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結局山で採取していいのか問題

「山でこれを採取したいんだけど採ってもいいですか?」

これは、たまに百森に寄せられる質問です。

実は答えるのが結構難しい質問で、いや答えようと思えば「所有者の許可が得られなければだめです」と言ってしまえば法的には正解でそれでおしまいにできるのですが、山奥など目の行き届かない場所があったり事実上放置されている土地が多いのもあり、今まで黙認されてきた個人的な行為というのが多くあり、「ダメって言ってるけどやっている人いるじゃん」「それで捕まった人を聞かない」というのがこの問いが生まれる根源だと思います。山菜取りやキノコ狩りがよく聞くグレー(といっても実は黒)な例ですね。

冒頭の問いに対して、所有者さんに許可を得るお手伝いはできますが、百森からは百森の社有林以外については「OK!」を言うことはできません。なぜOKを言うことができないのか、また所有者さんの許可以外の採取についての法律を今日はご紹介します。

OKを言えない根拠は森林法

まずは根拠から。
森林法第197条では、要約するとこのようなことが書かれています。

森林においてその産物(人工を加えたものを含む。)を窃取した者は、森林窃盗とし、三年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

ここで、「森林においてその産物」とは、樹木、山菜を含む草本類、キノコ類、岩石及び土砂等のことで、有機物だけでなく無機物も含みます、例えば溶岩が森林の大地を形成している場合、その溶岩も森林産物にあたります。この法により、「自分の所有している山以外では所有者の許可を得ずに採ってはいけない」との回答になります。

でも、この法に照らし合わせると足元の石を1つ持って帰ったら森林窃盗が成立する、ということになりますが、さすがにそれで捕まった人を聞いたことはない…。これは窃盗罪に比べて著しく刑が軽減されている理由でもあるのですが、一般に森林内では権利者の管理、占有の程度が緩やかであり、森林産物が盗まれやすい状態であること、また土地に定着して生育するものでありほかの動産と比べて財産的価値が少ないこと等から違法性が小さいと考えられており、警察が日本中の山をくまなく監視できるほど暇ではないということが大きな要因だと考えられます。よって、山菜やキノコなど、価値があると認められるものを窃盗し、見つかったり通報された場合は罪に問われることもあるでしょう。

※私は弁護士ではありません。あくまで一般人が法律を読み解いた解釈と捉えていただければ幸いです 

そのほかに気を付けるべき法律

仮に採取について所有者さんに許可を得られたとしても、採取地が採取を制限される土地として指定されていたり、採取に届出が必要なケースもあります。

■森林法:伐採届

森林の立木を伐採するときはあらかじめ伐採届を提出しなければならない

西粟倉村の場合は、村のホームページからダウンロードできる『伐採届』を、伐採を始める90~30日前までに提出する必要があります。森林施業でなくても、伐採本数が数本単位でも原則的には要届出になるので注意!

■森林法:保安林
水源涵養や土砂流出を防ぐなど、個人所有の森林でも公益に資すると認められた森林は『保安林』に指定することができます。保安林は税の優遇措置が受けられる代わりに、伐採や採取などが一部制限され、制限行為をするときは都道府県に届出をする必要があります!落ち葉や落枝の採取も制限されています。

■自然公園法
西粟倉村では一部が氷ノ山後山那岐山国定公園に指定されており、村では有名な若杉天然林はもちろんですが、「え、ここも?」というところまで自然公園として含まれています。

この緑の部分は自然公園地域として、内部でさらに細かい区分がありますが、最も厳しい場所では植物の採取、損傷、若葉や若枝の採取が禁止されていて、調査目的などでも採取を希望するときはやはり許可申請や届出を提出しなければいけません!

一部が除かれる形になりますが、おかやま全県統合型GISの『土地利用情報』→『土地利用基本計画図』で範囲を確認することができます。自然公園以外の土地利用も見てみると結構面白いですよ◎

■絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存法
同法で指定されている希少野生動植物、また、岡山県の『岡山県希少野生動植物保護条例』で定められている希少野生動植物は様々な取引、採取等が禁止されています。
お住まいの都道府県でも国とは別に条例が定められていることがあるので、ぜひ確認してみてください!

■砂防法
■地すべり等防止法
■急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律
上記の3法、また岡山県の条例では、土砂崩れや地滑りを防止するために木竹の伐採や根株の掘削が指定行為として制限されている場所があります。これは主に土砂が流出しやすくなる行為、土地形状が変わる行為を制限しているため、軽微な採取はあまり対象にならない法律ですが、立木単位での伐採を検討している方は要注意です。

まずは所有者さんに確認!

というわけで、採取をしたいものがあるときはまず所有者さんに確認しましょう。村内の方でこれが生えている場所知らない?や採取したいけど所有者さんが分からない…というときはぜひ百森にお声がけください。お手伝いいたします!

そのうえで、森林法の森林窃盗以外にも関係している法律がないかを調査する必要がありますが、こちらについても気になることがありましたらお気軽にお声がけください。

上記の法律以外にも、都道府県や自治体で定められている条例や制度がある場合があるので、採取を考えている方はぜひ確認してみてください!

(清水)



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