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【第4回インタビュー】叱咤激励。ID25(2年): 大下慧士。

こんにちは。Humans of ICUFCです。
今回はID25(2年)ゴールキーパーの大下慧士にインタビューを行いました。

人物紹介

大下慧士(おおしたさとし)。
ID25、大学から本格的にサッカーを始めたGK。
人生の多くの時間を海外で過ごした彼は、持ち前の優しい笑顔と朗らかさ、誠実なコミュニケーションで誰からも信頼を置かれる存在だ。

後方からの檄と的確なコーチングが売りの選手で、ピッチに響き渡る彼の声はどの選手にとっても拠り所である。まだ公式戦出場経験はないが、大学からサッカーを始めた彼の成長速度は凄まじく、大所帯GK陣の競争意識を常に煽り続ける稀有なプレイヤーだ。

そんな彼のバックグラウンド、またサッカーに対する想いを深掘りしていく。

インタビュー

オーストリア12年、グアム3年

  • では、よろしくお願いします!
    最初に、簡単に今までの経歴を教えてもらってもいい?

大下:よろしくお願いします!
はい、まず生まれは日本の福岡、生後半年ですぐオーストリアに引越しました。それから12年間住んで、グアムに引越しました。グアムでは日本人学校に。
本当はオーストリアの次は日本に帰る予定だったんですけど、日本の中学は英語ができないと帰国子女枠で入れて貰えないっていう厳しい制度があって(笑)
日本語も(能力的に)微妙だったから、一回日本語学校のステップをいれようって感じでしたね。
で、グアムに3年間いて、高校は福岡、今ICUっていう流れです。
福岡も帰国枠の基準が厳しくて、かつICUもAO入試なんで、めちゃくちゃ帰国生なのに一回もその枠で受験してないっていう(笑)

  • 流石に帰国枠だと思ってた(笑)

オーストリアではドイツ語が基本だった?

大下:そうですね。けどかなりぐちゃぐちゃな言語を(当時は)話してて。家族とは日本語、学校ではドイツ語だったので区別が難しかったです。
今はもう区別がつくのでトリリンガルですかね。日本語の時は日本語で考えて、ドイツ語と英語もそんな感じ。うまいこと分別できています。

  • サッカーはいつから?

大下:本格的にはICUに入ってからですね。
高校でもサッカー部に入っていたんですけど、他にも生徒会やESS(英語系の活動団体)に所属していて、そもそもあまり出席できていませんでした。かつサッカー部が弱くて緩くてって感じだったので。

正直、ICUFCも初めは入るって決めていなくて。でも偶然最初の(寮の)ルームメイトが優也(ID24、現キャプテンの阿部優也)で、さりげなく誘われたのがきっかけです。
一回目体験してから2週間くらい行ってなかったんだけど、このまま時間が過ぎるのが嫌だったし、一回目が凄く楽しかったってのもあって入部しました。

サッカーを見るのはずっと好きで、海外にいる時も日本代表が遠征してきていたらチケット取って観戦しに行ってましたね。

競技ディベートで培った「思慮」の大切さと、「知らないは罪」

  • 大学では英語での競技ディベートもやってるよね。

どういうやりがいがあるの?

大下:そもそも頭を使うことが楽しいっていう事と、自分が普段考えないことについて考えさせられる事。
例えば議題でタバコは禁止すべきか否か、って出されたらまあすぐに考えることができるけど、それが移民問題についてだったらそうはいかない。
市民側からしたらこうだよねっていうのは比較的思いつくけど、移民の方からの視点はすぐに考えつくものではない。
それを考える時に自分の意見を持たなくてはいけない。かつ、自分が肯定か否定かはランダムで決まるから、両方の意見を考えながらもこっちがいいよねって言わなきゃいけない。そういう自分の中でしっかり意見を作っていくプロセスが楽しくて、やりがいを感じます

ちなみに僕は即興型というディベートの方式で、15-20分くらい準備して7分間でスピーチするっていうことをやっています。
これは正直難しいけど、実際自分の意見を聞かれてはっきり答えられないのはモヤモヤするというか。もちろん色んな視点があるけど、自分の中ではこういうの答えられたらなっていうのを持っておきたいという気持ちはあるから即興型は凄く楽しいです

  • なるほど。サッカーとディベートで共通している考え方とかってある?

大下:全体を見た上でどこをどう修正すればいいか、どこをどう攻めれば良さそうか、みたいな考え方をする時はディベートの考え方が役立っているかもしれません。
ディベートで、どこが(論理が)立っててどこが崩れかけているかを見極めた上で、じゃあこことここを比較したら比較優位で上回れるなとかを考えながら全体を観ることがサッカーでも活かされてるなって思うかな。

ここ最近では、後ろから見ててここ空いてるなとか、ここミスしたから気持ち落ち込んでるなっていうのを見れるようになってきて。そこで声かけたりとかここズラしてとか言えるようになってきたのは、全く同じではないと思うけど思考法としては似てるのかなって思う。

  • 面白い見解が...!ありがとう。

ディベートをしている中で、印象に残った経験はある?

