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#2 インド・コルカタ 世界最悪の風俗街「ソナガチ」を歩く その1

ことわり

はじめに宣言するが、筆者はアジア地域における未成年売春には反対の立場である。この問題を継続的に考え、すべての未成年売春の根絶を願うものである。

ソナガチとは


さて、インドはコルカタ、ソナガチである。
ソナガチはマイブームで、今回のインド旅の目玉の一つだ。
「アジア最大の風俗街」とか、「世界最悪の風俗街」と言われているような場所である。気づけば、行ってみたい街としてここ1〜2年くらい、常に頭の片隅にあった。ニューデリーのGBロードと並んで、"望まぬ売春婦"が多いことで、悪名高い。
(余談だが、夜に大久保公園を歩いていると、日本だってそうじゃないの? と最近は思う。しかし彼女たちの場合は、大なり小なり、自らに責がある場合が多い。つまり、ソナガチと大久保公園では”望まぬ売春婦”という点は同じだが、問題の種類が全く違う。大久保は売掛。ソナガチは人身売買)

「ソナガチでは、ネパールとかバングラとかインドの田舎からさらわれてきた女性が、セックスワーカーとして働かされている」
この噂の真偽を確かめたい、というのは建前で、単純に、行ってみたかったのだ。行って、見て、聞く。そして考える。所詮はただの、野次馬ではあるが、どうもこの問題、頭から離れない。とにもかくにも見て聞いて、判断しようと言うのが本当のところだ。

ところがこのソナガチ、一筋縄ではいかない。
大阪の飛田新地のように、ぶらりと歩いて、なんてことは難しそうだ。
先達のソナガチ探訪記を漁ると、「撮影したと勘違いされて首を絞められた」だの「客として行ったら10歳くらいの女の子が出てきて胸糞悪かった」だの、なかなかに危なかったりする。

世界最悪の風俗街を歩いてみたい、という矛を右手に、でも、トラブルには巻き込まれたくない、という盾を左手に、とうとうコルカタまでやって来てしまった。

正直にいうと、ソナガチを目の前にして、ビビってしまっていた。とはいえ、金や時間など、諸々を犠牲にしてやってきた手前、「いやー、目の前まで来たんですけど、ビビっちゃって、行けませんでした」では済まない。

ということで、ホテルの屋上でタバコを吸いながら、覚悟を決める。
持ち物は、パスポートと、3000ルピー(約5000円)程度の現金、そして、メガネ型のカメラ。
本音を言えばパスポートすら持っていきたくなかったが、トラブルに巻き込まれた時に身分が証明できないとまずい。現金というのは、脅された時に身の安全を確保する目的で携帯する。彼らもそれなりの収穫があれば、のんきな外国人をわざわざ傷つける必要はないはずだ。
そして、メガネ型のカメラ。ツルのところに小さなスイッチがあって、これをおすと録画ができる、という代物だ。出国する3日前に、秋葉原まで行って、慌てて買ってきたので品質についてはわからない。ただ一つ。この手の怪しいガジェットを扱う裏秋葉原の店を、僕はそこそこ信用している。頼むぞ。

水、メガネ型カメラ、現金。
後パスポート。荷物はこれだけ。

コルカタの街の様子

これでよく事故が起きないな、と思っていたが、そんなことない。日本の50倍ほど起きているそう。
情報引用:東洋経済オンライン
写真は筆者撮影

ソナガチへ向かったのは滞在4日目の夕方である。
実は初日の夜も行ったのだが、あまりにも人がごった返していたせいか、ポン引きに捕まることはなかった。サリーをまとった娼婦らしき女性はちらほらいたが、ポン引きが見つからないので探したほどだ。
実際、空気が張り詰めた治安の悪い街、というよりかは、誰が歩いていたって構わないという新宿・歌舞伎町のようなおおらかさを感じた。娼婦たちが佇む中を子連れや、友達同士がワイワイ、歩いていたので肩透かしを食らった。
夜ではなく、まだ明るいうちに再チャレンジしたのは、単純に、ポン引きを見つける為だ。いや、正確には、ポン引きにみつけてもらう為、か。

ホテルを出て、コルカタのションベン臭い街をゆく。ちなみに、ションベン臭いと思ったら、おじさん二人並んで、街中堂々、本当にしていた。吹きっ晒しのトイレなのだろう、コンクリに向けて。

