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カルビー躍進の理由を探る③

さて前回は営業利益率について見てきました(前回:https://note.mu/hyaaat/n/n3067cbc3df0f)。

今回は分析最終回です。カルビーから何を学べるのか、という点について話を進めていければと思います。

その前にそもそも松本氏が就任する前のカルビーはどういう状態であったかについて再確認です。松本氏は当時の状況についてインタビューにて次のように語っています。(2014年5月21日の「DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー」インタビューより引用)。

「単に儲け方が下手だっただけです。会社が儲かるには、基本的には3つの要素があります。「商品の品質」「コストの安さ」「供給体制」です。カルビーは1番目と3番目はよくできていた。ところが、2番目のコスト意識がまったくなかった。儲ける気がないんじゃないか、と思えたぐらいです。」

これ、思い当たる節はないでしょうか。そう、「カルビー」を「日本のメーカー」に読み替えても違和感が無いですね。では何故日本の会社は儲ける気がないと松本氏には見えるのか。松本氏は続いてこのように述べています。

「でも、日本の会社って、そういう会社だらけじゃないですか。儲ける気がある会社は本当に少ない。儲けても儲けなくても、経営者の給料が大きく上がるわけでもないし、株主が辞めろと言うわけでもない。これは日本の風土でしょうね。」

確かにこれまでは日本の経営者が株主によって解任されたケースというのはほぼ見受けられませんでした。ただ、世の中の流れとして外国人株主が増えてきて、物言う株主(私個人としてはこの人達が悪者だという風潮には同意できません。リスクを取って投資している株主ですので物を言う権利はありますし、内容に妥当性があるのであれば会社は耳を傾けるべきです)も増え、経営者はより結果(業績)が求められることになるでしょう。


さて、そろそろまとめに入りましょう。カルビーは何故ここ数年で業績が大幅に回復したのか。

それはやはり「松本氏がCEOに就任して会社を(強いリーダーシップを発揮して)変えたから」ということになるでしょう。ここまで分かりやすくトップ交代により業績が回復したケースも珍しいと言っても良いでしょう。

(カルビー株式会社代表取締役会長兼CEO 松本晃氏 カルビー2016年3月期アニュアルレポートより引用)

ただし「松本氏が素晴らしかったから」で終わらせては分析としてはあまりにも稚拙ですし、何の役にも立ちません(強いて言うなら「素晴らしい経営者をヘッドハンティングしましょう」くらいですかね。そんな分析結果に何の意味もないですね)。

基本的に、会社が抱える問題は全て個別具体的なものであり、教科書に書いているようなフレームワークを当てはめて綺麗に解決できるものではありません。じゃあそもそも経営学や数多ある経営書、今回の分析も無意味なのか。

私はそうは思いません。すぐにそのまま役に立つわけではないが、自分の頭を使えば強力な武器となる、というのが私の考えです。ビスマルク曰く「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」です(大好きな言葉です)。それに、すぐに役に立つことほど、すぐに役に立たなくなるのです。

つまり、カルビーが成功した事例・要因を一度抽象化・一般化して、「ではその優れている点ついて自社に適用するには」という具体化を行う、いわゆるアナロジー思考を活用することが大切になります。

では何を学べるのか、以下私なりの意見をまとめてみます(これについても私の意見をただ読むだけというよりは、自分ならどう活かすかを考えながら読んで頂きたいです)。

【ポイント①】

トップが出来るだけシンプルで強力なメッセージを明確に打ち出す。その際には「何のために」をセットで。

(カルビー 2011年3月期決算説明資料より)

カルビーが目指す姿は「コスト・リダクション」と「イノベーション」を通して継続的な成長と高収益体質になることであると明言しています。コスト・リダクションは文字通りコストの圧縮(原価の削減)ですが、イノベーションはつまり売上を伸ばしていく、ということです。

当たり前で、至ってシンプルです。でも、「シンプルであること」はとても大切なことです。これは私の感覚ですが、会社(社長)が考えていることの5割程度しか管理職クラスには伝わらないですし、そこから現場社員には更に5割程度しか真意は伝わりません。つまり、打ち出すメッセージはいかにシンプルで全社員が理解できるか、が大事なのです。シンプルであることの重要性は松本氏も次のように語っています。

