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ナイルパーチの女子会【読書感想】柚木麻子

柚木麻子さんの本にちょっと前からはまっています。
アッコちゃんシリーズが最初だったかな?
あれってさくっとすぱっと後味がさっぱりしてて
スーパー姉御のアッコさんが軽快にいろいろ問題を解決してくれるから
読んでてストレスがしゅわしゅわと溶けていく感覚が気持ちよくて。

からの伊藤くん
いやぁ マジ伊藤くん 嫌だ。そしてああいう男っている。
ひたすら待ちの。態勢の。でもちょいちょい気のあるそぶり見せてくる。
が、自分からは動かない。

と言うか。その時その時の自分の状況を写し取っているかのように小説というアウトプットにされているのかと
隠しカメラとか後ろから誰かに見られているのかとか私の周りはすべて誰かのシナリオで動いてるんじゃないかと
疑心暗鬼になるぐらい私の身に覚えのある小説を書かれる方だと
心底、尊敬と恐怖をもって併せて畏怖の気持ちを込めて読ませていただいてます。

ゆえにこの「ナイルパーチの女子会」にも心当たりが大いにある。
私は栄利子側。ネットを通して同じ趣味の仲間と仲良くなった時に
こういう心境に陥ったことある。
翔子側がねえ。そー。
翻って他の人気ブロガーに粘着して栄利子と同じような状態を創り出しているところまで含めてそっくりな子だった。

栄利子は恵まれているから、自分に足りない物があることを受け入れたくなかった。それゆえの暴走で自分の理想の友達を翔子に求めたい。
「お人形さんごっこをしている君を見てると寒気がしたよ。君は君の中で求めた役割を相手に押し付けて型にはめることが当然だと思っている」
台詞は多少違うと思うけどそんな意味だったかな。
それがその後の状況にぴったり当てはまっているのが、もう ドラマとしてもホラーとしてもすごい著者だって。
ある程度読みなれてくると残りのページ数を見て思う。

あ。この浮遊感は上昇じゃないな。
この後下がるあれがあるからそのための段差だ と。

でもさー!!栄利子の悲鳴のような嘆きが分かる。心情的に。
性欲や打算の介入しない他者との交流を持ちたい!
心が通じ合う快感を得たい!

脇役が本当、うまい配置。
父親からお世話になり恩を感じている栄利子の上司とか
同じ有名総合商社に勤める同僚の杉下とか
そこに派遣で務める野心家の真織とか
過去に栄利子のせいで人生の落伍者になった圭子とか
翔子の父親は人から手を差し伸べられることをひたすら待つだけの
それが無いなら人生を投げ捨てる感じの男性とか。

頑張ることを強制され、何か努力をしないといけないと
誰かに責め立てられて女同士で戦わないといけないような社会を
水槽に見立てて

本人の意思とは関係なく生態系を壊すような脅威にされた
ナイルパーチを。栄利子に重ねるのです。

彼女は優秀な女性です。頭が良くて仕事の処理や情報収集も的確で
色白の華奢な美人で、裕福な家庭でご家族に大事に愛されて育った
そんな女性です。

寄ってくる男性も多いけど 結局は離れて行ってしまう。
女子同士では友達関係を作るということができない、と言うか
分からない。
自分の中で 友達ってこういうことを言いあったりしたりするのよね。
だからそれをしなきゃ。していたらそれが本当の友達になったって
ことよね。って。

それが共食いになっちゃうだけなんです。

さらにはナイルパーチ栄利子にも天敵が。
同じナイルパーチな真織様。しかも群れを作れるタイプのナイルパーチ。
様付けしちゃうって。
怖いって。武器が〇〇〇〇〇ですよ。それで人を刺せるって間違いなく戦闘民族の末裔だって。
ドラマ化したそうですが、このシーンもあったのでしょうか。
見てみたいです。ずば抜けた演技を見れることでしょう。

女子プロレスラーみたいな真織様にはぞくぞくさせていただきました。
栄利子に婚約者の杉下と関係を持ったことを暴露されてその責任を取らせるために突き付けた条件のシーンとか。ヒール役を徹底されている!!
良きヴィランって大事ですね。なぜ惹きつけられるのでしょう。

あー でも 時系列で言うとこの時の栄利子はすでにあの状態だったのかな
とすると、それはそれで悪意を感じられるので良いです。

人の弱いところをナイフで刺してぐりぐりする真織様です。
その洞察力があればもっと偉業をできると思うんですよ。
弱腰杉下ごときを伴侶にするより。

一度に読むより、数回に分けて咀嚼して休憩をはさみ
体が疲れてるなー と言うような時などには触ることは止めて
休みの時、明るい部屋や場所でゆっくりと、温かい飲み物を添えて

けっして一人でいるときや落ち込んでいる時などには
読まない方がいい本です。

それを乗り越えると、悪い血を出し終えたような
程よい疲労感を伴った回復するような精神状態の高揚感を
味わえます。
おすすめです。


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