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情報の読み取り方

パンチラインという言葉がある。が、パンチラインが成立する条件みたいなものを考えないといけないよねって事を最近本当に考えるようになった。

必殺のパンチとしてアンパンチがあるけど、それは毎回アンパンマンがその必殺パンチを決めて勝っているからだと思う。だから、アンパンチに対する信頼感を持ってしまっているのは、それまでのアンパンマンの積み上げてきた必殺パンチの実績を知っているからに他ならない。逆にいうと、アンパンマンの積み上げをしらない人がアンパンチを見たとしても、ただのパンチにしてか見えないはずだ。

無論、他のコンテクストを持ち出して、そのパンチを必殺のパンチと見る事もできるかもしれない。例えば格闘技的な観点から見たときに、アンパンチがどういった角度で、ばいきんまんの顎を貫いているのか、とか、ばいきんまんの体勢が崩れた所へ飛び込むように綺麗に右ストレートを打ち抜いているとか、だからアンパンチを繰り出すアンパンマンのテクニックは優れていると判断するのか。とか。ただ、結果的にそのコンテクストを読み取れるような経験を読み手がしていて、またそういった読み取りを平面的なアンパンマンのアニメーションから分析することができるかというと厳しいだろう。

ここまで書いた上で、アンパンマンのパンチをどういう風に読み取るのかというのは、結構大事な事だと思うわけだ。アンパンチは必殺技だから、絶対に勝つ事のできるパンチである。そこに茶々を入れる事は無粋だ。という事はできる。でも、それは単純な思考停止であって、なんでアンパンチは必殺技なのかと言う事に対する考察や、なんでそう思うようになってしまったのか、その刷り込みに対する思考が無いわけである。また、格闘技的な文脈で再構成すれば、例えばワンパンマン的なリアルタッチで再構築した利すればいいわけであって、それは読み手の中で実現したいイメージによるほぼ曲解であろうと思う。アンパンマンをプロレス的に読むことは可能かもしれないが、その前にやるべきなのは、もうアンパンマンをちゃんと見ようということなのだ。アンパンマンとはどういうアニメなのか。各話のエピソードの積み重ねを見ていくことから始めないと意味が無いということなのである。

例えば、毎回アンパンチが決まっているわけじゃないという視点もあるわけだ。エピソードの中では、一番最初のパンチがばいきんまんに通じず、顔がぬれて倒れてしまったアンパンマンの姿も描かれていたりするよな~とか。最初からパンチを打たない理由はなんなのか。番組の構成的に最後に打ち出しているなとか、そのパンチを最初に打ったのはどういうタイミングなのかとか、アンパンマンにとってのアンパンチ、アンパンマンというアニメーションにとってのアンパンチを拾っていく事が大事な訳だ。そういった作品の中から拾える要素の延長として、作者インタビューや、アンパンマンを作っている人達のインタビューを経て、クリエイター達がどういった思考でアンパンマンを作ろうとしたのか、その補助線としてアンパンチを理解していく。みたいな事が大事なのだ。

そこをすっとばしてただアンパンチを解釈してしまった時、待っているのは、例えば、パンチなんて野蛮な発想である。最初からパンチを打てばいい。パンチなんて古い。なんでばいきんまんを殺さないんだ。だとかそういったクソリプが成立する。だが、これはアンパンマンを読んでいるのかというと読んでいない。また、アンパンマンがパンチで敵を倒すのがかっこいいと思いました。アンパンマンがアンパンチで敵をやっつけるのは当たり前。みたいな考え方であっても、そう思うあなたがいるだけという話で。言って仕舞えば根拠が浅いのである。なんでアンパンチはかっこいいのかそれはフォーム? 構図? それとも起承転結の型が綺麗だから? ところでアンパンマンのアニメの構成って本当に起承転結なの? ってか起承転結って何? とかね。みたいなアンパンマンにおけるアンパンチが成立する前後関係を見つめていくと、ぐっと作品の魅力が増してくる。それぞれの話の落ちは基本アンパンチなのに、そこに至る過程が無数にあるアニメという視点をもったら、アンパンマンがやっていることってかなり凄いんじゃないのかとかね。

各話毎のアンパンチの役割や使われている文脈をそれぞれのエピソードから分析していくことで、アンパンチっていうのはアンパンマンというアニメにおいてどういう役割を果たしているのか、推測ができるのだ。もちろんそれは明確な答えではないかもしれない。ただ自分の頭で情報を拾って、その情報を本にアンパンチを自分なりに表現することができる。つまり、あなたにとってのアンパンチの魅力を紹介することに他ならないのだ。そういった紹介をすることで、逆にその話を聞いたあなたにとってのアンパンチとは何かを効くことができる。

そういった相互作用をするために必要なのが、まずはアンパンチは必殺技であるみたいな思い込みをやめることだ。情報を拾うことだ。拾った情報を本に読解したアンパンチの魅力をお互いに交換して拡張していくことなのだ。

その結果新しい情報を拾うこともできるかもしれない。ガフの扉が開くかもしれない。だが、その果てに待っている世界はきっと楽しいに違いないのだ。







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