERがめちゃくちゃ染みてしまって、自分でも困惑した。お前「学生時代を謳歌したような人が作る曲が怖い、SUPER BEAVERとかマジで同級生だったら話しかけられない」とか言ってませんでしたか?

愛しさ溢れる 時を超える
馬鹿みたいなことをもう一つ ねえ今楽しいな
言わずもがなちゃんと守りたい そりゃそうだ
出会いが人生の全てだって思った

私信?
って思ったし酔っていたので普通に声に出してそう言った、「あたしらに会えて良かったって歌ってる?」って聞いたら笑われた。でもそう思ってんのはわたしの方だったな。
大昔フォロワーに「僕の中の貴女のテーマソングはピロウズのROBOTMANです」って言われて血涙流してた女が酔っ払ってSUPER BEAVERに感動させられてんの、「丸くなった」以外のなにものでもなくてあげみざわたけおです。

これがテーマソングだと伝えてくるのもなかなか失礼だと思う(曲は好きです)


例えばなんだけど、会いに来てくれた4つ下の女の子とは仲良くなるまでにすごく時間がかかって(おれが人に壁を作りすぎているからです。)、バイト先で8月に出会ったのに10月の彼女の17歳の誕生日を店のみんなで祝っているのを1人遠くから眺めたりしていた。「いやあの時祝われてるうちも気まずかったからね!」と、もうすぐ24歳になる彼女は生ビール片手に笑う。
とか。
男の子とはまだお互いが幼くわがままだった頃よく喧嘩をして、それもたいていお腹が空いてイライラしてるとかそんなどうでもいい話で、喧嘩しながらスープカレー屋さんまで歩いて2人でスープカレー食べてお腹いっぱいになって仲直りしてプリクラ撮って帰った。うちらアホだったねみたいなことを会う度話している。
とか。
あの時はごめんなって思うこと 脈絡もなく伝えられる関係 それを大切と言わずになんと言う」すぎてちょっと泣きそうになったりするわけだ。
渋谷龍太へ、今まで怖がっててごめん、でも多分同級生だったらやっぱり話しかけられなかったと思う。絶対にごっちの方が話しかけやすい。眼鏡だし。だけど28歳になった今なら、世間話くらいは………出来るかも………いや渋谷龍太と世間話する状況ってなに?

つまり、なんか、多分普通に青春をやり直せた1日だったのだ。
そんな1日を過ごしてしまった。ぜってーむり‼️ってずっと意地張ってたのに。

そう、意地を張っていた。やり直せるなんて認めたくなかった、だってわたしくらいは覚えてておいてあげないと可哀想だ。みんな忘れていっちゃうんだから、あの時感じた怒りとか悲しみとか苦しみを、せめて自分の中だけでは大切にしておきたかった。そうじゃないと17とか18とかのわたしが可哀想だよ、なかったことにしたくないよ。
ずっと怒って生きていくんだ、足りないままでいいんだおれは、足りてないからこそ得たものっていっぱいある、誰よりも言葉を、感情を、思い出を大事にする人間になれた。足りてなくて何かに怒ってて傷ついててそういうのを面白く読み物にしてやろうっていつももがいてて、みんなそういうわたしを好きだって言ってくれた。だからこれでいいしこれがいいと思った、満たされんのも丸くなんのも怖かった。

でも、ずっとは、無理かも。
無理かもなあって思いました。海がキラキラしていた。雲が真っ白で、ジブリ映画のワンシーンみたいだった。ジブリ映画あんま見たことねえけど。それらのひとっつにも疎外感を感じなかった。おれ、まんまとワンシーンの一員になってた。ちゃっかり参加してた。フツーに。
右見たら、出会った時はまだ女子高生 で、「こんな子が同級生だったら楽しい高校生活だったのかもしれないなあ」って思ってそばにいた女の子が20代も半ばになって、変わんない顔で隣にいた。左には16歳の時からお互いの地獄をなんとなく見せあってきた男の子がいて、一緒にアラサーになっていた。そんで上見たら空が青かった。
青春だあって思いました。鼻で笑っていいよ。



飲んだ帰り道、コンビニで買ったスミノフを片手に歩きながら、たまたまわたしの今までの髪色の遍歴の話になって、男友達に「着る服に困りそうだな」と言われたので「別に困らないよ、何色してても好きな服着るもん」と答えたら、「…………ああ、」と返ってきた。

本当にその二文字しか返ってこなかったのでマジで自意識過剰かもしれんけど、その二文字から納得とか感心とかそういう雰囲気のものが感じ取れて勝手に嬉しくなった。横並び一辺倒にみんなと同じ制服を着てもみんなと同じように笑えなかったわたしを知っている彼の「ああ」は格別だった。ねえわたし今めちゃくちゃ好きな服装して生きれてるかも。あの頃よりよっぽどカワイイかも。

16歳、登校中、俯いて歩くわたしを彼がサーっと自転車で追い越して、後から教室で「すごい下向いて歩いてるから遠くからでもお前なのわかった」と言われたのを思い出す。暗い女にもほどがあって笑っちゃうよ。28歳、キャンディーストリッパーの真っ白いワンピースを着てけらけら笑ってふらふら歩くわたしを追い越した彼が振り返って、「気持ち良さそうに酔いやがってよ」と笑った。俯いて歩く必要がどこにもなかった。

今でもなんか全然不幸でいなきゃ面白がってもらえないかもみたいな気持ちに呪われているので、これ書きながら配偶者に向かって「ねえ‼️わたしがSUPER BEAVER聴いて染みてたらキモい⁉️⁉️やっぱりキモいかな⁉️⁉️⁉️」って叫んで「さあ…………?」って言われてる。知らんよね。ごめんね。
この間別のnoteにも書いたけど、山田亮一がキャスで「相変わらず僕は世界を呪ってるので安心してください」と言っていたことの意味とかをずっと考えてしまう。山田亮一が世界を呪わなくなったらみんなやっぱりガッカリすんのかな。おれはそろそろ、部屋の隅で「ひとり残らず呪い殺してやるぜ🎶」って歌ってる自分も、なんやかんや楽しいことの渦中に居たらそれをちゃんと楽しんで映え写真とか撮っちゃう自分も両方認めたいけど、どうなの。

明るい人間が作る音楽はやっぱり怖いし、声がデカい人も怖い、運動部出身のやつも怖いし大人数の飲み会には行きたくない。でも来年は友達とバーベキューとかしてみたい。
ずっと心の中にいる17歳とか18歳とかの自分も、ずっと忘れないで大事にして呪われて生きていくことより「そんなのいいからあたしが出来なかったことあんたが取り戻してよ」って思ってるのかも。いやわかんないけどね。ずっとあたしに呪われててよって思ってる可能性も全然あるな、わたしのことだし。ま、いいか。
じゃあまたね。

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