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ガールズバーへ通った話

 始まりは梅雨。終わりは冬。女性経験が無い自分にとって心の拠り所はガールズバーだった。

〜23歳の6月〜

 くたびれたチノパンにボロボロのポロシャツ。汗と油でズレるメガネ。仕事帰りの僕はいつもそう。他者の目なんか気にしない。でも、何か物足りない。パッとしない仕事をいつもして。褒められるわけでもない。こんな自分を受け入れてくれる人はいない。刺激が欲しい。

 そう思って、頭をよぎったのはキャバクラだった。ただ、当時推していたキャバ嬢のゆかりさん(初出「はじめてキャバクラに行ったときの話」)はこの当時、遠くにいってしまった。キャバクラ自体単価が高いので1から通い、推しを作るのも時間とお金がかかる。この頃の僕には、キャバクラは労力をかけないと行けないものだった。

 しかし、その一方で、休前日だったこの日は何かしら遊びたい気持ちだった。できれば女の子とワンチャンありたい!そう思いながら、下心丸出し野郎(&童貞)はフラフラと繁華街を歩いていたのだった。

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 繁華街の少し外れに、スナックや古居酒屋、バーの派手な看板が並ぶ通りがあった。上京したてのような仕草でキョロキョロと歩くと何人かのキャッチに捕まる。大半はペコリと会釈でかわす。だが、女の子に話しかけられるとそうもいかない。話しかけられるだけで舞い上がる。

 女の子「飲み放題、2000円ですよ?☺️」

 安いなー。いいなぁ。デレッデレしながら話を聞いていた。そして店に入った。これがガールズバーデビューだった。勇気をもって入るとか、思い詰めた先に入るとか、そんなドラマもなくあっさり入店。

 そのガールズバーは狭いスペースにコの字型の卓。客は向かい合わないように座り、女の子と話せる作りになっていた。客は僕を入れて2人のみ。

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 案内され、着席され。カウンター越しに女の子と話す。ちなみにキャバクラと違い、女の子は隣に座らない。カウンター越しというのがガールズバーの決まりである。また、その手軽さから大学生など若い女の子層が多く、当時の僕にはどハマりする年齢層だったのだ。

 デレデレの僕を尻目に、担当の女の子が入れ替わる。次はどんな子が来るのだろう。普段は飲まない黒霧島を飲みながら待っていると、女神は現れた。

 女「はじめまして。あい(仮)です。」


 一目で好きに入った。ゆるふわ茶髪ボブ、160ほどの身長に大きな目。可愛い見た目に反して、低音クールな声。高校の時に叶わなかった恋愛。当時片想いしていた、高嶺の女の子。あいちゃんは、片想いの子に似ていた。

僕「え、あいちゃん。高校の時の同級生に似てる!!」

 この、返しに困る返答。非モテ特有だろう。僕としては、片想いの子が現れた感動を表現したつもりだが、彼女にはそんなもの伝わるはずがない。主観的にしか話せない、モノを語れない非モテ(というより僕)の残念さ。だが、そんな僕にでもあいちゃんは話を掘り下げてくれ、僕の話を聞いてくれたのだった。

 そして錯覚した。

 僕も女の子慣れしたのかもしれない。と。

 そして、もっとあいちゃんと仲良くなりたいと思った。

 この日は、2時間ほどで店を出た。想像したより安い料金だったこともあり、僕はこのバーに頻繁に通うようになった。

 毎週、休みの前日には必ず通った。バーのオープンに行き、律儀に終電に帰る。それを繰り返した。ガールズバーと言えども、オープンから終電までいると流石に1~2万はかかった。

 それでも、4回目にしてあいちゃんからLINE交換をしてもらうなど、非モテには涙が出るほど嬉しいイベントもあり、バー通いは続いた。今思えば、あのLINEは営業アカであり、誰でも教えてもらえるものだったのだろう。当時の僕にはそんな考えは無かったのでかなり舞い上がっていた。

 会いたい と彼女に連絡を送れば

 出勤日が返ってきた。

 笑っちゃうが、当時の僕は真剣なのである。

 そして、5ヶ月ほど通った時に気づくのである。

 流石にお金が尽きてきた。

 当時はガールズバーの他にもお店に通っていたので、月の出費がかなり出ていた(1ヶ月50万使っていた月もあった)。

 そして、その頃には現実に好きな人がいたので、あいちゃんに固執しなくても良くなっていたのだ。


 金の切れ目が縁の切れ目だった。僕のガールズバー通いは自然と消えた。


【後日談】

 あいちゃんとはその後何もないと思われたが、翌年の4月に急遽連絡がくる。俗に言う、逆ザオリク。そこからお店を通さず、プライベートで一度飲みに行くことができた。何事も執着しない方が良い典型例。ただ、5件も梯子したその飲みですら特に進展せず、僕が彼女を作りフェードアウト。ちなみにこの直後、彼女はキャバクラへ転職したと連絡を受けた。

 その次にあいちゃんを見たのはさらに一年後。かなりの化粧、それにかなり歳上の彼氏らしき人と腕を組んで歩く姿を見かけた。なんとなく、お互い目を合わせ、なんとなく目をそらし。

 そこからは彼女を知らない。

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風俗嬢に恋する






 


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