大下:やっぱり全然自分が知らない議題についてのディベートが一番難しいですね。
一番学んだのは、そのような自分が知らない事こそちゃんと考えなければいけないということ。わからない事に対して発言する時って、一番人を傷つけ易いと思うんです。

例えば一度、同和政策についての議題があって。自分が知識のない分野の議題だったからかなり調べたんですけど、確かに自分達が優位に立つようなことを言うのは簡単なんです。でもそれは(知識が浅い分)誰かを傷つける発言かもしれない。だし、その政策が自分に身近になった時にどう考えるだろう、って思うとこれは言っちゃダメだな、とか考えることもあって。

適当にパッて返すのは、その時悪意が無くても間違って酷いことを言ってたりしかねない。
特定のこの議題っていうよりも、自分にとって難しい議題であればあるほどそんなことを学ぶことが多かったと思います。

  • 知らないが罪になる時もあるよね。

大下:知らないはマジで罪になりうる。差別とかも基本そこから起こるし。

それこそ、オーストリアにいる時は差別に結構遭っていて。
日本人だから、アジア人だから疎外されるっていうこともあったし、台湾の人と僕が一緒にいると「兄弟でしょ?」ってからかわれたり。
東北大震災の後も、結果論としては日本がああなってしまった事には変わりはないけど、日本人そのものが危険だとか、放射線物質を出してるぞ!みたいなことを言われたり。

とにかく、知らないからこそ人を傷つけることもある。
昨日まで仲良かった友達に急にそういうことを言われるって凄く嫌だったし、それによって僕は傷ついたし。それ以降は知らないって罪だなっていうのを思うようになった。

だからディベートでも、間違えても人を傷つけたくないんです。
実際に生活してても発言する前にこれってこういう風に捉えられないかとか考えているし、もし仮に間違えたとしたら、気づいた時に直ぐ謝るとかは心掛けてます。

差別に関しては向き合い方にはよるものの、僕みたいな向き合い方をしたら、少しでも人を傷つけないような言葉選びをするようになるのかなとは思います。
そういう点では、経験してよかったっていう訳ではないけど、経験せざるを得なかった状況からは良い方向に持っていったのかな。逆に、自分がやられたからその分人を傷つけにいこうという方向に走らなくてよかったと思います。

「声」に対する溢れる想い

  • 次はサッカー面の話をしていきたい。
    「声」は慧士の武器の一つだと思うんだけど、どういう事を意識して声を出しているのか、その想いの部分を知りたい。

大下:2つ理由があって、まず一つ目は単純で、シンプルに技術で劣っているからそれをカバーしたくて。焦りではないけど、別にそんな褒められることでもないと思う(笑)声は出そうと思えば出せるし、技術より積み重ねが無くてもできることだと思っています。
二つ目は、皆の「もう一踏ん張り」を後押ししたいから。誰でも、きつくなったら諦めたくなる。そういう時に後一歩踏ん張れるのは声のおかげだと思う。
もちろん自分で自分を鼓舞できればいいんだけど、人間、そんな器用じゃない。人から言われた時に「もう少しやらないとな」とか思えるし、そんな事を考えて声を出しています。

去年入部してから、自分にできることはこれだなって身に染みて感じたんです。人との会話を大事にするICUFCで良い雰囲気になるのが好きだからこそ、そこに貢献したいなっていうのがあって

  • なるほど。でも声をだすのって心理的なブレーキがかかったり、そもそも性格的に厳しかったりすると思う。声出す事に対してそんな感じの葛藤はなかった?

大下:正直(ブレーキは)初めはありました。自分より上手い選手に厳しい声をかけてもいいのかって。
でも実際、サッカーでなくとも、他人から一声かけられる事ってめっちゃ大事だと思います。海外生活でも、言葉が通じない時だったりに声をかけてもらえるだけでも心理的に楽だったり。

年上でも人は人だし、生きてる年数が長くてもそれだけで年上の人がメンタル最強ってことはありえないし。

もちろん最初は遠慮気味だったっていうのはあるものの、ICUの雰囲気的にも年とか関係なしに全員に声かけあっていこうっていうムードがあったからこそ、心理的障壁が消えてどんどん出せるようになったのかな。

  • 慧士の声はほんっとうに一番響き渡ってる。

大下:でもまだまだ工夫できるところはあって…。
声の使い分けですね。特に去年までは寛太くん(前任監督の泊寛太氏)が凄く上手くて。声のトーンにも意図があり、それで伝わる意味も変わってくる。
サッカー中はどうしても強く・速い声になってしまうから難しい。例えば褒める時は高くゆったりした声で、ブロックを敷く時は速い声だと焦ってしまうこともあるだろうからもっと落ち着かせるための声だとか…。
そういうトーン、間の使い方、いつどんな声を出すかはちゃんとこれから向き合っていかないとなっていうのはあります。

これを練習や試合中に意識できるようになったっていう点で成長はしているのかな。でも自分自身が焦っていたりするとやっぱり意識できなくなる。そこも向き合っていきます。

これからのチーム、自己の将来像について

  • 慧士にとっての理想のチーム像みたいなのはある?

