山崎ナオコーラ『笑顔と筋肉ロボット』を読む

中古で雑誌『すばる』2020年11月号を入手しました。表紙の村田沙耶香『世界99』という文字に惹かれてなわけですが、長編かと思いきや右上に「新連載」という文字があるのを見落としていました。

そんなわけで、山崎さんには失礼ながら、ある意味偶然にこの『笑顔と筋肉ロボット』を読んだわけです。短編といっていい長さだと思いますが、これが興味深い内容でした。性役割分業の自明さに対する告発、と言ったら単純化しすぎなのかもしれませんが、異性に助けられ、それに対して常に「笑顔」を返さなければならない性を持ったことに対する複雑な問題が取り上げられています。

山崎ナオコーラといえば、恋愛小説を書くのが上手な作家だ、と勝手にそんな印象を持っていましたが、実は村田沙耶香と同様に「性」の問題をも追求している作家なのかもしれません。「性」の問題の「割り切れなさ」、それを追求する女性作家というのはそれこそステレオタイプに囚われた味方なのかもしれませんが、本作が示唆するものは多いのではないかと思います。

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