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パソコンから「離れる」事業が発足⁉︎ Huuuu初の社外取締役と考えるネクストムーブ

2022年5月から、Huuuuに社外取締役が増えることになりました。

少しだけ宙に浮いているこの方は、望月重太朗(もちづき・じゅうたろう)さん。

代表を務める株式会社REDDでは、新規事業にまつわるクリエイティブやコミュニケーション関係のコンサルティングを行われています。まだふわふわしているものにコンセプトを立てたり、目的地設定をしたり、プロジェクトメンバーのチームアップをしたり、などなど。クライアントは資生堂やバンダイナムコアミューズメント、JAXA、東洋製罐グループなど、大手企業が中心だそう。

株式会社REDD 会社資料より

一方で、高知県や東京の練馬区など、ローカルでの活動にも取り組まれています。例えば、今まで廃棄されていたアスパラガスの茎の部分を活用し、練馬区の農業や福祉施設と連携したアスパラ茶「翠茎(すいけい)茶の生産・販売。そのほか「UMAMI Lab」として旨み文化を研究したりと、幅広く活動されている方です。

前職の博報堂アイ・スタジオ時代にジモコロで「ポートフォリオの作り方」をテーマに取材したり(とても読まれた人気記事です)、「森、道、市場」ではHuuuuのブースに翠茎茶を引っ提げて出店してくれたりと、Huuuuとの関わりも深い方。

そんな重太朗さんを社外取締役に迎え、Huuuuはどんなことをやっていくのか? Huuuu代表・柿次郎と重太朗さんの対談をお届けします。

Huuuuと植物は通じる?

柿次郎 重太朗さん、よろしくお願いします!

重太朗 さっそくですがこちら、お土産にどうぞ。

和漢ハーブ100%を配合した、サウナでもお風呂でも使える入浴の素。高知で40年以上、入浴剤開発を行なってきた松田医薬品とのコラボレーション商品

柿次郎 重太朗さんが作ってる「Löyly湯(ロウリュゆ)」ですね。サウナ好きとして気になってました。

重太朗 僕がいま作ってるのはお茶と入浴剤だから、手土産には困らないですね。

柿次郎 うわ〜、想像以上に香りが強い!

重太朗 すべて天然植物で作ってるので、香りも強いし、長く保つんです。

柿次郎 土に生えた植物からこんな複雑でいい香りが生まれるって、当たり前ですけどびっくりしますね。

重太朗 Huuuuがやっている取材のよさも、同じ部分にあると思っていて。

柿次郎 植物とHuuuuが通じる?

重太朗 一般的には面白さがまだあまり言語化されていない取材対象に対しても、好奇心をもって掘り下げていくじゃないですか。だから取材の結果、本質的な面白さが見えてくる。

柿次郎 好奇心100%でやってます。

重太朗 自然界の植物も、そのままだと単に「きれいだな」くらいで理解が止まってしまう。でも適切に加工すれば、何倍ものよさを引き出せる。これって、Huuuuが「編集」の手法で取材対象の魅力を引き出しているのと同じなんじゃないかなと。

柿次郎 面白がり方がすごい。光栄です。

Huuuuにはナナメの関係の大人が必要

柿次郎 Huuuuとして「社外取締役」というポジションは、重太朗さんが初めてなんです。

重太朗 提案したのは僕ですけど、どうしてOKしてくれたのか気になってました。

柿次郎 まず、重太朗さんはHuuuuにすごく興味を持ってくれて、僕すら気付いてない客観的な指摘をしてくれるんです。あと、メンバーが僕の偏った意見を一方的に聞いてるのもよくないなと。しかも僕は東京にいないので、東京メンバーが、会社のことを相談できる大人がいて欲しいなと思ったんです。

重太朗 ナナメの関係にある大人というか。

柿次郎 重太朗さんはしっかり人にティーチングできるんですよね。それにアイデアや思いつきのプロジェクトを整理して、資料に落とし込んで、適切に人に届けられる。僕はそのへんが苦手で、なんでも「面白かったらいいでしょ!」になりがちなので。

重太朗 僕みたいな広告代理店経験者にとって、「構造化力」は強みかもしれませんね。

柿次郎 構造をスパッと可視化して、適切に落とし込む。代理店時代に、大量のめんどくさいオーダーに応えきる筋肉がムキムキになったんだろうなと。

重太朗 クライアント&チーム&消費者みんなを納得させて、成果物を世の中に出し続けるのが仕事だったので、曖昧な情報を咀嚼して15秒のCMに落とし込んだり、小さなデジタルバナーの中で伝えたいことを表現したり。

柿次郎 僕たち編集者とはまた違う筋肉だと思います。

重太朗 そうした構造化のスキルを使ってプロダクトを作ったり、コミュニケーションをとったりしていると、「説明上手」になります。すると相手に理解してもらうスピードも上がるので、余った時間でクオリティを上げられる。そこのノウハウは、積極的に共有していきたいですね。

柿次郎 社内で勉強会もやってほしいです!

