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はじめてキャバクラに行った話

〜23歳の2月〜

 お世話になってた先輩♂から始めての食事に誘われた。結婚してからもほどほどに遊んでいる先輩は、その当時、遊びの王(通称キング)として有名だった。別にめちゃくちゃカッコいいわけではないが、話しやすいし、30後半にして遊び心を忘れず、何より既婚。彼女作りを目標としていた当時の僕には、(お恥ずかしながら)このステータスは羨ましいものだったのだ。だからこそ、そんな先輩に当時は密かな憧れを抱いていた。

 せっかくの食事を良い物にしたく、当時の僕は「先輩にとって良い場所」をかなり下調べした。それが功を奏してか、食事後に遊びに誘ってもらったのである。これが人生初めてのキャバクラとなる。


 人生はじめてのキャバクラはおっパブだった。普通のキャバクラとは違い、サービスタイムと呼ばれるものでは女性が胸部を露にするわけで、女性経験のない僕にはハードルが高かった。

 うろたえる僕を尻目に、先輩、エンジン全開。見てない間に先輩がシャツを脱いでいた。

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 かなりのテンションで先輩が隣のキャストと絡む。これが、大人の遊び方なのかと感心した。先輩の名誉のために言うと、ルールで決められた範疇で場の雰囲気を盛り上げることに徹していた。ように見えた。

 先輩を見て、僕と僕についていた女の子は終始先輩の話をしていた。当然、職業は偽りながら話したが、それでも2人して先輩はすごいねぇと話していた。いや、女の子からしたらあれはドン引きだったのか。わからないが。でも、女の子と話せない僕にとっては共通の話題は強烈な先輩だけだった。

 色々考えさせられたからか、あっという間の時間だった。

 帰り際、先輩がキャスト2人に大きく手を振った。

 先輩「バイバイばーーい!」

 その元気さが羨ましかった。

 先輩が出たあと、キャストにお辞儀をして帰ろうとしたら、今日付いてくれた女の子が呼び止めてくれた。

 渡された紙切れには手書きでLINEのIDとメールアドレスが書かれていた。

女の子「私、ゆかり(仮名)っていうの。またね。」

 源氏名とは違う名前と連絡先。この瞬間、かなりドキドキした。今思えば上手い手法だなぁと思う。

 このゆかりさんとは後日、何回か会う。彼女のおかげで色々な経験が出来たこと、今でも感謝している。ナンパでは女性の名前を忘れることが多々あるが(本当に関係者の方ごめんなさい)、ただこういう最初のきっかけを与える人に関しては、いつまでも名前を覚えているのも感慨深い。


 さて、店を出てから先輩は遊び足りないらしく、もう一件キャバクラをハシゴした。

 これがもうひどく余計だった。値段のわりに何も無い。ツマミもない。会話もない。地獄の時間だった。

 流石に最後の店で満足して、先輩は満足げに帰路についた。

 ちなみに、キャバクラは二店とも割り勘だった。

 1人総額3万いかないくらい。社会勉強費としては安いと考えていた。そして、割り勘もチャッカリしてる先輩だなぁ。既婚者だから仕方ないのか。そう思った。思うようにした。

 帰りは1人電車に揺られていた。長時間の電車だったが、ゆかりさんへのLINEを考えていたらあっという間の時間だった。

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