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隣町へ小旅行

隣町の温泉に行って来た。しかも日帰りではなく、泊まりで。
妻も疲労が溜まっていたようだし、わたしもたまには旅行に行きたいと思っていた。
かといって、都会に行きたいという感じでもなかったし、遠出をするとお金もかかる。
そこで、隣町の小さな温泉宿に出かけることにしたのだ。

隣町なら、わざわざ泊まらなくてもいい気がしたが、あえて近場に泊まるというのもなんだか贅沢。しかも車で約一時間。旅費も大してかからないし、疲れもそれほど出ないだろう。

なにより、自然に囲まれた静かな場所でリラックス。いいじゃないか!

いつも通りの週末の朝、スーパーに買い物に行く感覚で旅行に出かけた。
なんだか新鮮なワクワク感だ。
車内でくだらない話をしていたら、あっという間に隣町へ到着。
住んでいる町よりもずっと小さな町だが、それでも生活に必要なものは必要最低限揃っている。
スーパーがあるエリアには、車のディーラーや100円ショップ、ドラッグストア、家電量販店、回転寿司、書店などが一通り揃っていて、逆にコンパクトにまとまっている感じがした。

チェックインの時間になり、温泉宿へ。
小さな温泉宿だが、温泉と食事が魅力だ。
フロントで「夕食の時間は何時がいいですか?」と聞かれ、18時半と答えると、あいにく団体客がその時間利用するとのことで、19時にしてもらった。

夕食まで時間があるので、まずは温泉へ。
ここは日帰り入浴もできる宿なので、大浴場にはすでに地元の人と思しきお客さんが入っていた。

で……この人たちの声が結構うるさい。
楽しそうなのはいいが、声が大浴場内に反響して、もう騒音レベル。
脱衣所に「黙浴」と貼り紙がしてあった気がしたが、まあ仕方ないか……と諦めモードのわたし。

でも、こちらはせっかくの小旅行。
癒されに来ている。できれば静かに温泉に浸かりたい。
源泉のちょろちょろという音を聞いてのんびり過ごしたいのだ。

しかし現実は、「わーはっは、わーはっは」の宴会場みたいな状況。
顔なじみのオジ(イ)様方が、楽しそうに親睦を深めていた。
わたしの心の声は、「も~、うるさーい! 静かにしろー! 黙浴って貼り紙を見てないのか~!」と叫んでいるが、もちろんそんなことは口にできない。

それより、いつまでもイライラしていたらせっかくの温泉旅行が台無しだと思い、目を瞑って、深く呼吸をしてみる。マインドフルネスだと己に言い聞かせながら。

ところが、わたしの隣に小さな子どもを連れた親子が入って来て、幼児は「いーち、にーい、さーん、しーい……」と数を数え始めたではないか。
お父さんが「20」数えてと言ったので、素直にそれに従っている子ども。

そんなわけで、マインドフルネスにも失敗したわたしは、これは一旦部屋に戻って、また夜に入りに来ようと切り替えることにした。
部屋に戻り、少々妻に愚痴をこぼしたら次第に気持ちは落ち着き、夕食まではそれぞれ読書タイム。
気がつくとウトウトしていたが、これもまた贅沢な時間であった。

さて、いよいよ待ちに待った夕食の時間だ。
食堂に向かうと、なにやら賑やかな声が聞こえてくるではないか。
あ、そっか、団体客か!
嫌な予感がする。
中高生くらいの男女とその親(もしくは先生?)の集団が、かなり盛り上がっているではないか。
その賑わいっぷりは、先程の大浴場どころではなかった。

ここでもわたしは、「あー、うるさい」と心がざわつき始めた。
でも注意するのも違う。
みんながみんな、この宿で思い思いに楽しんでいるのだから(と、自分に言い聞かせる)。
でも、それにしてもうるさくないかい?
せっかくの温泉旅館なのにぃ。きぃー。
大きな楽しみであった温泉と食事が、騒音を伴うとは。うー、やだやだ。
静かに楽しみたいのにーーー!

でも仕方ない、と、結局は我慢するしかないわけで。
わたしたちの隣の席にいた老夫婦は、早めに食事を終えて部屋に戻ったようだし、他の(団体客以外の)客も、気にはなっているようだが黙々と食事をとっていた。
わたしがノイズに弱いだけなのか?
いやー、でも、うるさいってば!
その攻防がしばらく心の中で行われたが、結局、食べ終わっても団体客の宴会が終わることはなく、諦めて再び温泉に行くことに。

夜の九時。
さすがに大浴場は静かだった。
日帰り客もいない大浴場には、宿泊客が3人程度。
これだよ、これ。この雰囲気だよ。
源泉に浸かりながら、今度こそリラックス。

……と思っていたら、浴槽の隣にあったサウナから一人の男性が出てきて、そのままわたしが入っている浴槽にザバーンと容赦ない勢いで入って来たではないか!
しかも、どこかご満悦の様子。気持ちがいいのだろう。

っておーい、人がようやくお風呂でまったりできたっていうのに。
あ~、もう、やだやだ。

でもまあ、人それぞれの入浴の仕方があるし、わたしだけが絶対正しいとも限らない。
……と、先程と同様、頑張って自分を律するが、なんだかとても悔しい。


――世の中、多様化が叫ばれている(急な展開)。
多様化とは、いろんな価値感を持った人をお互いに尊重しあって生活するということだっけ?
だとすると、わたしは、団体客の賑やかさも、わいわいと楽しくお風呂に入るオジ(イ)様方にも、寛容にならなければいけないのか。

こういうときは、どうやって気持ちを切り替えたらいいのだろう。
そうか! 良かった出来事を少しでも思い出すのだ!(ガンバレ、俺!)

いろいろあったが、ご飯は美味しかったし、温泉は気持ち良かったじゃないか!
あとはあとは……そうだ!
次の日、この町の図書館に行ってみたら、新刊本や人気の本が借りられずに本棚に何冊も並んでいたではないか。
そうだそうだ、この町の図書館、気に入ったんだった!
次に来ることがあったら、この〝静かで〟人気本の在庫も豊富なこの図書館で時間を潰すのもいいかもしれない。

嫌なことって記憶に残りやすいけど、いいこともあったじゃないか。
図書館以外にも、美味しいコーヒーショップにも寄れたし、どこかで食べたソフトクリームは最高に濃厚でうまかったし!

ノイズだけが気になった隣町への小旅行。
だけど今回、近場にプチ旅行に行くのっていいかも! と思えたのは収穫であった。
日常を離れて気分転換するには、なにも都会へ行かなくても、遠出しなくてもいいのだ。

次回は、別の町に行ってみようかな。
その際には、団体客がいるかどうかの確認は必要か?
いや、耳栓を持参して行けばいいのか。
ブルートゥースイヤホンを持っていくっていう手もあるか。
万全を期して、望む所存である。

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