柿次郎のスピード&パワー、重太朗の防御力

重太朗 前から聞きたかったんですが、柿さんやメンバーの中には「Huuuuの編集」の指針ってあるんですか?

柿次郎 会社としての決め事は特にないです! 僕個人は「スピード&パワー」、つまり強さと手数を増やして、より多くのものを世の中に届けたい、とよく言ってます。

柿次郎 編集者って、いろんな人が人生を通して積み上げたものを預かっている側だと思うんですよ。だから足腰を鍛えて、全国を駆け回って、預かったものをちゃんと届ける努力は全部しないと、と思ってます。

重太朗 できる範囲で、なるべく全部やる。

柿次郎 だから、いまのHuuuuの指針があるとすれば、「全部やる」ですかね。編集の会社なのに「森、道、市場」ってフェスへ出店してるのも、他のいろんな仕事も「声をかけてもらったからには、できるだけ応えよう」ってものが多いです。声をかけてくれた側の持つHuuuuのイメージに合わせて形を変えていくと、結果やれることも増えるので。

重太朗 いい意味で、明確な決め事を作らずに流されてるのがHuuuuなんですね。

重太朗 さっきの「スピード&パワー」の話につながるんですが、最近は「器用さ」や「パワー」にパラメーターを振り切っている会社が多いと感じるんです。

柿次郎 ほうほう。

重太朗 でも、長く続く会社や組織にとって重要なのは器用さとパワーより、「守備力」と「スピード」なんじゃないかなと思っていて。

柿次郎 守備力とスピード、ですか。

重太朗 流行に左右されずにじっくり腰を据えて取り組み、新しくやってきたものにも耐えられる足腰を持つ。そんな守備力が大切な気がするんです。だから足腰を鍛えつつ、止まらずにスピードも上げていくのが理想。「防御は最大の攻撃」と言うように、それが結果的にパワーや器用さの部分も生む気がするんです。

柿次郎 なるほどなぁ。

重太朗 最近はその主従が逆転して、一発ガツンと盛り上げてマーケの中にうまく乗せ、話題にはなるけど本質は伴ってない……みたいな話も多いと思うんです。そういうものづくりって不健康だし、どこかで歪みが生まれる。だから、長く楽しむ組織を作るためのパラメーターの振り方を、最近よく考えるんです。

柿次郎 それで言うと、重太朗さんが関わってくれることで、Huuuuに足りない「守備力」が補われる予感がします。

重太朗 そうだといいですね。守備力を上げるとき、いちばん大事なのは「好奇心」かもしれないと思っていて。外に対する好奇心が強いほど、いろんなものを内側に溜め、いろんな方面に出力できる。

柿次郎 インプットの多さが、結果アウトプットの強さにも繋がる。それが守備力にもなってくると。

重太朗 なので、「好奇心を強く保ち、多くのものを溜められる」状態をうまくつくれば、組織としてはすごくいい形で発展するのでは、と。決め事を増やし、それを守ること自体が目的になっちゃうと、好奇心が損なわれてしまう。かといってルールが本当に何もないと、珍獣たちの集まりになってしまうので。

柿次郎 今のHuuuuは、どちらかと言えば後者に近くて……(笑)。

重太朗 (笑)。だから、責任はそれぞれが持つけど、判断の物差しになるような最低限の決まりはある、という状態が理想だと思います。それを実現するため、いろいろ実験していくのが組織づくりなんじゃないかな。

若い一芸集団から、どう変わっていくか

東京メンバーと柿次郎、重太朗さんが揃った一枚(撮影:藤原 慶)

柿次郎 重太朗さんから、今のHuuuuってどんな風に見えてますか?

重太朗 いろいろありますけど、みんな一芸を持ってるイメージはあります。カラオケが異常に上手かったり、イラストを描けたり。

柿次郎 自分の好きなものを大事にする人間は集まってるかもしれません。

重太朗 僕も経験があるんですが、企業に長く勤めると、人間が希釈されてくるんです。上下関係の元、ミッション達成のために働くことが主になると、好奇心や自分の好きなものへの愛みたいな、本来持ってるその人の良さがスポイルされちゃうというか。

柿次郎 企業の仕組み的に、目的を達成する力のみで評価される側面はありますよね。その分、個性が薄まってしまう。

重太朗 その点、柿次郎さんをはじめ、Huuuuのメンバーはちゃんと個性があるなと。

柿次郎 僕がカニの横歩きみたいな面白い歩き方でずっと遠回りしてたら、そこに一芸を持ったみんなが自然とついてきて、ハーメルンの笛吹きみたいになってた感覚はあるかも。ただ、そのやり方を続けてると、面白くていいやつばかり集まる一方で、会社として足りない機能が出てきてしまっていて。

