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ロロ『四角い2つのさみしい窓』

 2019年に10周年を迎えたロロの新作公演。
 これまでロロの作品を見たことがなかった為、一度観たいと思い観劇した。

 こまばアゴラ劇場では、現在流行してる新型コロナウイルスをはじめとしたウイルス感染を予防対策として地上階の受付スペースにマスクや消毒剤、のど飴が来場者用として設置されているのが印象的だった。
以下、あらすじ紹介。

あらすじ
海岸沿いに透明な壁が建てられた。その壁を通して眺める海は、いくつもの過去が折り重なってみえるらしい。 たくさんの人たちが壁のもとに集まってくる。目の見えない綱渡り師、透明人間の恋人を探す女性、窓ガラス清掃をする元役者、スノードームをつくる 観光客、ミノタウロスとくだんのあいだに生まれた未来のみえないこども。
「私、フチになりたいんだ。麦わら帽子のフチとか、ルパンが盗む絵画の額縁とか、コップのフチ子とか、あと、絶望のフチとか」
今夜、透明な壁で物語が上演される。
(ロロ『四角い2つのさみしい窓』ホームページより引用)

 本作では、劇団としてのロロと、作・演出の三浦直之のルーツでもある東北・宮城県についてのエピソードが交錯した作品であるように感じた。

 以前読んだロロのインタビューに、三浦が公演直前に失踪した過去があると書いていた。同じように溜息座の団長が、何度も公演直前に失踪してしまうものだから、団員がどんどんといなくなってしまったという、実際あったロロの過去に似ているエピソードも登場した。
 また、タイトルの『四角い2つのさみしい窓』は文字に書き直すと『ロロ』だと解釈できる。観終わってから、この作品はロロ自身のことを描いた作品なんだと改めて思った。

作中に『境界線』という言葉が多く出てきた。舞台と客席を隔てる壁、愛情・性愛などの親密度を分けること、嘘と本当の境界、そして、生と死の境界。これらの境界を曖昧にする、というのがこの作品の大きなテーマだったように感じた。実際に舞台美術をバラして裏側を見せるというシーンがあり、このことが最も象徴的に描かれているように感じた。
  一緒に観に行った恋人が、ユビワが言う愛情も友情も性愛も全部まとめて「親密度1000%」というのにえらく共感していた。
 確かに、その親密度に優先順位なんて付けられなくて、どれも自分にとっては大切な愛のかたちだなぁと、彼の語る言葉を聞いて思わされた。

 今回初めてロロを見たが、とても文学的な作品だなという印象を持った。
 それは、独白のシーンが多かったからかもしれない。登場人物の想いが独白で語られつつ、会話の中で点と点が繋がるような分かりやすさがあった。
 また、よく知られた音楽(本作で言う川本真琴の「1/2」)を象徴的に用いていて、音楽や他メディアを活かした作品をつくる方なのだなと感じた。
機会があるならばまたロロの他作品を観てみたいと思う。

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