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客演指揮者 秋山和慶先生インタビュー

当団は、11月27日に第二回目となる本指揮練習を行いました。
秋山先生には、練習後インタビューに応じていただきました。
今回はその模様をお送りします。

秋山和慶先生

ー2回目の練習を終えられて、北大オケの印象をお聞かせください。

秋山先生:みんな音楽を作る、携わるってことに疲れてないよね。すごい新鮮な感じでぶつかってくるから進歩につながっていくわけです。一回目(第一回本指揮練習:10/22・23)はやはりお互い全くの初対面だったということで、緊張して怖い目に遭うんじゃないかっていう顔をした子もいたりしたんだけどね。若い人たちのすごいなと思うのは、いい具合に乗って来てくれるところですね。どんどん音楽の運びがスムーズになって、今回第二回になったら明日本番でもいいんじゃないかってくらい、完成度の急激な進歩が目を見張るくらいでした。下手なプロより上手く行っちゃうんじゃないのっていうくらいね(笑)、真剣に音楽に対峙してくれるっていうのがとても感じられたのでね、どんどんやりやすくなりましたね。

ーそう言っていただけて嬉しいです。今回お話を受けていただいた経緯というのはどういうものでしたか?

僕のマネージャーから北大オケの創立100年の記念の演奏会があるけど、こういうの興味ありますかっていう話があったから、何をするのって聞いたら”第九”というから。いいんじゃないの、という感じでね。

ーマイスタージンガーは秋山先生にご提案いただいた曲ですが

よくやるのは第九とマイスタージンガーとか、(第九の前に)ベートヴェンのオーバーチュア(序曲)をやるっていうのもあるんだけど、今回はおめでたい催し物だからマイスタージンガーが組み合わせとしていいんじゃないかって思いついて提案しました。

ー川越作品については

もちろん(振るのは)初めてですね。参考にいただいたCDを聴いてみると、例えば山田耕筰さんの管弦楽曲であったり團伊玖磨さんの曲であったり、そういった一時代前の響きが(曲中に)随所に出てくるのでね。ある種懐かしさを思い起こされるような、とても親しみやすい曲だと思ったんですね。

第二回本指揮練習(11/27)の様子

作曲の技法という点でも、「祝いのために」は弾く側に変拍子のようなかなり高度な技術が必要になるよね。それを学生さんたちが短い期間でどれくらいこなせるのかなっていうのはすごく楽しみでした。

ー第九に対する先生の思いをお伺いしたいです。

第九はやはりベートーヴェンが苦労に苦労を重ねてあそこまで仕上げた大作ですよね。交響曲と合唱、4人のソリストを入れてっていうのは今までにない形だったのでね。それから、1,2,3,4楽章と順番に、まさに人間の生き様そのものを表しているみたいな。苦悩や悩み、打ちひしがれて死んじゃいたいみたいな思いに駆られる音がするところもあって。それを1つずつ乗り越えて、最終的には人類の平和を歌い上げたっていう、そういう意味で200年経っても世界中で絶やされることなく演奏される一代傑作の一つです。今回初めて弾く人もいると思うんだけど、段々弾いて慣れていくうちにベートーヴェンがどういう思いで作ったかとか(が分かっていって)、最後に喜びの歌に変わっていく、そして弾いている方も喜びに変わっていくっていう感じがね、もちろん棒を振っていてもあります。僕自身第九は400回くらいやっているんだけども、一度も全く飽きるということはないし、やるたびに新鮮な感覚を覚える、自分から感動できる、(演奏できるということに)喜びを覚える、僕にとってはそういう思いのする曲です。特に今回学生さんや若い人たち、初めて弾く人たちも混ざっていますが、今日の練習だってこの間から比べたら格段の差で、すごくいい音してたんだよね。みんな真剣に取り組んでくれて、何かいいものを作ろうっていう心意気を感じるからね、本番本当に楽しみにしています。

ー北大オケは去年が100周年の年で、コロナ禍でなければ去年第九をすることになっていたという背景があります。コロナ禍において第九をやる意義というのはどんなところにあると思いますか。

この三年間、世の中の人みんなが痛い目にあっているわけです。何とかそれに打ち勝って、もう一度喜びの歌を心から歌えるときが来たらいいなって思いますよね。

ー秋山先生は1986年から12年間、札幌交響楽団(以下札響)の指揮者を務められました(首席客演指揮者 1986年 - 1988年、ミュージックアドバイザー・首席指揮者 1988年 - 1998年)が、札幌の町、そしてこのKitaraというホールは先生にとってどんな場所ですか?

札響の指揮者になる前はカナダのバンクーバーというところでやっていて、そこも北の町だからなんだか雰囲気が(札幌と)共通点があるわけね。だから全く見ず知らずの土地に来たかなという感じが全然しなくて。札響のとてものびのびしたオケだから、札幌ではとても楽しい10年間を過ごしました。

札幌コンサートホールKitara

Kitaraができる前から(札響の指揮者だった)だったものだから、当時の札幌市長さんにみんなと一緒に「演奏会場を作ってください」っていうのを陳情しに行ってね。当時はKitaraのような音響の優れたホールがなかったもので。そしたら当時の札幌市長さんもすごく理解のある方で、どんどん話が進んで。僕も工事中の建物の中にヘルメット被って何回も見に行って、ここはこんな感じの方がいいですねって設計士さんとお話したりして。それで完成して、Kitaraの完成記念公演の曲が第九だったんです。もう涙が出るほど嬉しい第九をやらせてもらったっていう思いもこの北海道札幌、そしてKitaraにはあります。

ー最後に皆さんへのメッセージをお願いします。

今回、北大オケ100周年記念ということで、ベートーヴェンの第九という素晴らしい曲をさせてもらえることになって本当に光栄です。若い学生たちのオーケストラは、本当に真剣に音楽を楽しんで、対峙して、ベートーヴェンの思いを現代につなげるために一生懸命練習を重ねてきておりますので、是非とも見ていただきたいと心から思っております。何卒よろしくお願いします。

ーありがとうございました。

2022年11月27日
札幌コンサートホールKitara 大リハーサル室にて

【演奏会情報】
第144回定期演奏会 創団100周年記念コンサート

日時:12/18(日) 16:15開場 17:00開演
場所:札幌コンサートホールKitara 大ホール
曲目:ベートーヴェン/交響曲第九番 ニ短調 「合唱付き」 作品125
   ワーグナー/ニュルンベルクのマイスタージンガーより第一幕への前奏曲
   川越守/祝いのために
指揮:秋山和慶 氏


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