重太朗 そこは一長一短ですよね。

柿次郎 それは外から見てもわかるらしくて(笑)。だからこそ、Huuuuの周りでは重太朗さんをはじめ、いい大人たちが無軌道さを補うように見守ってくれている。そんな構造が自然と生まれてる気がします。

重太朗 Huuuuは社会経験で考えると、まだまだ若いメンバーが多いですからね。

柿次郎 気づいたら、会社でちゃんと働けなかった人たちが集まる駆け込み寺みたいにもなってきていて……(笑)。

重太朗 (笑)。でも、その合わなかったのは「能力」ではなくて「生き方」じゃないかな。だからこそ、僕が大企業で得てきた経験を、なんらかの形で反映していけると思います。

"思想"に研究開発で介在して、人々に届ける

柿次郎 この場を借りて、社外取締役の重太朗さんとやっていくことを決めましょう!

重太朗 僕はここ10年くらい、いろんなクライアントとR&D(研究開発)をやってきたので、Huuuuに研究開発部をつくりたいです。

柿次郎 めっちゃいいですね。みんなの「これやりたかったんだよね」を発露する場所ができる!

重太朗 僕が前の会社でやってたのは、基礎技術の開発というより、もう世の中にある一般的な技術を組み合わせてコミュニケーションに変える「応用研究」だったんです。つまり「知ってる技術で、知らない感動を得られる何かをつくる」ことなんですけど。

柿次郎 それって、任天堂の横井軍平が言ってた「枯れた技術の水平思考」的なことですか?

枯れた技術の水平思考……最先端ではないが、すでに広まって安定して使える技術に対し、今までに無かった使い道を生み出すこと

重太朗 そうです! 新しい基礎技術をつくるのは大量のリソースも必要だし、ハードルが高いけど、応用研究は「工夫」。創意工夫の結実がそのままアウトプットになるので、ハードルも下がるんですよ。

柿次郎 面白そう! なんか編集っぽさもありますね。

重太朗 作り手としても楽しいですよ。ちょっとでも長く残るものを、みんなで考えて作り出すことなので。

柿次郎 それで言うと、僕は昔の人間の「思想」を現代的に置き換えて発信したいなと思ってます。100年前のお医者さんが推奨してる玄米食の思想を、現代の人に合う形で届けたり。

重太朗 いいですね。ちゃんと根っこに思想があることを、僕もやりたいんです。技術ありきではなく。僕のつくってる「翠茎茶」でも、農家さんや福祉作業所にお願いしてる一つひとつの作業は、すごく新しい技術とかではない。でも、そこに誰かが介在して、それぞれを繋げて、現場を整えると今までなかった商品がつくれるわけです。

重太朗 その商品がなぜ今までなかったのかというと、アイデアの問題というより、手間とかコストとか色んな面倒くさいことがあったから誰もやらない、という現状もあるのかなと。でも、Huuuuはおそらく、そうした「面倒くさいけど、大事なこと」にも思想を持って介在していけるチームだと思うんです。

柿次郎 いいですね。この春からできる僕の新しい家には、畑が500平米あるんです。その畑づくりもやりたい。土に触れるのは面倒くさいけど、大事なことなので……。

重太朗 Huuuuの土事業部ですね。

柿次郎の新居にある畑

「離れる」事業部で、農業に挑戦!

日向 横からすみません。Huuuu社員の日向なんですけど……俺は「パソコンから離れる」のがやりたいことだな、と聞いてて思いました。パソコンのモニターに向かいすぎて不健康になってる実感があるので、あえて「離れる」行為を会社の事業としてやるのはどうでしょう。

柿次郎 R&Dで「離れる」を研究する、面白いやん。離れた先にあるのが「土」かもね。「離れる」事業部だ!

重太朗 いいですね。なにか起こった時でも、自分たちの食べるものをつくれる一次産業って最強ですし。

重太朗 「価値を変換してます」「デザインしてます」って、結局は豊かだからできてるよなあと思うこともあって。もっと別の、人間本来の意味で「豊か」になるためにパソコンを離れ、土に向かうのは今こそ大事な気もします。

柿次郎 畑がある以上は、なんでも作れるので。僕、大豆が作りたいんですよね。あとは蕎麦も気になってます。大豆とそばは保存もできて、栄養価も高い。近隣の大豆農家さんとそば農家さんに一緒に話を聞きに行きましょうか。

日向 行きましょう! HuuuuのR&Dが農業ってしっくりきますし、いい実践だなと。

柿次郎 長野で作ったものを東京のボーナストラックに持ってきて、「風のマルシェ」を開くとか。

重太朗 売り物にするときは、パッケージデザインを若手のデザイナーさんに頼みたいですね。そのデザインが、その人たちの名刺代わりになってほしい。今までHuuuuがやってきた以外に、いろんなコラボを農業は生みそうです。

柿次郎 めちゃめちゃいいですね。重太朗さん、これからよろしくお願いします!

構成:夜夜中さりとて
撮影:日向コイケ
編集:友光だんご


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