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心を動かされる珠玉のサントラ盤(2):「ある日どこかで」(ジョン・バリー)

「ドラマティック・アンダースコア」のサントラ盤を毎回紹介しています。

「ドラマティック・アンダースコア」とは、映画の中のアクションや、特定のシーンの情感・雰囲気、登場人物の感情の変化などを表現した音楽のことで、「劇伴(げきばん)音楽」と呼ばれたりします。

今回ご紹介するお薦めのサントラ盤は――

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ある日どこかで SOMEWHERE IN TIME
作曲・指揮:ジョン・バリー
Composed and Conducted by JOHN BARRY
米La-La Land Records / LLLCD 1550


タイムトラベルものの傑作ラブストーリー

「(TV)ミステリー・ゾーン」や、スピルバーグが監督した傑作「激突!」、ロジャー・コーマン監督によるエドガー・アラン・ポー原作の怪奇映画等で知られるホラー作家/脚本家リチャード・マシスンの小説「Bid Time Return」を彼自身が脚色し、ジュノー・シュウォークが監督したファンタジー+ラブストーリー。1980年製作。

出演はクリストファー・リーヴ、ジェーン・シーモア、クリストファー・プラマー、テレサ・ライト、ビル・アーウィン、ジョージ・ヴォスコヴェック他。製作は、同じくマシスン原作の「奇蹟の輝き」もプロデュースしたスティーヴン・サイモン(ここでのクレジットはスティーヴン・ドイッチになっている)。

母校で初演を迎えた新進劇作家リチャード・コリアー(リーヴ)の前に現れた老婦人は、彼に金時計を手渡すと「帰ってきて」という言葉を残し去っていった。数年後、再び母校を訪れたリチャードはその町のグランド・ホテルで1枚の肖像画に心を奪われる。そこに描かれた美女エリーズ・マッケンナ(シーモア)は、かつての老婦人の若き日の姿だった。エリーズに逢いたいという想いを募らせたリチャードは、ついに時間の壁を越えて彼女に会いに行く、というタイムトラベルものの恋愛映画。ジェーン・シーモアがこの上なく美しいときの作品で、彼女の代表作の1つ。

この映画は2021年2月にBSテレビ東京で吹替新録音版が放映されており、クリストファー・リーヴをささきいさお、ジェーン・シーモアを甲斐田裕子、クリストファー・プラマーを羽佐間道夫が吹き替えている。当時28歳のリーヴ(1952/9/25~、52歳没)の声を78歳のささき氏が、当時51歳のプラマー(1929/12/13~、91歳没)の声を87歳の羽佐間氏が担当しているところがすごい(この2人はスタローン吹替仲間でもある)。

ジョン・バリーによるロマンティックなスコア

音楽を手がけたイギリスの作曲家ジョン・バリー(1933~2011)は、「007」シリーズや「野生のエルザ」等のスコアで有名だが、「フォロー・ミー」「愛と哀しみの果て」「ダンス・ウィズ・ウルブズ」といった映画に、独特の“バリー節”ともいえる情感豊かな美しい主題曲を提供していることでも知られる。

そのバリーの数多い作品中でも最も美しく感動的なスコアの1つが、この「ある日どこかで」で、映画音楽ファンにとっては非常にポピュラーな作品。ロジャー・ウィリアムスのピアノとオーケストラにより演奏される「Theme from Somewhere in Time」でのメインの主題が、この上なくロマンティック。「The Grand Hotel」や「The Old Woman」での美しい主題や、「A Day Together」や「Rowing」での明るく喜びに溢れた主題もバリーらしい美しさに満ちている。バリーのベスト・スコアの1つであることは間違いない。

途中にチェット・スウィアトコフスキーのピアノ・ソロによるラフマニノフ作曲の「パガニーニの主題によるラプソディー」が収録されているが、この曲は劇中でリチャードが未来からやって来たことをエリーズに悟らせるキーとなっており、時間SFの設定が実にエレガントに処理されている。

美しさに心を洗われるような音楽を聴きたい方にはお薦めのサントラ。


映画音楽作曲家についてもっと知りたい方は、こちらのサイトをどうぞ:
素晴らしき映画音楽作曲家たち

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