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「教育対策」を糧に社会へ(前編)

※一昨年度と昨年度の2年間、2002年10月に創刊したメールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』のバックナンバーから厳選した100本の掲載文を転載してきました(字句や一文など小幅な修正をしている場合があります)。

※昨年度の最後にお伝えしたように、今年度からはメールマガジン(メルマガ)にかぎらず過去に書いた文章を毎月1本、時系列に転載することによって私の自称 “体験的不登校・ひきこもり論” の進展をたどりながら理解と対応の参考にしていただけるよう進めていきたいと考えています。

※その第1弾となる先々月は「31年前の文章を紹介した20年前の文章」を転載し、今月は先月転載予定だった「22年前に自費出版した雑誌に発表した文章」を転載します。

※ただし、その文章を書くに至る経緯をご説明する必要がありますので、前編でご説明したうえで後編にその文章を転載します。以上、ややこしくて恐縮ですが、ご承知おきのうえお読みください。

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逆転の発想から生まれた「教育対策」

 先々月に転載した31年前の文章は、大学を卒業して県立高校の教員採用試験をめざしながら非常勤講師として高校に勤めていた年に書いたものですが、その年度が過ぎたところで足かけ7年のひきこもり時代に突入しました。

 2年目に私は、あるきっかけで「親や心理カウンセラーや教師が自分にしてきたことは「子育て/カウンセリング/指導」といった違いはあれど、すべて操ったり強制したりすることで子どもを思い通りにしようとする “教育意識” から出ているのではないか?」と考えるようになり、中学生時代からの教師になる夢が醒めてしまいました。以来、教育を問い直す内容の本や家族問題に関する本を読みながら思索する日々を送るようになりました。

 そんなある日、書店で『思春期対策』というタイトルの専門書を見かけました。買いませんでしたが「おとなたちは不登校対策だの非行対策だの、子どもにについて対策ばかり叫んでいるけど、教育にも対策が必要なのでは?」という “逆転の発想” がそのとき浮かんだのです。
  そこで私は “おとなが子どもに施す対策” とは真逆の “子どもがおとなに施す対策” としての「教育対策」という言葉を思いつき、以来その言葉を胸に秘めながら「親や教育者や不登校関係者などから躾や指導・治療を受けたことが逆効果になった体験を持つ子どもや若者が、教育から主体性を取り返すことのできる社会」をイメージし、その手段として「自助グループ」(今で言う当事者会)や非教育的な(自学自習を促す)塾兼フリースペースなどを構想し、当時の乏しい人間関係を頼って発信し始めました。

 “底つき”に苦しむ私を救った「教育対策」

 しかし、まだ構想として熟していなかったため説明がうまく伝わらないうちに、最も苦しい “遅すぎた就活時代” に突入。「自分は何やってたんだ」「履歴書の空白が」などと苦しみながら児童福祉施設やサポート校などの民間教育機関といった、家族に恵まれなかったり正規のルートから弾かれたりした子どもたちと生きる道をめざしましたが、4年間のブランクを克服できずに精魂尽き果て「もう生きていけない」という “底つき” の苦しみを経て、人生観の大変化によりエネルギーがよみがえります(この経緯は後編の末尾欄外でご紹介する本をお読みください)。

 その、心の回復過程で前述の考え方がどんどんまとまっていったのです。それには、はからずも就活のなかで福祉施設を見学したりした体験も役立ちました。
「人間生き方なんて何でもありだ」
「教育はすばらしいわけではなく功罪両面ある営みにすぎない」
「<どんな教育をするか>より<どんな教育をしないか>が重要」
「教育に従うのではなく教育に対応する」
「教育や支援の主導権が親や教師や支援者にあるうちは子どもは生きやすくならない」
「仕組みとしても意識としても、非教育的なあり方を訴えたい」

 私はこのような考え方をまとめた「教育対策」と称する活動理念を掲げて社会に出る決意を固めたのです。

 このように「教育対策」とは、私にとって生きるモチベーションになったものであり、社会で生きていく基盤となる考え方でした。これを思いつかなかったら、私は今こうして生きてはいなかったことでしょう。

 迎えた1999年度、私は理念の普及のための言論活動・理念を具体化する活動・研修先選び・相談募集、等々の拠点として個人事務所「教育対策研究所」を自室に構えました。

 後編に転載するのは、その言論活動の一環として1年後に自費出版した雑誌『おしえる そだてる いきる なやむ ~不登校?過保護?指導法?~』創刊号に書いた文章です。

                           <後編に続く>

不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。