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キモノノキホン・黒留袖

結婚式で見かける黒留袖。
黒地で引き締まった印象で、裾には素敵な柄があって…格調の高い着物のイメージがありますよね。

そもそも黒留袖はどのようなときに着る着物かご存知ですか?
すでに黒留袖をお持ちの方も、これから着てみたいと思われる方も、まずは黒留袖のイロハを知っていただきたいと思います。


1. 黒留袖?色留袖?…留袖とは??

なんとなく耳にされたことも多いことと思いますが、着物の種類で「黒留袖」や「色留袖」とあったりして、「一体、黒留袖や色留袖ってどんな時に着るの??」「黒留袖と色留袖って何が違うの??」といった疑問があるかと思います。

ズバリ、黒留袖・色留袖はお祝い事のための「フォーマルの着物」です。

黒地の黒留袖には、背中・両胸・両袖の5か所に紋が入り、裾に華やかな模様が描かれています。
また、黒以外の地色の色留袖という着物もあり、同様の5か所に紋が入ると黒留袖と同じ格になります。
(色留袖については、別のページでご紹介いたします!)


紋の数によって格が変わる…といった話を聞いたことがあるかもしれませんが『黒留袖は五つ紋』が決まりです。
この紋にも特徴があり、黒留袖に入る紋は「染め抜き日向紋」という紋の形を白く表したものを入れます。


また、黒留袖は“黒の地色”が特徴的ですが、その黒色は、主に「引き染め」と呼ばれる、刷毛を使って生地に色を引くようにして染める技法が使われています。
同じ黒の着物で喪服や黒紋付などもありますが、こちらは黒留袖とは違って、布や糸を染料液の中に浸す「浸染」という技法で主に染められています。

この黒留袖ですが、既婚女性の第一礼装で、結婚式や披露宴に出席する「新郎新婦の母親・仲人婦人・親族の既婚女性」の方が着用します。
「黒留袖は、主役に近い関係の方がゲストの方をお迎えするための装い」となります。


2. 江戸時代から続く、黒留袖のルーツ

黒留袖や色留袖のもとになる「留袖」と呼ばれる着物が登場したのは、江戸時代まで遡ります。
当時の女性たちが18歳になったとき、あるいは結婚したときに、それまで着ていた振袖の長い袖を短くする習慣があり、この「長い袖を縫い留めた着物」を「留袖」と呼んでいたそうです。

後に、「江戸褄(えどづま)」と呼ばれる、黒地に五つ紋、そして裾に華やかな柄の入った着物が江戸の芸者たちから広まりました。


もともと「留袖」は振袖の袖を短くしたもののため、色柄は様々でしたが、明治時代に入ると、西洋の文化が入ってきたことで、ブラックフォーマルの概念が取り入れられて、留袖の地色を黒にすることで「黒留袖」と呼ぶようになりました。


戦前の黒留袖の着こなしは、「喜びが重なるように」と白羽二重と重ねて着用し、丸帯が合わせられていました。

しかし時代の変化とともに、黒留袖と重ねて着ていた白羽二重を着なくなり、代わりに重ね着しているように見せる「比翼仕立て」が一般的になりました。

一番上にあたる黒留袖の内側、袖口・振り・裾・衿下だけに白羽二重をつけて、着た時には2枚重なって見える仕立て方です。
それまでは2枚の着物を重ねて着ることで黒留袖になっていたものが、1枚着るだけで済むようになり、より着やすくなりました。


さらに、丸帯を合わせていましたが、今では「袋帯」を合わせるのが一般的となりました。

少しづつ、時代の流れと共に黒留袖も進化をとげています。


3. 黒留袖の着こなしポイント

黒留袖の柄選びにはポイントがあります!
黒留袖の模様は前にも触れたとおり、裾だけに入りますが、

「模様が小さく、位置が低くなるほどご年配の方向き」になります。
「すっきりとした柄ゆきの黒留袖」は年齢相応の落ち着きや品格が出ます。
「膝上くらいの広い範囲に模様があるデザイン」はとても華やかになり、若々しい印象になります。


黒留袖_エディタ【村上】

そして、黒留袖に合わせる「帯締め」「帯揚げ」などの小物は白地に金糸や銀糸の入ったものが基本です。「草履」「バッグ」も金色、もしくは銀色のものを選びましょう。


忘れてはいけないのは、末広(扇)です。「祝儀扇」とも呼ばれる少し小ぶりの「扇」を帯に挟みましょう。


「黒留袖=着る機会がほとんどない着物」というイメージがありますが、実は人生で大切な日に装う、とてもお目出度い着物です。
その着物のルーツや意味を知ることで、よりお祝いの場にふさわしい装いができるのではないでしょうか。

最後までお読みいただき、ありがとうございました✿

きもの百花 ~HYAKKA~
きもの、人、時ー和のスタイルアップを目指す、着物マガジン



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