短編創作「世界でたったひとりの詐欺師」
10年に一度行われる騙しのワールドカップ、
「詐欺師世界大会」
世の名だたる詐欺師が集まり、とっておきの騙しテクニックを競い合う物騒な大会だ。
当然公に開催されるようなイベントでは無いが、仮に地上波で放送なんてしようと思ったら、参加者ひとりひとりの手元にモザイクが掛かるような倫理が崩壊した闇イベントである。
性根が発酵しきった老若男女を入り交え、予選を勝ち抜いた猛者たちがとうとう決勝戦へと足を進める。
決勝戦は、あらゆる手段を使ってもOKのルールで、いかに100mの世界新記録を出すか?だ。
スタート地点に着くと、どの手口で行くか考えこむ詐欺師たち。
互いの手口が気になる詐欺師たちは、ハッタリも含め得意のトーク力を駆使して出方を探り合っている。
発せられる軽快なトークの一言一言はとても怪しく、まるで不気味な呪文を唱えているかのようだ。何一つ信用する事は出来無い。
しばらくすると、ひとりの青年詐欺師がスッと立ち上がった。
徐にクラウチングスタートの構えを取ると、俯きながら何やらブツブツと呟いている。
強烈な自己暗示だ。
巧妙な内面対話にて自身の筋肉や臓器を騙し、人間の限界を超えた力を発揮させた青年詐欺師が、見事100m世界新を更新した。
「 ハァハァハァ どうだ!やったぜー! 」
と振り返ると、世界から全人類が消えていた。
<Fin>
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