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「接客って何をしたらいいの?」答えの見つけ方

接客業に必要なスキルは何でしょう。
人当たりの良さ、忍耐力、それとも整った顔?

答えはありません。

私が新しくやってきたキャストに教えることは、お酒の作り方とお会計のつけ方、お店の開け閉め作業だけ。
もちろん私は自分の接客が正解だと信じて日々お店に立っています。
しかし同時に、正解が一つではないことも知っています。

「ママ、接客って何をしたらいいの?」

夜職未経験の子がやってきたとき、聞かれました。

「正解はないから、まず自分が仕事を楽しめるように接客してみて」

とんでもなく抽象的ですね。
けれど、接客業に絶対解はありません。
ただ一つ言えることは、自分が楽しまなきゃお客様は当然楽しめないということです。

残念ながら、来店するすべてのお客様に気に入られることは不可能です。
この世のすべての人に好かれたいと言っているのと同義ですから。

では、どういったお客様が自分のお客様になってくれるか。

それは感情を共有できるお客様です。

これはとても概念的な話になります。
”楽しい”や”悲しい”を、私たちは言葉として共有することはできます。
しかし本当の意味で感情を共有できているわけではありません。
感情の大きな方向性は簡単に伝えられても、違う人生を生きた違う人間同士がぴったり同じ方角を向くことは難しいこと。
だからこそ、精度高く同じ方角を向ける人に出会ったとき、その人に惹かれるのです。

多くのお客様は、漠然とした”楽しいこと”を求めて飲み屋にやってきます。
まずはキャストとして自分が楽しむことで、お客様に”楽しさ”を提案するのです。

この提案はキャスト側が圧倒的に有利な立場にいます。
お客様は乗る、乗らないに関わらず、入店した時点である程度の料金が発生することが確定しているからです。
料金分の”楽しさ”を求めてやってくるわけですから、ほとんどのお客様はとりあえず提案された”楽しさ”に乗ってくれます。

これで、”楽しい”という大きな方向性を共有することができます。
あとはどれだけ精度高く方角を調整できるか。
お客様とどれだけ”楽しさ”を共有できるかどうか。

ここから先はキャスト自身の個性に任せる領域です。
ママという立場からすると、私が見える方角以外を見られる子がいてくれた方が助かります。
それだけ来店してくださるお客様の幅が広がるからです。
だから、私には一見理解できないような立ち振る舞いをする子でも、クレームにならない限り見守ります。

”楽しさ”は感情の中で一番共有しやすいものです。
悲しみや怒り、寂しさを人は隠したがるものですから。
だからまず教えるのは、”自分が接客を楽しいと思うこと”です。

では、常連様がいつもより元気がなさそうなとき、どう接したらいいでしょうか?
私ならいつも通りお酒を作り、取り留めもない話をします。
乗ってくるならそのままお喋りするし、反応が鈍ければ放っておきます。

私のお店の個性豊かなキャスト達は、それぞれまったく違う反応をするでしょう。
他のお客様も巻き込んでトークに混ぜる子、お酒に誘って盛り上げる子、どうして元気がないか聞きだす子。

何がそのお客様にとってベストなのかなんて分かりません。
どうしてほしい?と聞いたところで本人にだって分からないでしょう。
放っておいてと言ったっていざ放っておかれるとやっぱり構って欲しかったと思うかもしれないし、
誘われるままに輪に混ざってみたけど気分が乗りきらずやっぱり一人で居ればよかったと思うかもしれません。

帰るとき、少しでもお客様の元気が充電されているように願いながら私含めキャストたちは試行錯誤します。
長い付き合いで深く知っているつもりのお客様相手でも、今日の接客が正解だったかなんてわからないもの。

答え合わせは、次の来店があるかないかで見るしかない。

そんな綱渡りのような日々を、私は全力で楽しんでいます。
正解が分かり切った作業が詰まらないなら、夜の世界を覗いてみませんか?

みぎわママはいつでも人材募集中です。

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