「発達障害サバイバルガイド」を読む

「発達障害サバイバルガイド」(著・借金玉)を読みました。
私は発達障害の診断は受けていないのですが、筋金入りの面倒くさがりなので、そのライフハックにフリーライドさせていただこうという魂胆です。障害のある人が生きやすい環境というのは誰にとっても生きやすい環境のはずです。

確かに実用的。わかりやすい。文章の読みやすさもありますが、具体的なのがよい。製品名も発売元も出てたりして。
○○なものを選びましょう、じゃなくて製品名ではっきり書かれているので、そこで間口が広いです。

発達障害というより、「生活力のなさを工夫でどう埋めるか」ということに重きが置かれています。著者の方は相当工夫されてきたのでしょう。
精神論ではなくて、易しく、そして優しく、一つ一つの実践例を丁寧に解説してくれます。
「本質ボックス」とか「エブリディボックス」とか。簡単に、でも自尊心を傷つけないように工夫されています。
生活水準も生きていればいいや、ではなく何とか社会性を維持できるギリギリのライン。
社会性を維持しながら暮らすのって重要ですからね。そこのバランス感覚がよいと思います。時計をアップルウォッチにするくだりは目から鱗でした。
パターン化、ルーチン化、一元化。定型発達なら飽きがくるものですが、発達障害がある場合、そっちの方がストレスフリーなのかもしれません。

「一番下っ端の立場から働けるところでもう一度働く」。一番感銘を受けた箇所です。挫折後、やり直せるかはこれにかかってるかもしれません。
私自身、新卒で大学助手として採用され「これで安泰」と思っていたのですが、ブラックすぎる環境と人間関係と技量不足で即刻精神を病み、あれやこれやあって全く違う職種でアルバイトしていますので深く頷いてしまいました。肯定されたかったのもあるかもしれません。
一度踏み外した山道をまた一から歩き直すのは大変ですが、積み重ねてる実感が湧きます。

話が逸れました。

問題を挙げるとするならば。女性向きの情報は載っていません。
私がナンセンスなことを指摘している自覚はあります。この時代に「女性はこう暮らす、男性はこう暮らす」という線引きをすることが如何にナンセンスか、分かっています。
しかし「女性と男性で重要度が異なってくる点」があるというのも、それを認めるのはハラワタが味噌煮込みになるくらい悔しいけど、現実問題あります。
化粧などの表面的なものから生理や妊娠出産のバースコントロール、色々ありますが、発達障害を持っている方が困難と感じるものの一つに「他者へのケア」があるのではないでしょうか。子供、配偶者、パートナー。色んな「他者へのケア」で社会に繋がっている、という人もいるはずです。
これをどう回避するかこの本にはありません。徹頭徹尾自分へのケア重点。
サバイバルガイドとしては正しいです。
著者の方もパートナーがいらっしゃるようですが、パートナーもひっくるめたガイドとはなっておりません。その点ご注意を。

あと全てを実践しようと思うとお金とガッツが必要。
一つ一つは難しいことじゃないんですよ。(引っ越しのところはどうかと思いましたが)
この本はサバイバルガイドであって、日々のハードルを極限まで下げよう!それにはこういうことにコストをかけよう!という向きで、決して人生の目線を下げるためのものではありません。
むしろ著者の方は学歴も職歴もあるし、こっから巻き返す、という野心もお持ちの方であると思います。巻き返し方がコツコツ派なだけで。

今の私が読んだから「ふむふむ」と思いましたが、どん底の私が読んでも「なんだこの本!できたら苦労してない!」と低評価をつけて投げ出していたような気がします。

あとあくまでも「ライフ(暮らし)ハック」であって、人間関係の領域には立ち入らない、というスタンスのようです。
人間関係でひどく困っている、という方には肩透かしかもしれません。

何か否定的なことを多くを書いてしまいましたが、ある程度生活の基盤があって、社会にはかろうじて繋がっているけど、何となく生きにくい。億劫さが勝つ。それくらいの大多数の人にはとても適したテキストだと思います。
エントリーコストの高い趣味を持て、とかは万人に言えることだし。
お酒は文化的な範囲で楽しむべしというのは私も知っておきたかったです。病気になってからじゃ遅いですよ、本当に。

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