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ファゴットパートより「あと3日!」

北大オケ・ファゴットパートです。春の定期演奏会まであと3日ですが、当日は皆様によい演奏をお聞かせできるよう、練習に励んでいます。

ところで、今回この文章を書いているファゴットのトップは昨年の100周年演奏会でも同じ立場でnoteを執筆したので、正直また同じようなことを書いても良い記事にならないよなあ……と悩みながら原稿に向き合っています。だいたい、「楽器の説明」とか一度したら同じことを書いてもつまらないですし。パート紹介に関しては新一年生が加わってきたくらいしか新たに書くことがありません。というかせっかくなら去年がんばったものを読んでほしい…苦笑

そんなわけで、どんなことについて書こうかと迷っていたとき、今回指揮をしていただいている中山耕一先生をタクシーでお送りする機会がありました。そうしたら、自分が中学のとき「この人の音すごい!」と思った日本ファゴット界のレジェンド、岡崎耕治先生のお話を伺えることがありました。なんでも、学生時代の岡崎先生のことを中山先生はご存知とのことで、ほんとうに驚きました。もちろん、中山先生自身がすごい先生なので交流があることはまったく不思議なことではないのですが。
岡崎耕治先生は1978年から2009年まで長年NHK交響楽団にて主席ファゴット奏者を務めてきた日本を代表するファゴット奏者で、武蔵野音大の講師にも在籍して後進のファゴット奏者にも多くの大きな影響を与えてきたとされています。現役の音大生でもいまだに憧れのファゴット奏者として岡崎先生を挙げる人もいて(↓参考動画↓)、僕自身岡崎先生のCDを聴き、武蔵野音大の退官記念演奏会はチケットを買って行きました(当時の皇后陛下がいらっしゃってびっくりしたのを未だに覚えています)。岡崎先生のファゴットの特徴としては、なによりもその甘美な音色ではないでしょうか。ファゴットという楽器がもつ独特な音色の魅力を最大に引き出している方だと思います。色っぽさといってもただなよなよした音なわけではなく、音質は重心の乗ったしっかりとしたもので、(プロなので当然ですが)基礎のしっかりとした奏者なのだということを常に感じさせられ、私は岡崎さんの音を聴くと練習しなきゃという気分になります。
中山先生はスイスで学び国内外を問わず活躍されたフルーティストであり、元より勉強にしようと思って曲乗りしていたのですが、大好きな岡崎先生の学生時代をご存知というお話をきき、自分の中の中山先生に対する「レジェンドみ」のようなものが増し、なおさら張り切っている次第です。張り切り過ぎて(昨年の100周年演奏会のように)体調を崩さないように気をつけます……。

参考動画

さて、今回の演奏会における曲目を改めて示すと、以下の通りです。

【曲目】
エクトル・ベルリオーズ/大序曲「リア王」作品4
川越守/綺想曲第2番
マニュエル・デ・ファリャ/バレエ音楽「三角帽子」より第1組曲、第2組曲
セルゲイ・ラフマニノフ/交響曲第2番ホ短調作品27

メインとして演奏するのはラフマニノフの交響曲第2番ですが、どうせファゴットが書かなくてもラフマニノフの良さは他の楽器が様々な観点から書いてくれると思っています。実はこの記事の筆者は今回希望によりサブメインとして演奏するバレエ音楽「三角帽子」に曲乗りをしているので、この記事の残りは「三角帽子」の魅力の紹介に費やそうかと思います。

バレエ音楽「三角帽子」ってどんな曲?
 スペインの偉大な作曲家、ファリャの代表作です。どうやらスペインの紙幣にはかつてファリャの肖像画が印刷されていたようですね。バレエの舞台・衣装デザインには同じくスペインの偉大な画家で、当時既にキュビズムに開眼していたパブロ・ピカソが起用されています。ちなみにアメリカ初演の時は舞台・衣装をサルバドール・ダリが担当していて、「スペイン」という国が現代藝術という分野に輩出した熱を音楽の側面から感じられる作品といえるかもしれません。
 三角帽子のあらすじは、粉屋の美人な女房に代官が横恋慕し、代官は権力を悪用して粉屋を投獄する間に女房に言い寄りますが思うようにいかず、なんやかんやあって代官は人々にしばかれ、粉屋と女房は愛をより強固にして一件落着、という話。題名の「三角帽子」は代官が着用しているトレードマークであり、いわば権力の象徴。権力をかさに着ながらも、粉屋や女房にたくみにかわされ、最後に大恥をかいてしばかれる代官の情けない姿には笑えてしまいますが、ここには同時に「反権力」というすこし真剣なテーマも射程にいれていると考えることができます。
 場面転換がある作品なので、その表現にも魂を宿していかないといけないのですが、特に要所要所にあるソロについては、奏者たちは気を引き締めて演奏する必要があるでしょう。イングリッシュホルン・オーボエ・ホルンなど、ぜひとも耳を傾けてほしいソロがよりどりみどりですが、中でもファゴットには「代官の踊り」とも言われるソロがあり、粉屋の女房に近づいて自分のものにしてやろうと言う代官の様子やアピールのための踊りを表しています。最高の演奏ができるように、がんばります!

昨年の卒業演奏会での写真 
うつっている8人全員が曲乗りしています!

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