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牛ほめ

あらすじ

馬鹿で間抜けな与太郎が佐兵衛おじさんのところに家をほめに行く話が大筋。

父親に家のほめ方を教わる。台所の大黒柱に節穴があって、

「それについては秋葉様のお札を貼れば穴が隠れて火の用心になります。」

と言えばお小遣いをくれ、また牛もほめればさらに良いからと教わった与太郎。

喜び勇んで、佐兵衛おじさんのところに行くが、文句を間違えてしくじる。だけど大黒柱の文句だけは言え、おじさんに感心してもらう。

調子に乗った与太郎が牛をほめようと、庭に出るとそこに大きな牛が。節穴ならぬ牛のお尻の穴を見つけた与太郎。

「おじさんこの穴なら心配要りません。」

「心配なんかしちゃいないよ。」

「上に秋葉様のお札をお貼んなさい。穴が隠れて屁の用心になります。」


解説

与太郎噺の代表作です。与太郎が活躍する話は他にもたくさんあります。「錦の袈裟」「道具屋」「酢豆腐」「大工調べ」「金明竹」「厄払い」「かぼちゃ屋」「芋俵」「孝行糖」「啞(おし)の釣り」「ろくろ首」「佃祭」など、他にも一瞬登場したりと、落語には欠かせないキャラクターとなっています。噺によっては松公という場合もありますが、与太郎と同じ雰囲気で描かれています。

馬鹿で間抜けなという枕詞がついているので、演じる場合は基本的にぼんやりしていますけど、出てくる話によって全く違う人として出てきます。カミさんがいる場合もあるし、大工の棟梁の弟子として腕が良かったりします。

本題に入る前の枕で、

「映画やドラマの世界ではなかなかこういう間抜けな人は主人公になりませんが、落語の世界ではこういう人にスポットを当てようという優しさがあります。」

ということを言います。特にすごく意識してやっているわけではないんですけど、割とこの一言を入れていますね。

こういう与太郎噺のようなキャラの強い人が出る場合って、どうしてもボケキャラを意図的に作り出してしまうことがあるんです。簡単に言うと、ボケに行っちゃう。これをやるとウケませんね。与太郎はボケようとしているわけではなく、ただ頑張って失敗する。この構図が面白いと思います。

牛ほめで言えば、家をほめたり、牛をほめればお小遣いが貰えると思っているから、必死なんです。だけどその必死に間違う様が面白いということですね。

とまあ、これが本寸法(基本)の与太郎像ですけど、全然違う方もいました。

先代の志ん五師匠の与太郎は凄かったですね。キャラクターが強烈です。ここでは書けないような感じで演じられておりましたw

僕はこの噺は、初心者の方が多そうな場合にやります。あとは子供がいる場合ですね。この噺はボケとツッコミが明確に分かれているので聴きやすいんですね。掛け合いが多いので、初めての方にわかりやすいと思います。

最後の牛をほめるシーンで、与太郎が尻の穴を見て、「おじさんこの穴は目立つなあ。」

と言ったのに対して、

「目立つ?そんなことはない…ああ、言われてみると目立つなあ。」

っておじさんのが言うところが、一番好きなセリフです。


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