【無添加ペットフードの罠】

「無添加」表記厳格化

人間用加工食品に対して、消費者庁が今年の3月30日から、表記の厳格化をスタートさせました。
要は、そうやすやすと無添加表記させないための施策です。
これの背景は、一部の消費者の間でやたらと無添加がもてはやされてしまい、健康に寄与するべき添加物でさえ悪者のように誤認する方がいることのようです。
間違えて欲しくないのですが、添加物は必要です。「有害な」添加物はもちろん不要ですが、添加物があるから我々は安全や健康が保てるという側面があります。

ペットフードには適用されるか

ペットフードの表記等に関する規定は基本的に消費者庁でなく農水省管轄のペットフード安全法です。
こちらの表記に関する規定は残念ながら人間用よりはるかに雑で、検査を経なくとも「総合栄養食」や「有機原料使用」といった品質を優良と誤認させ得る表記がやろうと思えば可能です。
簡単に言うと、特に根拠がなくても「うちの商品めちゃめちゃ健康で優良なんですよ!」とも取れる表記を勝手に出来る状況にある。
まぁペットフードといえど、消費者庁に突っ込まれたら説明責任を果たさねばならないので、そこまでの誇大広告を打つには勇気がいるだろうが、、、
そういう事情もあって、僕はペットフードの「無添加」や「有機原料」という表記はさして気にしていません。
僕の生産するペットフードは野生のエゾシカを、とにかく安全に加工するものになる予定ですので、当然無添加になる訳ですが、その辺りは当たり前のことなので、別段パッケージに表記するものでもないかと考えています。
エゾシカは無添加で安全!という広告を見ると、本当に精査しているのだろうか?また、本当に無添加=安全なのだろうか?と、獣医師としてやや疑問に思う事もあります。

有機JASマークは?

一方、有機JASマークを付けている食品の信頼度は高いと感じます。
詳しく知りたい方はこのPDFの海をさまよって下さい↓

僕は必要なところだけ読みましたが、自力で認証を取るにはなかなかの苦労が予想されます。
※有機JASの認定を取ろうとしている農家さんにお話を聞きに行ったこともあるのですが、とかく大変とのこと。

かなり厳しい基準をクリアしているだけに、僕はこのマークの信頼度は高いと考えるわけです。

エゾシカは無農薬か?

そんな中、野生のエゾシカが無農薬と考える方が多いようです。
ただしこれは恐らく間違いです。
残留する農薬は家畜に比べ少ないでしょうが、鹿達も農薬は確実に摂取していると言えます。里に下りて来て牧草や農作物を食べ荒らしている、という被害が全国で聞かれているのは皆さんも知っての通り。
つまりこの際、農薬は確実に摂取することになります。

ただし前述の通り、牛などに比べればその摂取量は十分低いと言えるはずですので、特段気にすることでは無いかも知れません。
しかし、タイミングによっては高濃度に農薬が散布された直後の牧草を大量に摂食している個体もいるので注意は必要です。

無農薬エゾシカはどこに?

僕はそもそも農薬が悪だとは考えていません。必要な農薬は必要量使うべきだと考えています。
ただ、世の中には無農薬の畜産物を食べたいと考える方が一定数いて、その考えも理解できます。無農薬で農作物を育てると一般的に収量は減る傾向にあるので、重量当たりの単価は上がりますが、その経済的余裕がある方は選択肢の一つに無農薬食品があって良いと思いますし、ペットフードにおけるそのニーズには応えたいと思っています。

では無農薬エゾシカはどこにいるのでしょうか?
結論は「時期によっては無農薬に近いエゾシカが獲れる場所がある」です。

エゾシカには季節ごとの動きがありまして、農薬を摂取する機会が多い時期とほぼ摂取しない時期があります。
北海道の冬は一面雪に覆われ、農薬散布等ないので、当然農薬の摂取量は一気に減ります。
一方、春は牧草を多く食べるので農薬の摂取量は多くなるでしょう。
しかし実は農家さんごとに農薬散布の時期はまちまちです。農家さんとよくお話をして、農薬散布をする時期を聞いておけば、農薬を多く摂取する前にエゾシカを獲ることは可能です。
また、実は春になっても里に下りず、山の中で笹や雑草等を食べているストイックなエゾシカも少数存在します。こちらは基本的に僕の住むエリアでは獲ることが出来ない(猟期の問題)のですが、真に無農薬なエゾシカと言えるかもしれませんね。

このように、季節や個体ごとに、農薬摂取量というのはまちまちで、それを良く見極めて獲れば、無農薬に近いエゾシカ肉を提供できるかもしれません。

Hunting Villageではそのようなエゾシカペットフードを別途ラインナップするのも良いな、と考えています。
いずれにせようちの商品は、いつ、何処で、誰が獲ったエゾシカなのかをオープンにし、その個体が食べていたご飯等も開示出来るようにしたいと考えています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?