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小説

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#小学生

『死んだはずの男2』

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 幸成が目の前の『探偵』の女性について知っている事はそれほど多くない。
 長い黒髪に、強い意志を宿したような双眸、容姿端麗なその佇まい。
 年齢は25歳。
 職業は(本人曰く)小説家で、だからこうして平日の昼過ぎにのんびりと本を読んでいる事。
 同い年で同棲している恋人がいるが、恋人も特殊な仕事で家を空けている期間も多いらしい事。
 知っていることはその程度の情報だけで、幸成は女性の本名を知

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『死んだはずの男1』

 「え……?」
 母親と買い物に来た大型スーパーのお菓子コーナーで時間潰している時に、ふと出口の方に目を向けるとスーパーから出ていく一人の人物が目に付いた。
 それは一人の老人であった。
 白髪頭のその老人は周囲を気にする風もなく、健康そうな足取りで視界から消えていった。
 顔見知りの老人であった。
 町内会が一緒で、通学路の途中に家があることもあり、朝登校の際にあいさつしたことも何度もあった。

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『かくれんぼ』

 「むぅ……、困ったな」
 小学生らしからぬ落ち着きで後頭部を掻きながら、大して困っていないような声音で琴占言海は呟いた。
 左右を見知らぬ林に囲まれた道を歩いていく。
 かれこれ30分以上は歩いているのだが、延々と同じ景色が続いていた。
 どうやら異界にでも迷い込んでしまったらしい。
 
 今日は小学校が午前授業で、しかもお昼前には下校になった。
担任の先生には寄り道をしないよう釘を刺されたが、

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