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長期的視野に立った対応こそ(後編)

会話の地層を作るひきこもり相談

 もうおわかりだと思います。
 
 私が川崎市の相談員だったら、このモデルにしたがって手紙の中身を順に提案していくというわけです。
 
 まずは挨拶の言葉や天気の話、家族の予定など書いていきます。特に「あした何時に出かけて何時に帰ってくるね」という連絡は、自宅での過ごし方をシュミレーションできるので本人にはありがたいでしょう。
 
 そうしているうちに本人の反応が良くなって、返事や用件や頼みごとを本人が書くようになったら、自然に深い話を書いていきます。
 
 このようにして手紙の内容を徐々に深めていき、本題以外のやりとりをトコトン続けたすえに、いつの間にか前述の事件で言う「自立」を含めた本題の話を向けることができるようになる、というのが私の持論です。
 
 不登校・ひきこもり相談というのは、そのような長期的視野に立って一歩一歩進めていくものだと、私は考えているしだいです。

時間をかけて進めていく対応 

 さて、不登校/ひきこもり状態には、一事が万事このような対応が必要なことは、これまで本欄をお読みくださっている読者の方にはよくご理解いただいていることでしょう。
 
 つまり「本人に合った対応を積み重ねていく」「本人の変化に応じて対応を変えていく」の2点が基本です。
 
 そこで、何事も積み重ねるには時間が必要ですよね。不登校/ひきこもり状態への対応も同じこと。年月がかかってもその分本人に合った対応をしっかり積み重ねていれば、多くの場合いずれ見通しが開けます。
 また、本人の変化に応じて対応を変えていくということは、本人が変化する時間が必要だということですよね。したがって、これも年月がかかっても効果が期待できるスキルなわけです。
 
 ところが、相談を受ける立場にある関係者のなかには、この “時間をかけて進めていく対応” をご存じないため、時間経過を損失としか思えず1日も早く解決しようと先を急ぐ方が少なくないようです。そういう方への相談は、それこそ時間の損失であり避けたほうが賢明です。
 
 先々月と先月の末尾欄外でお知らせした連続講座「ヒュースタゼミナール」の第2回では、このような “時の流れを有効活用する対応” の理念とスキルをお伝えしています。今年度は関係者や志望者向けの「一般コース」が今月ですので、ご関心の方はぜひ ↓ の告知ページをご覧ください。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第250号(2021年6月22日)

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※転載元のメールマガジンを配信したのは2年前の6月ですが、登戸事件は同年の5月末に起きてから2か月くらいは騒がれていましたので、この文章の導入にある「4年前の今ごろ~大騒ぎに」という表現はそのままとしました。

※前編に書いたとおり、おとなひきこもりへの家族相談は(不登校相談もそうですが)、多くの場合きちんと段階を踏んで進めないとうまくいきません。そのスキルのひとつが、文中で説明し今回のカバー画像(講演レジュメ)にもした「会話の地層モデル」です。これは、豊中市社会福祉協議会の勝部麗子氏が講演のなかで引用してくださるなど多くの関係者に評価されています。

※そこで、私が毎年度企画開講している連続講座「ヒュースタゼミナール」では、本人の心理はもとよりこうした長期的視野に立った家族相談・家族会も学ぶことができますので、従事者や志望者の方にはぜひ通年受講していただきたいです。詳細は上記リンク先公式ブログ記事でご確認ください。

※今回の転載文は、メルマガ『ごかいの部屋』節目の250号です。3号に1本このような文章を執筆掲載していますので、お読みになりたくなった方は、下記リンク先案内ページから読者登録をお願いいたします。

※今月は、家族会「しゃべるの会」の開催月です。不登校編は3日後に迫っていますので、該当するご家族様は急ぎご検討ください。30日に開催するひきこもり編と合わせて、 ↓ の公式ブログ記事をご覧ください。

※今月の講師業ですが、22日(土)に海老名市で、29日(土)に相模原市で、それぞれひきこもり講演を行います。22日は同市に在住在勤在学の方のみ、29日は相模原市または周辺市町村(県央地区)のご家族が原則、とローカルな情報で恐縮ですが、該当する方は公式ブログ記事または主催機関のホームページをご覧ください。


不登校・ひきこもりに関する研修費に充て、相談支援のスキルアップと充実したメルマガ掲載文執筆に還元させていただきたく、よろしくお願い申し上げます。