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学校ができる不登校予防策①小学校編

「不登校に関する調査研究協力者会議」が2021年10月6日にオンラインで開催されました。文科省のHPから、その際に配布された資料がダウンロードできます。ここでは、その配布資料の一つ「令和2年度不登校児童生徒の実態調査(概要)」のデータを元に、学校ができる「不登校の予防策」と「復帰へ向けての環境づくり」について考えていきたいと思います。

*使用する画像はすべて上記の実態調査の資料からのものです。(赤・緑のペンでの書き込みは筆者)

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学校を休み始めたきっかけ(小学生)

1.先生のこと

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この調査データから、小学生の場合、学校を休み始めるきっかけとして「先生のこと(先生と合わなかった、先生が怖かった、体罰があったなど)」が割合として一番高くなっている(29.7%)ことがわかります(①で囲んだ部分)。

小学生の不登校児童のうち約1/3は先生の対応によって学校に行きづらくなっている、と言い換えてもいいでしょう。

実際、僕が代表を務めているNPOで開催した不登校経験者座談会でも、先生の大きな声での叱責で学校や教室が嫌になったと語った生徒がいましたし、親の会でも「うちの子はクラスメイトが先生に大きな声で怒鳴られているのを聞いて、それが怖くなり学校に行かなくなりました」と語られた保護者もこれまで複数人いらっしゃいました。

また個人的な経験の話をすると、長女が小学校入学時、担任の先生の振る舞いが怖くて学校を休んだことがありました。その先生は、学校でも怖いことで有名な先生です。僕は電話で欠席理由を伝える際に「先生の対応が怖すぎて学校に行きたくないと娘が話しているので休ませます」とはっきり伝えたところ、あとから担任の先生から電話がかかってきて娘とも話し、すぐに登校できるようになりました。ただ登校への不安はしばらくあったようで2週間ほどは学校の近くまで一緒に登校してあげたのを今でも覚えています。

学級崩壊や子どもたちの騒ぎすぎを抑えるためだとは思いますが、高圧的・威圧的な態度で、無理やり子どもたちを従わせようとする先生がどの学校にも一定数存在しています。(そして、おそらく、そうした先生は、先生たちの間でも一定の強い影響力を持っているように感じます。)

2.「友達のこと(いやがらせやいじめがあった)」

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次に注目したい回答は「友達のこと(いやがらせやいじめがあった)」(②部分)です。

いじめに関しては小学校低学年の認知件数が最も多いことがデータとして明らかになっています(文科省データ)。

これは対人スキルが未熟な子どもたちがクラスという場で共に生活していく中で強いストレスを感じ、そのストレスを上手に解消できないことが大きな要因の一つだと考えられます。そして、そのストレスが「いじめ・いやがらせ」という形で行動として表出し、その対象になってしまった子どもたちが不登校という選択をしてしまっていると推測できます。

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小学校における不登校予防策

以上のことから小学校の現場でできる不登校予防策の方向性が見えてきます。

1.先生たちの対応改善

まず何より先生たちの態度・対応の改善です。先の事例でもあげたように、子どもたちへの威圧的な接し方が、多くの不登校児童生徒を生み出しています。ここを改善することで、不登校になってしまう子どもたちを少なからず学校へとどめることができます。

小学校期の子どもは落ち着きがありませんし、先生の抑制がゆるすぎると学級崩壊してしまうこともわかります。しかし「脅して従わせる」という方法は原則的に禁止し、騒がしい子は全員の前で怒鳴ったりして叱るのではなく、それぞれ個別に呼び出して別室で叱る、などの対応を徹底することが必要だと思います。(特にクラスメイトがひどく叱られているのを見て不登校になる、という子どもたちが一定数存在していることを考えると。)*1

2.ストレス対処・対人スキル訓練

次に、小学校の早い段階で具体的な対人スキルやトラブル時のコミュニケーションをトレーニングすることです。学校が多人数の集まりである以上「ストレス」それ自体をなくすことは不可能です。トラブルもなくすことはできません。しかし、多くの学校が「いじめ」や「いやがらせ」を過剰に「心の問題」に結び付ける傾向があり、道徳の授業など「心の教育」で、トラブル防止とトラブル解決を目指しすぎているように思えます。もちろん、それも重要ですが「思いやりの心」を現実の問題状況の中で具体的な行動として発動できなければ、どんなに心の教育をしたところで意味がありません。そもそも自分たちのことを考えればわかると思いますが、人がイライラしている時には「思いやりの心」など頭からふっとんでいます。なにより先生たちが「怒鳴って子どもを従わせる」という手法をとっているのだから、まぁ、思いやりもクソもないように僕には思えますが・・・「先生がうるさい子を怒鳴って威嚇して従わせることは正しい解決法だと思いますか?」という内容の道徳の授業を一度学校でされてみることをお勧めします。

話題を戻します。今の道徳教育がトラブル防止・解決法としてまったく役に立たないとはいいませんが、あまりにも身体的・感情的側面が軽視されているように思います。逆上がりの授業で例えると、「こうこうすれば逆上がりができるよ」「さかあがりのコツはこうだよ」と黒板と言葉で教えているだけの状況です。もちろん、永遠にできるようにならない。「思いやりの心」を具体的な行動として落とし込むトレーニングが必要です。アンガーマネジメントや認知行動療法など、怒りをコントロールするための具体的トレーニング法は数多く開発されてきているので、そうしたものを小学校の低学年から導入して授業でトレーニングすることが必要だろうと思います。(はい。もちろん先生たちにも導入したほうがいいと思います。)*2

小学校における予防策の提案はここまでです。次は中学校にいってみましょう。


*注1:また騒がしいわけでもなく、自分勝手に振舞っているのでもない、みんなより理解するのが遅かったり、勘違いが多かったりして、みんなと同じテンポで集団行動できない子に対して怒鳴ったりする先生が結構いるようです。先生の対応次第では、こうした子は、クラス全員から「スムーズな授業を邪魔して、先生を怒らせる奴」というポジションになり、クラスメイトからダメな奴と思われ、本人は何をするにも委縮した状態でさらに正しい判断ができなくなり、学校が嫌になることが多いです。

本来、あるべき社会はその逆のはずです。

みんなと一緒にできない人がいたら、周りが配慮して、いろいろと手伝ってあげたり、支援してあげる社会が、あるべき社会のはずです。この辺りは、目的の優先順位の変更を学校全体で行わなければうまくいかないかもしれませんが、授業のスムーズな進行以上に、子どもたちに教えるべき重要なことがあるはずです。

*注2:僕自身は「みんなが騒いで授業が進まない時に、どうすればみんなが静かにできるか。先生はその時にうるさい子たちにどう注意すればいいか。ほかの子はうるさい子にどう静かにしてもらうか。」ということ自体を話し合わせて、うるさくなったときのルールやペナルティを授業で決めておくなどの工夫もあると思います。

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もちろん、ここまで述べた予防策、また今後述べていく予防策、復帰の環境づくりなどの取り組みは、クラスなどの制度的のあり方の変革、学年や学校での先生同士の協力関係構築など、様々な改善とセットでなくてはうまくいかないと思いますが、今の状況でもできることは多いと思います。

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