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焦りが挫折をひき起こす(後編)

挫折を繰り返す本人

 答えは、進路選択という重要な場面ではなくても、本人の日常生活のなかに見出すことができます。

 「毎日のように“明日は行く”と言っているのに、朝になると起きてこない」
 「テストを受けようとして準備したのに、当日行かなかった」

 こういったことは、ほとんどの親御さんや先生が経験されていることでしょう。

 本人が「明日こそは行く」と宣言するのも「テストを受けよう」と決心するのも、嘘ではありません。しかし実際には、それらを実行する力が回復していないために、実行できずに終わってしまうのです。

 このことは、本人にとってはとてもショックな挫折体験です。体験するたび、心が傷つきます。にもかかわらず、本人は「やろうとしては失敗する」という挫折を、飽くことなく繰り返していきます。

 なぜでしょうか?

何が本人をそうさせるのか

 登校する、テストを受ける、そんな力が回復していない本人に「明日こそ行こう」「テストだけでも受けよう」と決心させるものは、本人自身の“焦り”なのです。
 本人たちの多くは、自分のやることを“回復した力”ではなく“焦り”にもとづいて決めているのです。

 同様に本人に、本心からではなく無理に決意や進路希望をひねり出させるものも、多くの場合本人自身の“焦り”なのです。

 不登校の中学3年生や高校生のうち、力が回復していない段階にある子は、進路のことを考えたり決めたりすることができないはずです。にもかかわらず本人の多くは、そんな自分の現状を無視して、いわゆる常識的なプロセス(この時期は進級進学のことを決める)を歩むことしか念頭にありません。
 その結果、自分が常識的なプロセスを歩める状態かどうかには目もくれず、ひたすら常識的なプロセスを歩もうとします。

 その結果「とにかく結論を出さなければ・・・」という思いから、何かしらの決意や進路希望を表明するわけです。

 ところで、このようなプロセスは、おとなのひきこもり状態の場合にもそのまま当てはまります。
 「アルバイトしよう」「就職しよう」などと決心はするものの、なかなか実行にはいたりません。また実行しても、長続きしないことがよくあります。

 そんな自分の現状を正視できない本人たちは、のどに刺さったトゲのよう
に、進路選択(社会復帰)のことが頭から離れないのです。

 このように、不登校/ひきこもり状態から進路を選択し、その道を実際に
歩み出すことは、本人にとって非常に困難なものです。

 では、そのような状況のなかで、本人の進路選択をどのように手伝っていけばよいのでしょうか。次回お話しします。

初出:メールマガジン『ごかいの部屋~不登校・ひきこもりから社会へ~』第88号(2004年11月3日)

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※私は不登校相談を実践していて、力が回復する前にこの時期が来てしまい、本文で描いた心理によって進路選択に苦しむお子さんの話を、親御さんからよくうかがいます。そこで、次回は対応の提案に進んでいきます。

※拙著『不登校・ひきこもりが終わるとき』に収録した約50本は一部を除き転載しませんので、ご関心をお持ちの方は同著を入手してご一読ください。

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