DENMARK2019-5 アップサイクル建築

アップサイクル建築

今回は、Lemdager Groupが手掛けている現場を訪問しました。

町じゅうを環境負荷の少ない建物へと変えていく中で、当然ですが、その省エネ水準を上げるために
リニューアルが必要な建物があります。
それらは長期目線でのコストバランスや環境負荷を考慮して次のステップに進むので、安易な改修や、解体、建て替えという道をたどりません。

しかしその中でも、総合的な判断により解体せざるを得ないマンションもまだ多く残っています。
そこで、もし解体するとなっても、ただの産業廃棄物とするのではなく、リユースしていこうという取り組みが注目されています。

再生する建材

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写真の建物には、古いコンクリートを破砕してそれを骨材にした再生コンクリートや、取り外されたガラスを利用し、二重窓としてエネルギー効率を上げた窓、メーカーで商品化されなかったフローリングの廃材などが使われていました。

レンガのファサード

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1960年代以降のモルタルは接着力が強くレンガをバラバラに分解しづらいため、建物解体時に、古い建物から1m×1mの壁を切り取るという発想です。
切り取られた1×1のピースは、ユトランドの工場での裏側にモルタルを塗り、断熱材もセットして、現場に戻されます。
下から順に積み上げるようにして仕上げられるためとても独創的な、パッチワークのようなエレベーションとなります。

また、どこで廃レンガが出るかはコンペの時点ではわかっておらず、廃レンガが見つかるごとに下から積み上げていくために、外観レンガのグラデーションは、下から流れをもって変化しているそうです。

廃材供給

木の部分は、メトロ工事からの廃材を焼いた板張りで、内部は、フローリングメーカーDinesenとパートナーシップを結び、製造段階で出る廃フローリングを買い取り、内装材として再生しています。

こうした廃材サプライもコンスタントに必要になるため、「安定した廃材の供給」という、一見矛盾するような表現になりますが、これが、今後のビジネスとしての継続性についても考えられていると思います。

建物を残すにも限界があるものだってあります。
だからこそ、発想を変えて、更新しやすさ、解体しやすさという視点から意匠を選択することも今後は必要になってくるのだと思います。

街づくり

炭素固定された木を使うことが有効であるという考えが浸透しており、空港横の工事現場で使われていた足場も木でした。
また、今回お話を伺った現場でも、近くのメトロの計画の、本来であれば廃材になるような材料が、次の現場に流れることで、運送距離の短縮によるCO2削減が図られていました。

部分的にそれぞれの業者が開発を進めると、新しい法律、新しい価値観によって、「最新」になっているのかもしれませんが、街全体の流れが途切れていると、引きで見るとカオスな美観になっていたり、新しい流れができたにも関わらず当然のように交通渋滞が起こったり、個々で動くことによる材料、処分のロスなども実はたくさんあるはずです。

日本とデンマークでは立地環境もまったく異なるため、日本は日本らしい仕組みが必要ではありますが、デンマークでは自身の街や人口規模に最適な方法を、トライしながら答えに近づいているように見えました。
作戦を練りすぎていても動きは鈍ります。
道を正しながら前に進む勇気は必要です。

2019.5.31

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