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CARELiNKのサービス終了に思うこと

 出張の集客の頼りだったリラクゼーションマッチングサービスCARELiNKが今月で終了することが決定してしまいました。

約一年半の間、登録させてもらっていましたが、他の出張サービスと比較すると自由度が高く、正にセラピストファースト。理想的なお客様に出逢える奇跡のようなサービスだったのですが。

 サービス終了の原因は語られていませんが、おそらく運営側は元が取れなかったのではないかと思います。

 プラットフォームに支払う費用は施術料金の20%で、決して高くはありません。しかも、セラピストの登録者数に対してお客様の登録者数が少なすぎました。セラピストの登録者が約1000人弱なのに、お客様は7000名。登録者の7分の1がセラピストで、どう考えてもセラピストが飽和状態なのに、実際に利用するお客様はそれよりもっと少ないのです。
 その数少ないお客様も、都心にお住まいで家が広くて一人暮らしで、経済的に余裕のある特別な方々ばかり。経営者や、いわゆる富裕層というか。値段設定を高くしているわけではないのですが、普通は初対面の人を家に呼ぶことに抵抗があるのではないかなと思います。一般人は出張型ではなくて、気軽な店舗型を利用するのでしょうか。

 お金持ちのお客様に出会えることは、ビジネスとしては有り難いことなのかもしれません。
 でも、お金があれば、当然ながら飽和するセラピストの誰にでも施術を頼めます。副業で、本業と家事育児の合間の限られた時間で出張する私が施術する必要はないのではないか。私は本当に困っている人に足圧整体を届けたいのに、それができていないのではないか。そんなもどかしさがありました。

 最近、本業の会社で一緒に働いている後輩の女性を踏ませてもらう機会がありました。彼女は整体自体をあまり受けたことはないけど、足の甲が痺れて困っていることを知ったからです。
 終業後に会社にヨガマットとバスタオルを持ち込んで、初めて同僚を踏ませてもらいました。足圧整体の効果を知ってもらい、楽になったと喜んでもらい、後に症状が治ったと聞いた時、気がつきました。私はこういうことがしたかったと。身近で体が痛くて困っている人に、手を差し伸べるような整体が目標で、飽和するセラピストの中から選ばれて、お金と引き換えに施術したいと思っていないことを自覚するきっかけになりました。

 受け取る金額の問題ではなく、整体はどうしても一対一の施術になってしまうので、自分も相手も時間を差し出すことになるのだから、自分にとっても相手にとっても価値のある時間にしたいのです。足圧整体を知らない誰かが、自分の体を省みるような機会になるとか、足圧整体の存在や効能が自然に口コミで広がるとか。そんな良い連鎖を生み出すためには、お金のやり取りはむしろ邪魔で、やり取りは別の物の方が良いのかもしれません。お金ではなくてお互いに与え与えられるものの交換が理想です。私が定期的に踏ませてもらっている空手の先生には、個別に型の指導をしてもらい、会社の同僚の女性からは業務のノウハウを教えてもらいました。そんなお金以外の価値の交換が自然と良い連鎖を生み、相手にとっても自分にとっても、意味のある一期一会の時間になれば最高ではないかと思います。

 副業としてお金を稼ぐセラピストは、CARELiNKの終了とともに一旦は終わりにしようと思います。CARELiNKのサービスには非常に感謝していますが、身近に体が痛くて困っている人や踏んでほしいと頼んでくれる人がいるのに、その人達を優先できず、限られた時間を使い、誰にでも施術を頼めるはずのお金持ちのために、お金と引き換えに施術したいとは、どうしても思えないのです。

 大学時代に保健体育の「姿勢と健康」の授業で出会った恩師、甲木寿人先生の言葉を二十数年ぶりに思い出します。

 甲木先生は同じ学部卒の大先輩でしたが、幼少の頃からカイロプラクティックを学ばれていました。大学卒業後にNHKに入社された後も、体の具合の悪い職員の方々にカイロプラクティックを施されていたそうです。その施術があまりに評判が良かったので、先生はNHKの健康管理室のような部署に異動になってしまいました。せっかくNHKに入社したのにカイロプラクティックの施術をすることになるなら開業した方が良いと考えて、NHKの近くの渋谷に治療院を始めたと話してくださいました。

 大学生だった私は、先生がNHKでカイロプラクティックの施術をされていたことに非常に驚き、感銘を受けました。あまりに感動して、一緒に授業を受けていた当時の親友と共に、先生の弟子になりたいと治療院に押しかけてしまったこともあります。先生には、あなた方がするような仕事ではない、よく考えた方が良いと優しくお断りされてしまいましたが、その言葉の意味は、並の覚悟では歩めない道だということだったと思います。先生のように、身近で必要としている人に施術をすることの積み重ねが、整体の仕事を成立させる基礎になるのかもしれないと感じたことを思い出します。

 身近で困っている人を踏ませていただく。それを続けて行く先に、施術者としての未来が広がることを願っています。

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