大下:雰囲気が良いって言うと漠然としてるけど、人と人がしっかり会話できるチーム
サッカーってチームスポーツだし、11人もいるし、ちゃんとコミュニケーションを取れるチームがいいかな。そういうチームだと、自分がもし試合に出れなくてもこの人たちには任せられるとか、マイナスの感情もプラスに持っていくことができると思う。
会話することによって自分のここが足りないから試合に出れなかったんだ、とか分析がしやすいという面でも、きちんと会話ができる環境が整っているチームって凄い大事だと思う。

  • 全体でもそうだけど、しっかりと個々人で話せるってことが重要なのかな。

大下:そうですね。
他の人のことを知らなかったら、他人を信頼してプレーする、何か行動を起こすって難しいと思うんで、僕は信頼関係を築く上でも、きちんと会話ができて、かつチームとしても話せる環境ができているのは凄い良いチームだなって思う。
ICUFCは考え方もそれぞれ違うと思うけど、自分の中ではそういうチームを目指しながら対話を重視しているのかなって思います。

  • ちょっと難しいかもしれないけど、具体的に良かった場面ってある?

大下:練習後に皆でサッカーの話をする時。後はやっぱり試合に負けちゃった後の時間が凄く良いと思います。試合に出ている人は悔しくてそんな話をする雰囲気では(普通)無いと思うけど、ベンチ外の人も試合に出ていた人も皆で話してる。
僕はGKだから近くで見ているけど、颯太くん(ID24のGK、川島颯太)とか健太くん(ID24のGK、諸伏健太)とかはチームが悪い雰囲気になる前、なっている途中にでも行動して、なんでこうだったのか、漠然とした負けではなく分析した負け、ここがダメだったよねっていうのを言語化する過程を作り出してます。

そもそもそれを価値のある負けにできるっていう面でもそうだけど、試合に出れていない人たちに取ってはそれが「チームの足りないところ」「自分が穴埋めできるところ」としての認識になって、モチベーションにも繋がっていると思ってます。

  • 本当に大事だね。
    ここから引退までの一年半、これからどういうプレーヤーになりたいっていう像はある?

大下:もちろん試合に貢献できる選手になりたいのはあるけど、やっぱり俯瞰して見れる人になりたい。
ICUFCには自分の考えを持っている人がたくさんいて、それこそ他にも色々な活動をして色々なコミュニティに入っている人がいるので、そこの間に入って調整する人が必要だと思っています。
チームとしても色々活動がある以上、自分はこれしたい、でもあの人はこうしたい、っていうギクシャクが生まれる瞬間はあると思います。

そこで必要だと思うのが、その間を調整するような、話を聞くだけでも良いし、アドバイスもできればしたいし、チーム全体としてのバランスが崩れないような調整役
チーム内の関係性が崩れないように、本当に入ってよかったなって思えるこのICUFCをさらに良いチームにするために貢献したいです。

  • 今は昔よりも色々な活動を行う人も増えただろうし、そういう人は必要だね。
    チーム的にはどう?ICUFCをこういう組織にしたいとかある?

大下:困った時に戻って来られる、ここにいたいと思えるようなチームにしたい。
チームの雰囲気が悪くなったら皆がいなくなっちゃうような、そんなチームにはしたくない。困った時こそ全員が必要だとか、そういう想いのあるチームにしたい。

チームとしてきつい状態もあるし、個人的にも辛い瞬間は必ずある。ICUFCってサッカーでも繋がっているし、サッカー外の時でも話せたりとかするからこそ、困った時には相談できるし、逆に全員で困った時には何をすれば良いか話せる環境を全員で作っていけたら良いなって思います。

  • ありがとう。
    最後に何か言っておきたいこと、ある??

大下:入ったきっかけは他の人みたいにしっかりとしたものではないと思います。
けど本当に居心地が良いし、しっかりとコミットしたいと思えてプレーしてても楽しいからこそ、そんな環境を作ってくれたメンバーに感謝しています。
ICUFCを作り上げていく人たちにプレーでも還元したいし、プレー外でも還元できるように自分が色んな面を見ながら成長していきたいと思っています。これからも是非、よろしくお願いします。

  • 慧士、本当にありがとうございました!!

出演:大下慧士
インタビュー・文:袴田知優(ID24)、近藤央(ID22)
インタビュー日時:2022年6月17日

さいごに

今回はID25の大下慧士にインタビューを行いました。
次回以降もぜひご覧ください!

↓過去の記事は以下より↓
【第3回インタビュー】勇往邁進。ID25(2年): 庄子友希。

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