魔剣騒動 11

 始まった戦いは正に混線と呼ぶにふさわしいものだった。
 人間よりも大きなゴーレムが十も揃えば、部屋がそれなりの大きさであっても狭苦しくなってしまう。
 そうなれば当然ゴーレム側よりも小回りの利くアベル達人間側が有利になる、と思いきやどうやらゴーレムはゴーレム同士で相互通信を行っているらしく部屋の大きさを含めた上で綺麗な連携を見せ、その不利はあっさりと払拭された。
 しかし、それでも会敵の瞬間を優勢で事を進めたのはアベル達の側だった。
 最初の爆発、アベルの放った『ダンジョンの中で、この部屋を崩壊させない限界の威力かつ範囲の爆発』は前方の通路から先頭で入ってきていたゴーレムを装甲ごと容易く破壊した。
 左右の通路から来たゴーレムに致命的なダメージを与えるまでには至らなかったが、それでもその装甲の一部を損壊させるまでには至った。
 そこを、レイアとアレンそれぞれが瞬時に攻撃。
 レイアは装甲の破損したゴーレムの胸部分に構えていた剣を鋭く突き立てた。
 ブゥンと滑らかな低音を伴った薄らと光る刀身はいとも容易くゴーレムの装甲を貫き、その奥に存在する魔力コアを破壊した。
 アレンは魔法を発動、ポッと輝くように光る球体――妖精が現れる。
 生まれ落ちた妖精は弾丸に迫る様な速度でゴーレムの破損している装甲の隙間に飛行し、するりと装甲下に滑り込むように消えた。
 直後、ゴーレムが一度細かく振動すると、二度と動くことは無くなった。
 会敵して一瞬のうちに三体のゴーレムを退け、残りは七。
 爆煙が消えないうちから自発の為に魔法陣を展開しようとしたアベルにゴーレムがとてつもないスピードで攻撃を仕掛けた。
 その数、三体。
 アベルは素早く仲間二人の状態を確認。
 レイアもアレンも二体ずつのゴーレムに接敵はれ、こちらに構う暇は無さそう。
 アベルは魔法の発動を諦め、魔法陣を破棄して攻撃の回避に専念。
 三体のゴーレムが完璧なコンビネーションで代わる代わる攻撃を繰り返すが、アベルは軽快な動作で攻撃を避け続けた。
 アベルもレイアもアレンも、ゴーレム達の動きのほんの些細な隙間に攻撃を繰り返す、が倒し切るまでは行かない。
 闘いは均衡状態に陥っていた。

 「いやあ、これは・・・」
 右から来たゴーレムの拳を躱しながらアベルが呟く、が直後に左から蹴りが飛んで来て、言葉を切って回避。
 「ちょっと、大変だね」
 「ちょっと、じゃないが!」
 いかにも楽しそうなアベルの呟きにアレンが叫び返した。
 「というか、コイツらもしかして学習してねぇか!? さっきからっ! 動きが! 鋭くなってきてる! 気が!」
 切れ切れながらアレンが指摘した。
 回答はレイア。
 二体のゴーレムを手にした剣で華麗に捌きながら答える。
 「それだけ優秀な魔導器を使っているという事だな。壊すには実に惜しい」
 「この後に及んで言ってる場合か!」
 
 戦闘が終わる気配は一向になかった。
 アレンとレイアがゴーレムの装甲を崩すには、それなりの準備時間が必要で、それは間違いなく大き過ぎる隙となる。
 アベルであれば二人よりも短い隙でゴーレムの装甲を崩せるのだが、その危険度を理解してかゴーレムは三体で隙間なく攻撃してくる。

 均衡を崩す為のタネを仕掛けてはいるのだが、その為の隙が無い。
 手が足りない。
 アベルは高速で繰り広げられる攻撃の全てを躱し続けながら考えていた。
 その為に、アベルはゴーレムの攻撃を避けながらジリジリとレイアの側に近付き続けているのだが、ほんの数メートルの距離が遠かった。
 
 


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