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瞑想入門 ㉑

アチャン・チャー

 シーラを守り、心が清らかになると、私たちは他人に対して優しくなれます。他人に対して優しくなると、毎日が充実感に満ち溢れたものとなり、不安や後悔といった感情から解放されます。性格が優しくなったので、他人を傷つけるような言動や行動はもうしません。そのため、自分のおこないを後悔するようなことがなくなったのです。これこそが幸福な人生というものです。ほとんど天界の住人のようなものです。シーラを守ることによって生じる幸福感があるため、日々、安心して食事をし、眠ることができるのです。これは、シーラを守るという原因によって生じた結果です。善をおこない、悪から離れること。これが、ダンマの実践の原則です。継続的にシーラを守れば、生活の中から徐々に悪が減少し、善が増えていきます。これこそが、正しい仏道修行というものです。
 
 ですが、話はそこで終わりになりません。私たちはいったん幸福な生活を手に入れると、途端に横着になりがちです。そして、仏道修行に対する情熱も薄れてきます。日常生活の幸福に浸りきってしまうのですね。これ以上苦労をして仏道修行などせずに、今の「天国」のような生活に満足してしまうのです。そうした生活は快適ですが、真の智慧パンニャが育つ環境ではありません。煩悩に惑わされないようにするには、日常生活において常に観察を続ける必要があります。幸福な生活がもたらすデメリットについて、真剣に観察をしてみてください。すると、そうした幸福は一過性のもので、永続しないということが分かるでしょう。一度は幸福になったと思ったものの、あっという間にそれを失うものです。幸福が消え失せれば、また再び苦しみドゥッカの人生です。天界の住人たちでさえ、やがて死ぬときには嘆き悲しむことになるのです。
 
(続く)

アチャン・チャー『Living Dhamma』より
 
"Living Dhamma", by Venerable Ajahn Chah, translated from the Thai by The Sangha, Wat Pah Nanachat. Access to Insight (BCBS Edition), 30 November 2013, http://www.accesstoinsight.org/lib/thai/chah/living.html .
 


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