熟年夫婦の時間

先日、お取引先に連れられ食事をご馳走になった。


和食のコース。

「この氷、映える〜♫」

とはしゃぐ、若手の女性社員。


恐ろしい大きさの角氷が、まるで切り立った崖の岩肌を表現する。松の木の小枝があしらわれ、そのあちこちに、お刺身が盛られていた。


氷の上に、直接刺身を乗せたら、くっつくんじゃないかと訝ったが、刻み大根の座布団がちゃんと敷かれている。


和食って美しい。


一杯目からジョッキをひと息で飲み干すなんて、紅一点、元気がいいな!

上司と取引先の社長に囲まれたこの状況で、遠慮1つない飲みっぷり、食べっぷり。


人は見かけによらないなと、華奢な体のラインを横目でなぞった。


独身女性を前に、既婚の野郎が5人。


酒気を帯び、自然と皆の会話もフランクになっていった。

おいおい、結婚やら夫婦関係やら、結構際どい話になってきたぞ。


アウェイの身、セクハラになりやしないかとハラハラして相槌を打ったが、話の中心は彼女なのだから、まあいいのか。


コイツ、男の扱いうま過ぎる!

お父さん、恐い。末恐ろしい!

コミュ力高い。おじさんの扱い上手い。仕事も責任感があるって、将来有望。


なんてことに思いを巡らせていたら、社長が、

「この間、カミさんと映画に行ってきたんやけど、やっぱ三谷幸喜はオモロイな!」と。

夕飯を食べ、日帰り温泉に連れて行って、ご機嫌だったという。


一同、

「さすが社長!愛妻家!」

やんややんやと盛り上がる。


若手ちゃん「素敵ですね!長年連れ添って、そんな夫婦になりたいです!」

なんて言われ、社長、ご機嫌ご機嫌。


「映画は便利がええんや。なにせ、『2〜3時間、カミさんと喋らんですむからな〜。向き合わんでもええし。』」


どっ!!!!!!!!


今日イチの笑いが弾ける。


若手ちゃん「社長ひど〜い!そんなオチ、要らないですよ〜」


これだから、関西人は。


いちいちオトさないと気が済まない。

おもむろに手帳を取り出し、メモを取る私。

「あれ、社長、なにしとんの?」

「はい。いい話だったので、忘れないようメモをと。」(神妙な顔)


どっ!!!!!!!!!


もう、こうなれば、なんでもウケる。


社長、きっと奥さんのこと、大好きだな。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?