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【トライプ考察➁】

トライプの魅力

前回の記事で、鹿の一胃は野生においてはそこまで優先的に食べられる訳では無さそう。というお話をしました。

ただそれでも確実に食われます。一胃の内容物は残って乾燥しているのを何度も見ていますが、一胃そのものが残っているのは見たことがありません。死にたてほやほやだろうなという鹿を見ても、すでに抜かれていることがほとんどです。
では、第1胃等は何故野生動物を惹きつけるのか。

一つには、構造上お腹の中の空間(腹腔)の大半を占めるほど巨大なので、単に動物の歯が一番届きやすいというのも原因かもしれない。
前回の記事で書いたアクセスのしやすさと言うやつです。

魅力の正体は香り?


ただ、僕が最も有力視している原因は香りです。
一胃という臓器は、血の香りと言うより当然消化物の香りの方が圧倒的に強いのですが、第一、二胃と言うのは、特に揮発性脂肪酸(VFA)という産物が出る場所なのです。VFAは酢酸、プロピオン酸、酪酸のことで、反芻獣にとってはとっても大切な栄養ですが、犬にとっては別に栄養ではありません。


でも実はこのVFA、犬の探査能力に深く関わる香りなのです。人間の体臭に含まれるものだそうで、警察犬のトレーニングに使われる香りもこの類の香りを利用するそうです。


とにかくイヌ科の動物はこの匂いを感知する能力に長けているのです。
つまり、ワンコ達にとってはこれが美味しいと言うより、これを目がけて食料(動物の死骸)を探すので、結果的に一番に食べてしまう=嗜好性が高い、という構造なのでは無いでしょうか。

余談

これから話すことは根拠のない仮説に過ぎませんが、VFAの香りを発する臓器をサッサと片付けると言う事は、匂いの元を減らす行為ですから、野生動物的にはこれからその死骸に群がってくる競合相手を減らすという意味でも大事な行程だったのかも知れませんね。

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