人、車、バイクでごった返す街・コルカタ。年に一度の、最大の祭り「ドゥルガ・プージャー」を控えているせいか、どこを歩いても巨大な竹の骨組が見られた。ドゥルガとはヒンドゥー世界の女神で、アスラの悪神を退けた、「強い女性」の象徴でもある。そのドゥルガを祀るために、巨大なドゥルガ像を作るのだ。
残念ながら、自前で用意できる画像がない。「日本・バングラデシュ文化交流会」が運用するnoteページが素晴らしいので、リンクを掲載しておく。
引用:JBCEA

このドゥルガ・プージャーと今回の目当て、ソナガチの赤線地域も実は関連がある。ソナガチのど真ん中にオフィスを構える、インドのセクシャルワーカーのための団体「Durbar Mahil Samanwaya Committee(ダルバール・マヒル・サマンワヤ・コミュッティ)」によると、ソナガチの風俗街も、この祭りの成功に一役買っているそうだ。ソナガチとドゥルガ・プージャーの関わりは興味深いが、補足で差し込むにはボリューミーなので、別記事#3で記載することにする。

いよいよソナガチへ

前置きが長くなってしまったが、いよいよソナガチへ。
ちなみにGoogle Map上とは少しズレた位置に風俗街はある。
地下鉄のGirish Park駅と、Shovabazar Sutanuti駅の中間に位置している。

実際はGirish Park駅とShovabazar Sutanuti駅の中間くらいの場所にある。

下図は地図をさらに拡大したものだが、ダーガチャラン・マイトラ・ストリートあたりが最も立ちんぼが多かった。Durbar Mahila Smanwaya Committeeのオフィスを目指すと自然と辿り着ける。

さて街の様子だが、そんなものを観察する前に、早速声をかけられた。
30代前半くらいの、サリーを着た女性だ。肌が濃いのでドラヴィダ系だと思われるが、見た目は綺麗である。てっきりこの女性が営業をかけて来たのかと思ったが、どうも様子が違う。
「Sister?」
というのである。そう言いながら、手を使って、背が低いことをアピールする。
すぐにわかった。Childということだろう。この女性はポン引きだったのだ。このすぐ後に僕を誘ったポン引きのお兄ちゃんもそうだったが、彼らはとにかく英語がまずい。「Sister」「2,000※」と言うばかりである。

※少女を買うのに必要な金額である。べらぼうに高い金ではなかったが、具体的に幾らかは忘れてしまった。確か、2,000ルピーだった。

当然、ついて行く。もちろん、少女を買うつもりはない※。
ポン引きの女性は、僕を誘いながら、おもむろにスマートフォンで電話をかける。ヒンドゥー語かベンガル語かわからないが、おそらく、東洋人を案内していいか、聞いているのだろう。実際、電話を終えると、僕向けて「No」と言った。許可が出なかったと思われる。
僕もあっさりと引き下がる。別に買うつもりはないのだ。特に、救えもしない少女を目にして引き下がるだけと言うのも辛い。

※アジアの未成年売春と日本人
割と最近、ソナガチではないが、ラオスで日本人の医師が未成年買春で逮捕されている。未成年買春をするつもりはなくても、アジアで女を買おうとしたら、明らかな未成年が出てくる、とはよくある話である。筆者は、すべての売春を否定するわけではないが、未成年売春はいただけない。ダメなものはダメ。
引用:タイランドハイパーリンクス

さて、気を取り直して、と言う間もなく、すぐにまたポン引きに話しかけられる。柔道の乱取りのようだ。あまりにもひっきりなしに話しかけられるので、反射的に断ってしまう(日本でも海外でも、僕はそういう勧誘について行ったことがない)。
いやいや、それだと意味がない。たった数十秒の間に10人近くから声をかけられたが、そのうちの一人について行くことにした。
理由は、背が低いからだ。率直に言ってしまうと、何か揉め事があった時に、勝てそうな相手だったからだ。ニューデリーのGBロードに行ったyoutuberが、ムキムキマッチョが出てきて売春宿に監禁された、なんて話をしていたが、とてもそんな風ではない。
どうでもいいが、このポン引き、サッカー選手の長友佑都選手に顔が似ていたので、ナガトモと仮称する。

さて、次回はこのナガトモに連れられて見た街と売春宿の様子を書こうと思う。
今日のところはこの辺で。

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