地球外生命体はみつかるのか?〈勝手に図書館の本を紹介〉

 会員のW辺です。

 今回紹介する書籍は『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』(スティーヴン・ウェッブ)です。

 内容は、あの有名な「フェルミのパラドックス」、すなわち"概算によればこの宇宙には多くの文明が存在するはずなのに、なぜ地球に接触してきていないのか?"という問題について、ジョーク的なものから生物学的、物理学的に真面目に考えられたものまで、75の答え(仮説)を紹介するものです。一日一説読めば75日(2ヶ月半)楽しめますが、面白いのでついつい読みすぎてしまうかも。

 この中からいくつか仮説を紹介してみます。

解1 みんなもう来ていて、ハンガリー人と名乗っている

 マンハッタン計画の時期に物理学者の間で話されていたジョークです。

 当時のハンガリー出身の科学者には、ジョン・フォン・ノイマンに代表される並外れた地球人とはとても思えない"天才"が多くいたことに由来されるようです。この考え方には(というかほぼ全ての仮説で)地球に訪れる生命体は何らかの意味で我々人類より"知性"が優れているという思想が存在します。この思想は単純ですがかなり興味深く感じます。

解9 プラネタリウム仮説

 "我々が存在しているこの世界は、実はこの宇宙に他の知的生命体がいないという幻想を与えるためにコンピュータによってシミュレーションされたものではないか?"という説です。「シミュレーション仮説」にも近いものを感じます。

 VR技術の発展は目覚ましく、現在では相当高度なものも出てきています。しかし、それは未だ簡素化された"アニメ的世界"の中でのこと。各物理定数を定義し、法則に矛盾がないように各オブジェクトを動かし、電子顕微鏡による原子レベルの観測や、電波望遠鏡による光年レベルの観測にも耐えられるシミュレーションを実行するのにはどれほどのリソースが必要になるのでしょうか?また、それが実現されていたとしたらどのようにシミュレーションが破綻している"矛盾点"を見つければよいのでしょうか?

解11 星はあまりにも遠い
解12 こちらまで来るだけの時間がまだ経っていない

 これらは地球とその他の文明の距離が遠く、現状の移動手段ではまだまだ地球に到達するのに時間がかかるという説です。

 現状の移動手段では光速に迫るどころかその何分の一の速度さえも出すことができません。そんな調子で旅しようとすると果たして幾年かかるのでしょうか……。もし光速にせまる技術が開発されたとして、やっぱり旅するには百年単位で時間がかかります。そして現状では光速を越える技術はまだ実現性が低い……。しかし、この仮説には希望があります。それはつまり"いつか"は接触してくるであろうということ。それが"いつか"はわかりませんが、はたしてどれぐらい時間がかかるのでしょうか。

解25 あちらは信号を送っているが、その聴き方がわからない

 もし地球外文明が他所に信号を送っているとしましょう。それが地球まで届いているとしてどのように観測すればよいのでしょうか?

 まず方向を特定し、種別(電波なのか、粒子なのか、重力波なのか、……)を特定し、周波数を特定し、……とするべきことはたくさんあります。現在でも電波を利用した探査は盛んに行われていますがその全てをカバーしているとは言えません。そして探査されてない手法で信号が送られてきていたとしたら、現在でもその信号は人類に観測されないまま垂れ流しになっています。

解50 無数のETC(地球外文明)が存在するが地球からの粒子の地平内では地球人だけ

 電波(光)は速い。ただ、光速がどれだけ大きくても有限の速度である以上、光が届く範囲内のものしか観測できないという観測限界の粒子の地平が存在します。そしてその粒子の地平より外にあるものはどれだけ頑張っても(現状の光(電波)による観測では)見つけることができません。当然文明や生命体があってもそこからの信号は受信できませんし、こちらから信号を送ることもできません。

解64 生命はめったに誕生しない

 地球みたいな星が存在したとしても、そこに生命が誕生する可能性は限りなく低く生命は我々しか存在しないという仮説です。

 現在でも生命の起源はわかっていません。無機物だらけの原子の海からまずアミノ酸ができて、そこからさらにDNAができて、……という展開にはある種の"奇跡"にも思えますがどうでしょうか?

解70 人類レベルの知能はめったにない

 もし別の天体で生命が誕生して進化したとして人類レベル(またはそれを超える)の知能を備えるほどに到達するのでしょうか。ただ、この疑問には"知能の序列が存在する"という前提があるのですが、それは正しいのかという新たな疑問が生まれます。

 例えば地球上に生息している個々の動物とヒトを比較したとき、ヒトにできて動物にできないものも多くありますが、反対に動物にできてヒトにできないものももちろんあります。はたして宇宙を旅することは人類と同じような知能がないとできないのでしょうか?仮に地球外生命体が地球に到達したとして、"それ"があまりにもヒトと形質がちがった場合、我々は知能や知性があると判断できるのでしょうか?そもそもそれが"生命体"だと判断できるのでしょうか?どのように判断すればよいのでしょうか?


 ちなみに私個人の意見としては、0より大きく1より充分小さい数をεとして

遠すぎる(解11+解12):動物園シナリオ(解8):シミュレーション仮説(解9)
=1-ε:ε-ε^2:ε^2

という感じです。

 もし地球外生命体の存在が確認されるとしても、最初は特異な信号が検知されるか、『誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選』収録の「恒星間メテオロイド」(野尻抱介)のような生物?を介さない接触が妥当な所だろうなと思っていたら、先日米国防総省が未確認飛行物体(UFO)のようなものを捉えた映像を公開したというニュースが流れてきました。

 果たして地球外生命体の探査に関する一歩となるのでしょうか?夢は広がります。(念のため、実際は"正体不明のものが存在した"というだけで、それが直ちに"地球外生命体"のものだとはとてもとても言えません。未だ夢は夢のまま。)

今回取り上げた書籍(大学図書館へのリンク付き)

『広い宇宙に地球人しか見当たらない75の理由』(スティーヴン・ウェッブ) 西図書館2階・開架 440/W-51
『誤解するカド ファーストコンタクトSF傑作選』(野崎まど, 大森望編) 西図書館2階・小型 913.68/N-98

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