使う人を想うものづくり、ハミングバード「Hummingbird」を始めたきっかけ
私たちハミングバード(Hummingbird) は、靴下・バッグ・シューズ・帽子等を、一流の職人さんと一緒に作っているメーカーです。
2014年に出会った一人の靴下を制作する職人との出会いをきっかけに、「使う人を想うものづくり」を掲げて、国産で高品質な商品を一生懸命作っています。
我々は雨傘の卸売からスタートしました。今は、かわいい傘・機能性に優れた傘がとても安くお求めできるようになりましたが、90年台は3000円より上が相場でした。そこから、あれよあれよと1000円を切るようになり、下落幅の激しい商材を屋台骨にはできないので、傘の卸販売を中止しました。
「いいものが売れなくなり安いものばかり売れる時代に変わったのか。いいものを売りたいけど、時代の流れには逆らえない。」
モノを売る人間は、どこかで「本物」を売りたいと思うものなんです。
値段が安くなった一因として無視できないのが、中国を拠点してモノを作るメーカーが増えたことです。2000年初頭の中国の人件費はとても安かった。私たちも、中国生産のエプロンやパジャマを製造し、卸販売する商売に切り替えました。
安く売れる商材を大量に作って展開するビジネスが10年ほど続きましたが、急ブレーキがかかりました。中国経済の成長と、日本経済のデフレです。
中国の生産コスト(主に工場で働く方の人件費)は年々上昇した為、原価率は上がります。しかし、安く日本で売るために小売価格をあげられないため、コストは上がっているのに商品の品質が悪化する「泣きっ面に蜂」の状況でした。
ギリギリの採算で卸売を行いましたが、「もうこれは売れない」と決めた事件が発生します。
薬品のアレルギー反応が、社員に発症したことです。
中国から荷揚げされる衣料品は、害虫などの外来種を日本国内に持ち込まないようにコンテナごとに害虫駆除の薬品を散布します。バルサンを炊いているようなものだと思ってください。海の上で何日間か害虫駆除の期間を経て初めて日本の港に陸揚げされています。
薬品のニオイが付着してしまって丸ごと不良品になる自体も発生(過去には無かったことです)し、どうなっているのかと中国本土へ足を運んでみると、私共がお願いしていた中国工場の水質汚染や廃棄汚染等は深刻でした。
安全性が保てないものを、売ることは出来ません。これ以降、全ての中国産衣料品から手を引きました。
その後、弊社の代表である金澤は、全国を駆け回る日々を過ごします。安心して売れる商材=国内生産だと考え、小売店を回りつつ生産拠点も探しました。しかし、国内の繊維関連の工場は産業の空洞化や後継者問題で本当に少なくなっているため、海に落ちた指輪を探すような日々でした。
全国行脚での小売店の営業を終え、車を走らせていた所、ひとつの工場が目に止まりました。「Hummingbird」を立ち上げることが出来るきっかけとなった「羽田靴下製造所」の代表、羽田さんとの出会いです。
400坪の佇まいの大きな工場で、引き寄せられるように車を停め、アポ無しでお邪魔しました。開口一番「靴下を作って欲しい」と申し上げました。羽田さんからの返答は「もういっぱいだからできません、お帰りください」でした。
そこからは週に一回、お茶菓子を持ってはお邪魔して、少しづつお話をさせて頂く時間を頂きました。ある日、羽田さんはひとつの靴下を手にとって、このようにおっしゃいました。
「俺が作ったこの靴下は本当にすごい。誰にも売らせたこともないし、販売もしたことはない。俺がただ作りたくて作った靴下だ。お前にこれを一本やる」
その靴下を頂きを貰い、半年間履いて羽田さんを訪ねました。
「どうだった?」
「ゴムの跡が一切つかない。ずれやすくはあるけど、浮腫んでも全くきつくない、本当に履きやすい。今まで履いた靴下の中ではピカイチで、肌への当たり心地がすごくいい」
「お前はわかるやつだな」
「この靴下を、売らせて頂けないでしょうか?」
「こいつは俺の子供なんだ、これからもこの先も誰にも売るつもりはなかったが、今回お前のために作ってやる。だから、大事に売ってくれ。」
今、この靴下は私たちハミングバードの看板商品「ストレスフリーソックス」として販売させて頂いています。
羽田さんとの出会いから約半年、Hummingbird は第一歩を踏み出しました。
このストレスフリーソックスとの出会いで、私達は今までに無い喜びと、「職人技」のすごさに感銘を受けました。同時に、靴下を始めとしたモノづくりの現場のあり方を考えることも増えました。
繊維関連の工場の未来は、そのまま私達 Hummingbird の未来に直結します。
国内で作られているアパレル商材は、全国に販売されているアパレル商材のうち、約2%です。98%は国外生産で輸入されています。この2%が回復に向かうことはおそらく無いでしょう。でも、やれることはあるはずです。
"Hummingbird Project" を通じて、日本で価値のあるモノづくりをしていくための仲間を見つけたい、同時にそんなことも考えています。
〜使う人を想うものづくり〜 Hummingbird Project.