「元いじめられっ子」の息子が友達をいじめた話

長男が小学5年生の時。

友達のA君のママからLINEがきた。

「うちの○○が、長男君にからかわれるのが辛いって泣いてるの。学校に行きたくないって」

「長男君の他にB君やC君もだって言うんだ」

「ただ、うちの子の話だけではわからないから、長男君から話を聞いてもらえないかな?他のところにも聞いてくれるようにお願いしてるとこ」

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A君と息子は、1年生の頃からサッカーを通して仲良くなり

2年生から同じチームに属している。

練習の様子を見る限りは仲が良さそうで、A君のママも

じゃれあって遊んでいるのを見ては「仲が良いんだな」と思っていた。

まさかの泣きながらの告白に動揺している、とのこと。

ただ、感情の行き違いもこの時期はよくあることなので

まず両方の話を聞いて判断したいのだそう。

さて、どうする?私。

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私自身、小学校3年生あたりからずっといじめの被害に遭っていた。

理由は、母に殴られたときに耳のあたりに大きな内出血ができ

それを「気持ち悪い」と言われたのが始まりだったように思う。

理由が理由だけに、誰にも相談できず

結局、中学卒業まで無視や暴言などが続いた。

当然、学校に行けない時期もあった。そのため未だに

勉強はちんぷんかんぷんで計算も自己流。

息子の勉強を見てあげることもできない。

「いじめ、だめ。ぜったい」

いじめが及ぼす影響を、身をもって知っているからこそ

長男には口を酸っぱくして言ってきたつもりだった。

それなのに、どうしてこんなことが起きてしまったのか。

怒りや悔しさ、情けなさで頭に血が上る一方だった。

他のママからのLINE

長男の帰りを待っている間

B君とC君のママからLINEが届く。

B君ママは

「うちも仲が良いって思ってたけど、A君が辛かったって泣くぐらい追い詰めたのは紛れもない事実。一応本人にも話は聞くけど基本的には問答無用ということで謝りに行こうと思う」

そしてC君のママは

「普段は仲が良いんだし、からかいたくなる理由があったんだと思う。からかっただけで泣くってちょっと大袈裟だし。子どもたちだけに任せててもいいんじゃない?」

・・・この温度差に愕然としてしまった。

私は、B君のママと同じ考えだった。

理由があればからかってもいいとはどうしても思えないし、子どもたちに任

せた結果こうなったのは紛れもない事実なのだ。

旦那に相談

ママ友と話しても埒が明かないので

とりあえず旦那に相談してみることにした。

旦那の答えは

「そんなの理由なんてどうでもいい。問答無用で長男が悪いよ。

だってさ、よく考えてみてよ。

小学校5年生なんてかっこつけたい盛りよ。大人ぶりたくなってるお年頃。

そんな時期に、いくら素直で純粋な子だっていったって

泣いて訴えるかっていう話。

1回や2回の話でそんな風になるわけがないでしょう。

とりあえず一応理由は聞いて、でもA君のママにはさらっと伝えるだけにし

て。理由なんて聞いたところでA君が傷つくだけだから。」

ちょっとホッとした。私と同じ考えでいてくれたことに。

長男の話

夕方帰宅した長男に話を聞いてみることにした。

A君のママからこういう話があったけど、思い当たることはあるのか聞くと

「仲良いからない」

という。

けれど、細かく話を聞いていくと

どうやら3人で寄ってたかっての「イジリ」が

過剰な節があることがわかった。

A君は「学校に行きたくない」って言ってるみたいだよ。

本当はそういうの嫌だったけど、我慢してたんだよ。辛かったんだよ、と話すと

「言わないから気付かなかった。笑ってるから楽しいんだと思ってた。

みんなも笑ってるから、それでいいと思ってた」

と「でもでもだって」が始まった。

自分の「しつけ」で何が足りなかったのか

このやりとりでわかった気がした。

足りなかったもの

「言わないから気付かない」とか

「笑ってるからいい」とか

一見それは仕方ないと思ってしまいそうな

「もっともらしい理由」だけど(実際、C君のママはそれは仕方ないし謝る

必要はない。うちは悪くないと言い切った)

こういう言葉は

「相手を尊重する」というコミュニケーションの基本を

蔑ろにしているから出てくるのだと思う。

実際に長男は

「オレは嫌だったら嫌だって言う」と言ったが

「あなたはそう。でもA君はどうかな」と聞くと

黙ってしまった。

A君の性格は、長い付き合いで十分すぎるほどわかっているはずなのに

尊重できていない。

相手の穏やかさと優しさに甘えて

やりたい放題やった結果がこれだったのだ。

その後

B君の両親と私たち夫婦でやり取りし

どういう対応をしていくか決めた。

〇みんな調子に乗るタイプなので、しっかりお灸をすえる

〇自宅まで来なくてもいいよ、というA君のママの言葉に甘えさせてもらうが、きちんと謝罪をさせる

〇ほかにも嫌な思いをした子がいるかもしれないので、担任には事の顛末を報告して、今後は必要な時に介入していただけるようにお願いする

〇「勇気を出して嫌だって言ってくれてありがとう」とA君に伝えてもらう

C君のママは、終始「うちは悪くない」の一点張りだったため

やんわりと事後報告することにした。

担任の先生からは

「私にはトラブルの話は上がってきてないけど、でも調子に乗りすぎて

きつい口調が見られてはいたので、気を付けて観察します。お父さんのお灸

はあの子たちにはかなり効くでしょうし、C君のご家庭のこともありますか

ら、私の方から特別に指導は行いません」

というお返事をいただいて、今回の件は終了となった。

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その後は、多少の口喧嘩はあったものの

穏やかに小学校生活は過ぎていった。

C君とはその後疎遠になり

A君とB君とは

中学で転校してからも

同じクラブチームに所属して切磋琢磨しあう大事な仲間となった。

高校生になってバラバラの進路を歩むことになったが、たまに連絡は取りあっているようだ。

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長男は、当時を振り返って

「あの出来事は大きかった」と言う。

「気持ちの物差しは、人それぞれ違う」という事に気付いた。

自分は、優しいくて怒らないAに甘えていたんだと思う。

些細な一言や態度で相手を傷つけることもあるし

それを「気付かなかった」という理由にしてはいけないことを学んだ。

と言っていた。

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私自身がいじめの被害者だったため

「とにかく友達と仲良くしてほしい」という願いが大きすぎた。

必要なコミュニケーションを取れないまま大人になったからなのか

「相手が笑ってくれればOK」という浅い考えを

自分も持っていたのかもしれないと思う。

「どうやって関係を維持していくのか」という視点。

それは、やはり本や漫画だけではない

生きた通常の「友達関係」を経験し

肌で学ばないと、どうしようもないのだという事を実感する

痛い痛い、経験となった。

「年老いた者が賢いとは限らず、年長者が正しいことを悟るとは限らない」

という聖書の言葉があるが

この一件はその典型だろうと思わざるを得ない。











































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