 「みんな頭が良すぎるから、経営を複雑にしてしまう。すると、理屈を従業員が理解できず、戦略を実行できません。だから、私みたいに“中の上”くらいの頭が経営者に向いているんです。理屈をシンプルにすると、従業員が納得してついてきてくれます。」

【ポイント②】

自分の中に少数精鋭の「KPI(Key Performance Indicators)」を持ち、定期的にチェックをし、数字の変化に注意を凝らしアクションを起こす。

ポイント①については財務分析というよりも定性的な「経営者として何をすべきか」について意見を述べましたが、ここでは経営者(事業責任者)が見ておくべき定量的なデータの重要性についてです。

まずは何をKPIに置くべきか。ある程度どの会社にも共通してKPIとなり得るものと(ここでは「共通KPI」と呼びます)、業界(会社特有)のKPIが存在します(ここでは「固有KPI」と呼びます)。特に固有KPIについては、自社業績にインパクトを与えるデータは何なのかをおさえて(つまり事象と結果の因果関係をおさえて)それをKPIに設定すべきです。

例えば自社が消費財メーカーであるとしたら、マーケットシェア、製造原価率、工場稼働率などが考えられますし、会社によっては商品のリピート率であったり、販売単価であったり、重要顧客の売上構成比率であったり、その他様々なものが考えられます。

共通KPIとしては、売上高成長率、営業利益成長率や、粗利率、営業利益率、労働集約率などが考えられます。

この時ポイントなのが、KPIをあまりにたくさん持ちすぎないことです。自分が理解可能な範囲で、かつ変化に敏感になれるだけの個数に絞ることが大事です。なぜなら、KPIは見ること自体が目的ではなく、変化を捉えてアクションを起こすことが大切だからです。

例えば、粗利率が下がっているなら、それは何故なのか。それは特殊要因による一時的な下落なのか、トレンドが変化し自社商品が陳腐化(もしくは調達材料の生産量減少による原価高騰)しているのか。もし後者であるのなら、何をすべきなのか。ジリ貧になる前に早めに撤退すべきか(事業売却やコストカットなど)、粘れば残存者利益を取れるのか、などの見極めは厳しくなってからでは遅いのです。そのためにKPIを継続的にモニタリングし、変化に敏感になる必要があります。

今一度ご自身が定期的にチェックしているKPIについて、なぜその指標を見ているのかを考えるのは良いかもしれません。

なお余談ですが、私は私生活でもKPIを設定しています。それは「週間思考時間」「クレジットカード使用額」です。この理由はいずれ機会があればご説明します。

【ポイント③】

会社の意思決定は民主主義ではなく、ビジョンを根底としたトップの意思によって行われ、決断したらあとは不断の覚悟で遂行すべきである。

(カルビーのビジョン)

前回も書きましたが、カルビーは営業利益率を上げるために無駄なコストの削減を行ってきました。つまりきちんと儲けることを当たり前に追求してきました。さらには最近では女性活躍推進や生産性の向上を掲げて実行しています。

会社を良くしよう、改革しようというのは、意見として現場社員からボトムアップで出てきたとしても、やはり会社組織はピラミッドなのでどうしても上司の顔を伺ったり、他部署との調整を重ねて皆が満足する(ように見えて誰も満足も不満もない)当たり障りのないアクションプランになってしまいがちです。

だからこそ、上司がおらず会社について全責任を追っているトップが決断して、実行するようにメッセージを伝えなければなりません。大きな方向性を打ち出してからは現場の仕事です。

そして、トップが打ち出すメッセージは「女性活躍」や「コストリダクション」という直近のアクションプランにつながるものであることも大切ですが、時として聞いただけで社員がワクワクするようなメッセージを打ち出すことも必要です。実際にカルビーでは以下のような目標が掲げられているようです。

「私たちも「2020年に1兆円企業」「業界で圧倒的No.1」といった目標を掲げています。実際にそうなるかどうかはわかりませんよ。魅力的な夢をえがいて、従業員を感化することが大切なんです。」


長くなりましたが、ここまで三回に渡ってカルビー躍進の理由と、そこから学べることを見てきました。

初めての記事で、読みづらいことなどあったかと思いますが、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

次回以降はもう少しライトに、いろいろな企業を見ていければと思います。

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